会計士の刑事罰検討だそうな
カネボウ事件、東京地検が会計士を共犯で追及へ
【引用開始】
カネボウ(東京都港区)の旧経営陣による粉飾決算事件で、東京地検特捜部は10日、同社の監査を担当していた中央青山監査法人(同千代田区)の公認会計士について、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で刑事責任を追及する方向で、最終検討に入った。
この事件では、カネボウの元社長ら2人が2002、03年3月期決算の粉飾にかかわったとして同法違反の罪で起訴されているが、会計士は共犯の疑いが持たれており、特捜部は証券取引等監視委員会と連携して詰めの捜査を進めている。
特捜部の調べでは、カネボウ元社長・帆足(ほあし)隆(69)、元副社長・宮原卓(たかし)(63)の両被告は、02年3月期の連結決算で実際は約819億円の債務超過に陥っていたにもかかわらず、約9億円の資産超過であると有価証券報告書にウソを記載、03年3月期も同様に、約806億円の債務超過を約5億円の資産超過と偽っていた。
関係者によると、担当の会計士はこうした実態を知りながら、監査報告書に適正意見を記載していた疑いがあるという。特に02年3月期決算については、同年4月ごろ、会計士がカネボウ側から示された「資産超過」とする内容の決算案に対し、「実際には債務超過になっており、このままでは適正意見を出せない」などといったん指摘しながら、2か月後には、「資産超過」とする決算を適正と結論づけていた。
特捜部は今年7月29日、中央青山監査法人を捜索するとともに、監査にかかわった会計士の任意の事情聴取を続けてきた。これまでの聴取に対し、会計士は「粉飾は知らなかった」などと説明しているという。
同監査法人は捜索を受けた際、「カネボウの粉飾は大がかりで高度に組織的なものであることが明らかになっており、捜査には全面的に協力していく」とコメントしていた。
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えーと、まず現象面について簡単なコメントをするとすれば、「これまでの聴取に対し、会計士は「粉飾は知らなかった」などと説明しているという。」って、アホか。お前のスペシャリティは何じゃ?プロとしてこれほど恥ずかしいコメントは無い。野球選手がバットの振り方を知らないと言ってるようなもんだ。
業界のハシックレに身をおく者として言わせて貰えば、どんなに巧妙に粉飾を凝らそうが、少なくとも監査の現場に入ることによってその「ニオイ」を感じることは出来る。出来ないとすればそもそもこの仕事に向かない人間だけだ。即刻辞めて職を探しなさい。監査は本来その「ニオイ」を手がかりとして予断を持ち、その上で効率的に進められるべきものである。知らない人に誤解があるといけないので言っておくと、監査は「精査」ではなく、ある意味統計的なサンプル調査によって成り立っている。企業の1年間の経済活動の全てをチェックするというのは実質的に短い監査期間では不可能であるため、会計士はその経験と専門的技能を活かし、部分的なチェックを行うことで全体の適正性を推定するのである。
また、最近は「監査業務の負担が従来に比べ過大になっているが人員を増やせない(人がいない&監査報酬の値上げが出来ない)ので粉飾を見抜くのが困難」とかいう腑抜けたコメントが業界内からも出ている。自業自得だ。というのも、法定監査は会計士しか「出来ない」という法律が存在するため、現金実査や在庫確認といった監査手続の全てを会計士がやらないといけないために「オーバースペックによる作業負担増」がその原因なのだが、その法律を「絶対死守」のスタンスでいるのが他ならぬ会計士協会であり、大手監査法人なのである。
税理士業界からは、監査業務の門戸開放は積年の念願として主張されているが、頑として会計士はそれに応じない。自らの既得権を守るため、全ての監査手続を会計士の聖域として保持しているのである。率直に言ってしまえば、銀行預金の残高確認や手形有高チェックなどは、マニュアルさえしっかりしていれば大学生のインターンにも簡単に出来る。今の人手不足は、会計士が本来注力すべき業務以外に忙殺されることにその主たる原因があるにもかかわらず、その根元的な問題には頬かむりし、「クライアント(監査企業)が監査報酬を十分に出してくれないから監査の質が低下する」なんつう責任転嫁コメントを堂々と出すその厚顔無恥ぶりには身内ながら腹が立つ。
更にもう一つ。確かに、会計士が監査報告書で表明する監査意見は「適正性」についての意見であって、「無謬性」を保証するものではない。これは、前述した通り、監査手続そのものが「サンプリングによる推計」を前提としているためである。但し、これは、全体に対するインパクトが小さい場合のみに有効な考え方に過ぎない。「監査人が適正な監査手続を実行して適正意見を表明したとして、後日粉飾が明らかになった場合、会計士に職務上の責任は無い」というのは、その粉飾が全体に与える影響が微少な場合のみのはずである。そもそも、資産超過か債務超過かを分けるような粉飾を見抜けないとするならば、それは「適正な監査手続」ではない。
また、会計士サイドの言い分として、「ゴーイングコンサーンの前提であれば問題ない」などというものもある。ゴーイングコンサーンの前提とは、企業が今後も経済活動を継続するということである。長銀の時にも言われたことであるが、「長銀がそのまま継続し続けていれば、飛ばしに対しても時間をかけて正常化できたはずであり、それをサドンデスのように止めてしまえば結果として不良債権の状態が確定することになる。つまり、サドンデスにしたからこそ債務超過なのであり、ゴーイングコンサーンを前提とした監査において当該飛ばし処理を問題としなかったからといってそれは監査上の問題ではない」ということである。カネボウの場合も、産業再生機構による再生支援が入るという事態にならなければ当該粉飾は長期的には正常化される範疇のものであって監査上の責任は無い」とか言う馬鹿がいる。あり得ない理屈だ。子供の使いか。
会計士が真にプロとしての自覚を持つのであれば、監査意見として問題点を指摘し、「もしかすると問題が顕在化する可能性がありますよ」と付記するのが当然だ。
エンロンによってアンダーセンが崩壊したように、中央青山はこれによって崩壊するかもしれない。というよりも、させなければならない。監査が単に会計士業界の既得権と化している現状を打破し、健全で質の高い監査を緊張感を持って実施されるようになるためには、それぐらいの処置が必要だろう。
プロの自覚のない会計士など、それだけで社会のゴミである。

Posted by yasukichi2004 at 00:21 │Comments(209) │TrackBack(4) │日本