2005年05月12日

北朝鮮の核開発とその後を考える(3)

 ここ数日、様々なニュースを見て北朝鮮の核問題を巡る諸事象について色々考えてみました。
 明らかに「紛れ」を狙ったプレスリリースやコメントもあり、また、当事者国が複数であることもあり、なかなか自分なりの考えをまとめることが出来ず、予想以上に時間がかかってしまいました。

 別に自分の考え・論評が真実だという根拠も保証もありませんので、「そんな考え方もあるのねー」くらいに思って読んでいただければと思います。


 まず、各国が今何を考え、どう動こうとしているのかについて。
 北朝鮮は、ある程度の核弾頭を保有し、実験可能な状態であることはほぼ間違いないでしょう。とはいえ、ミサイル搭載可能な技術水準に至っているとは思えません。未熟な技術を最大限に利用し、核の脅威を盾に安全保証と経済援助を周辺国及びアメリカから引き出すことが唯一の戦略であって、いかなる事態となっても、実際に核攻撃に踏み切ることはあり得ないと思います。しかし、「核実験」の「準備」を進めていることは間違いないところです。更に、わざわざ目立つように使用済み核燃料棒を取り出したことも、今後の更なる核爆弾製造の可能性があることをアピールする行為です。
 そして、北朝鮮は、核実験をするか否かについては、二段構えの対応を行う可能性が高いでしょう。いつでも核実験可能な状態まで持っていき、その時点でアメリカの何らかの妥協案が出てくればその状態で一旦凍結するでしょうし、アメリカが全く何の妥協的提案も行わないとすれば、実験を強行することも辞さないということです。その後、経済制裁を受けるとしても、こちらでも書いたように、中国の陰の援助を受けながら細々と国の命脈を保ち、じっと時の経過を待つことを考えていると思います。国が維持できさえすれば、「核保有国」としての立場を確保できます。

 対して、アメリカはどうでしょうか。アメリカは、「北朝鮮の脅威」など、小指の爪の先の垢ほども感じていないでしょう(日本にとって、カメルーンが核開発に成功した場合に感じるインパクトとさして違いはないでしょう)。アメリカが問題にするのは、「北朝鮮の核がテロリストに流れること」、それのみです。
 そして、アメリカは金正日を全く信用していません。金正日政権を延命させる限り、いつまでも「核の流出」の脅威が消えない以上、この世から北朝鮮を消し去ることが唯一の解決策だと思っているでしょう(我々がゴキブリと共存を考えないのと同じです。国として対等だなんて思っちゃいません)。
 更に、アメリカは現在の金正日体制は戦前の日本と同じであると考えているフシがあります。いつまでたっても反乱の火が消えないイラクと違い、国体を崩壊させれば国民が一斉に親米に靡き、「ギブミーチョコレート」状態になるはずだと思っています。北朝鮮を叩き潰すことに何の不安要因もデメリットも感じていません。
 唯一の不安要因は中国の動向ですが、冷戦時代と異なりアメリカは中国と事前に話をつけるパイプを持っています。恐らく、北朝鮮崩壊後の統治を中国政府に委ねることを事前にコミットすることによって、緩衝地帯が無くなるという中国の不安を取り除くでしょう。
 ライス国務長官の「主権国家」発言は、リップサービスや北朝鮮に対する妥協のメッセージなどでは決してなく、「主権国家として交戦権を認めた」ということではないでしょうか。朝鮮戦争の事後処理がまずかったせいで、現在の休戦協定上は韓国は北朝鮮に対する主権を主張出来ることになっています。あくまでも北朝鮮を独立国家と認定した上で、他国(韓国等)の不介入を前提とした「処理」をするつもりでしょう。
 そのため、アメリカは今後一切の妥協を北朝鮮に対してすることはないでしょう。無条件降伏すればよし。そうでなく核実験を強行したら経済制裁ではなく武力攻撃まで一気に持っていくと思います。
 アメリカは、色々な情報を小出しにリークすることによって、「攻撃の妥当性」を周辺国及び世界に認識させようとしています。「ミサイル搭載可能」なんていう情報は、イラクの時の大量破壊兵器と同様の脅し(ブラフ)に過ぎません。アメリカは、自らも核攻撃の脅威に晒されているということを大義名分としたいのでしょう。

 中国は、「自分は引き金を引きたくない」と思っているはずです。最後まで「いい子」でいたい(そう評価されたい)と思っているのは間違いありません。とはいえ、自らリスクを負って北朝鮮を支援する気などはさらさら無く、自国にとってメリットのある処理をしてくれさえすれば、アメリカに対して逆らうことはないでしょう。金正日体制崩壊後の朝鮮半島を自らの影響下におけるのであれば、むしろ金正日体制の崩壊を望んでいるというのが偽らざるところではないでしょうか。
 中国は危険な国ではなく、真っ当な近代国家であるということを世界にアピールするためにも、「悪の枢軸」「圧制の拠点」と運命をともにすることはあり得ません。国際秩序を守り、世界平和に責任を持つ国家として、北朝鮮人民の「解放」を進めるでしょう。北朝鮮人民の保護を名目とし、アメリカの空爆を引き金に中朝国境から解放軍を進駐させるのではないでしょうか。要は、武力攻撃をしたアメリカを(軽く)非難し、自分の面子が保てる上、朝鮮半島への影響力を保持できるのであれば、全く問題なしと言えるでしょう。

 ロシアは、ある意味「どうでもいい」と思っているはずです。「自分に火の粉が降りかからないんであれば勝手にすれば」というところでしょう。ただ、中国の力が強大になることは望まないでしょうから、中国による統治には目を光らせることになると思います。「アメリカや中国の好きにはさせない」というスタンスです。

 韓国ですが、「反日」「反米」のムードが醸成されていること、そして「核」を持ちたいと熱望していることから、アメリカによる先制攻撃を支持するということはあり得ないでしょう。核燃料棒についても、「アメリカが悪い」というスタンスですし。「将来国が一つになれば我々も核保有国になれる(=日本に勝てる)」と思っているでしょうし。空爆⇒中国統治になった暁には、自ら中国の影響下で朝鮮半島の統一を願い出るのではないでしょうか。つまり、「親中朝鮮半島」の統一国家の誕生です。そのために、まず在韓米軍を追い出そうとするでしょう。アメリカは朝鮮半島全体が赤化統一されることは望まないでしょうから、国内工作によって韓国の保守派をたきつけ、親米政権を誕生させようとするはずです。統一後に親米政権が樹立されるか、半島分断状態を維持するかは不明です。

 さて、日本ですが・・・
 「遺憾」を連発するでしょう。そして、日本海での防衛活動はするかもしれません。国内では在日朝鮮人を中心としたデモが連日起こるでしょう。小規模なテロが起こる可能性もあります。拉致被害者を救出するために特殊部隊を派遣する度胸は日本政府にはないでしょう。拉致被害者の奪還は、中国政府とのダラダラとした交渉によって少しずつ、少しずつ進むのではないでしょうか。ふざけた話ですが、これが戦後日本の限界なような気がします。
 そして、北朝鮮復興資金をたんとふんだくられる上に、どう転んでも朝鮮半島は「反日」でしょう。
 北朝鮮によって最も貧乏くじを引くのは日本です。やりきれないですねぇ。。

 大変長文になってしまいました。最後まで読んでくれた方に御礼申し上げます。
 あくまでもこれは私の思考実験です。皆さんの色々な意見など頂戴できると嬉しいです。

Posted by yasukichi2004 at 20:57 │Comments(4)TrackBack(13)
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コメント

ま、あれじゃないのかな。

実は軍事オプション以外、他に方法ないんだな実際さ、
ある意味韓国の政権が弱腰なのは、世論が怖いからで、政治家の政治的判断じゃ無いとこが痛い、
昨今の軍事オプションで大事なのは「その後」でしょ、
(これで成功の可否が決まると言っていい)
そういう意味じゃ日本の存在は実は非常に重要で、アメリカの期待は大きいよそれは、

それこそ考えるべきなのは「北朝鮮で選挙できるのかね」って部分、彼の国は一体どこまでカルトなのか?民意というのは醸成されるだろうか?ここの分析にGOorNOはかかっているのじゃないだろうか。

Posted by kagewari at 2005年05月13日 17:22

kagewariさん、コメントありがとうございます。

北朝鮮の場合は、強固な宗教的バックボーンがないので、有り余る食料をまず供給すれば暴動などは起きないでしょうね。
ただ、「指導者」がいるかどうかが問題かな。まだ日帝時代の生き残りはいるでしょうから(多分)、民主主義とか選挙の概念はあるとは思うんですけど、なんせ隔離時代が長いですからねぇ。
まあ、なんだかんだ言ってもインテリもいるでしょうし、飢えさえしなければみんな大人しくアメリカに従うと思いますよ。
楽天的すぎますかね。。

Posted by yasukichi at 2005年05月14日 01:32

TB&コメントありがとうございました☆
鋭い分析で勉強になりました。
北が暴走し始めているし、本当に核保有されたら(韓国以外は)困るので、そろそろ各国とも"崩壊後"のシナリオを真剣に考えているんじゃないかと思います。ただ、北を潰しても旨味があまりないから気乗りしないんでしょうね・・・(石油もないし)
ご指摘のとおり、一番の貧乏くじは日本であろうことが激しくイヤ(T-T. まったく隣国に恵まれなてないですね。

Posted by freya at 2005年05月15日 02:07

freyaさん、コメントありがとうございます。

>一番の貧乏くじは日本であろうことが激しくイヤ(T-T. 

そうなんですよね。どう転んでもその状況は変わらないだろうという。

>まったく隣国に恵まれなてないですね

引っ越せるもんなら引っ越したいんですけどね。。なかなかそうはいきません。国際間でも「迷惑防止条例」みたいなもんが出来ないもんですかね。。
「ストーカー防止条例」でも可。

Posted by yasukichi at 2005年05月16日 13:55

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