どのようなテーマの話をするときも、この「強み」についての考え方が、自分の思想の根本の1つなんだなあ、と感じるため、今回から何回かについて、この「強み」についてまとめてみたいと思います。
その第一回として、今回のテーマは、
「強みはGIFT、つまり両親を筆頭とした人々から与えられたものである」
という点です。
ここで、強みの定義や、強みのベースとなるメカニズムには様々なものがありますが、ここでの捉え方のベースとしては、マーカス・バッキンガムのStrengthFinder(邦題 さあ、才能(じぶん)に目覚めよう) に紹介されている、米国Gallop社のコンセプト・フレームを前提にしたいと思います。
※詳しくは、上記の本をご参照ください。
では、強みの形成を、時系列で考えていきたいと思います。
強み形成の段階1:幼少時の刺激量と神経の発達
生まれたときには、様々な脳内での神経回路が発達をしていくけれど、特に発現・進捗が著しいのが、自分がDNAで両親から受け継いでいる部分。
例えば、相手に共感することのできる力が高い親から生まれた子供なら、それを担う部分は他の人に比べて、より発達する可能性が高くなります。
そしてその後、自分が幼少期に成長する過程で、刺激されたり、使われたりする神経は残っていきますが、そうでない神経は、急速に退化していきます。
ここで、私がポイントだと思うのが、刺激されたり使われたりするという場面。
両親を初めとした、自分と多く接する人との機会の中で、それを多く使う機会を見受けることがあれば、その部分が刺激を受け、子供の神経も残存し、強みとして成長していく可能性が高まります。
一日のうちで刺激を受ける時間の長さには限界があるので、すべての人がすべての神経が伸びるわけでなく、自分の素地と、その経験量によって、10歳くらいまでには、おおよその強みのカタチが違ってくるわけです。
これを、私の強みの1つである「学習欲」という要素を例にとって考えると、次のようになります。
※「学習欲」とは、上記のStrengthFinderにも紹介されている要素の1つですが、この本についている診断ツール、および過去のもろもろの経緯から、おそらく間違いなく、自分の強みの1つかと思います。
私の場合、親父が研究者、さらにその親父(祖父)は気象予報官で、二人とも勉強が大好き。
土日も、二人共通の書斎があって、そこで、親父と祖父が勉強を楽しそうにしている姿をみていたので、
「きっと学習は楽しいんだな」
というのが、染み付いていたかと思います。
そして同時に、親自身が、その強みについては心の底から大切だと思っているし、それをベースに生きてきているので、子供がその強みを発揮することに対して、とても肯定的に接してくれます。
こちらに対する押し付けではなく、心の底からそれが大切だということが、メッセージとして伝わってくるため、こうした刺激がまた、「強み」についての子供の脳神経部分の発達に、大きく寄与することとなります。
強み形成の段階2:親からの後天的ノウハウや成功体験の提供
次に、子供が成長していくと、さらに親は学習をするときに、大切にしているものを、後天的なノウハウとして、見せてくれます。
例えば、私の父親の場合、興味のあることがあったら、何か他はそっちのけで、半日でも一日でも、土日にも平気で書斎にこもって本を読んだり、書き物をしたりしていました。
真っ白な紙に、アイデアや、今思えば数式などを書いてみて、それをああだこうだとやりながら、詰めていく。
集中している。
手の届くところにはいつも白紙があり、必要な本がおいてあり・・・。
そして、「強み」を発揮する機会に子供が取り組むときには、様々なヒントをくれます。
例えば、私の場合は、本を買ったりするときは、漫画もOK、他もOK。
ポリシーとしては、
「いろんなことから、ものごとは学べる。今の自分が大切だと思わないことの先にこそ、実は今の自分の考えを打ち破る新たなものがあるかもしれない。だから、何にでも手を出す」
ということを、親父は教えてくれました。
やってみる。そうすると、最初は面白いのか?と思っていた本の内容に興奮したり、楽しくて仕方なくなったりしたものです。このパターンは、「学習欲」というものを発揮する際の、とても大切な自分のノウハウとなっていったんだなあ、と思います。
おそらく、こうした中で、自分の学習に関する神経は、残存し、強烈に発達していったような実感があります。
学習するときに、心から湧き上がるワクワク感、高揚感は、この時期に形成されたんだろうな、と感じます。
こうした支援を通して、子供には、その強みを発揮するためのノウハウと、発揮することでの成功体験の双方が積みあがっていきます。
強み形成の段階3:社会の中での強みの加速と成長
こうして、親の庇護の元で伸びてきた「強み」は、今度は、自分自身の強みのベースから、そのベースを発揮し、さらに刺激をうけ、強みが神経と、そして後天的なノウハウの結合で進捗していくというフェーズに入ります。
これは、同年代の集団の中で、自然に相対的に、自分のその強みが際立ってくることから始まります。
例えば、私の例でいくと、同級生が知らないようなことを、たくさん知っていて、それをほめてもらったり、すごいなあ・・・といわれることで、
「それっていいんだ・・・」
という感じと共に、
「意外に、他の人はそれができないんだなあ」
というふうに感じたのを憶えています。
その強みの活かし方を、今度は試行錯誤で自分自身が学んでいきます。
例えば、0ベースで考えるよりも、最初にその分野での体系化されたことを本で押さえておき、そこから先は自分の考えを伸ばしていったほうが、手っ取り早い。
これが、うまくいったりうまくいかなかったりする。
一方で、直線的なことばかりでは、幅が出ないことも学びました。
例えば、ラジコンを一生懸命に遊んだことで、電気やバッテリーがどのような特性を持っているか、結果的に理解できるように。
耐久レースをするときに、でかいモーターを載せると消耗電力が大きいので、それを活かせないコースだと、むしろ小さいモーターで消費電力を小さくして、コントロールできるスピードでいった方が、勝てる。
モーターがスタックすると、過電流が流れて、なぜか電線が高熱を発生して燃え上がったり・・・
これがあると、学校で後から学ぶ電気といった分野は、お任せの世界。
興味を持っていることに深堀することで、学ぶことが大きい、というパターンが、自分の中で見えてきました。
だから、興味はストップしない・・・というのが、「学習欲」を活かす上での自分としてのノウハウに。
このようにして、最初は、自分の親などの補助輪で加速された強みが、自走するうちに、自分自身の加速の方法、コントロールする方法を身につけ始めます。
こうして、
(強みを発揮)⇒(周囲にほめられる)⇒(強み発揮へのメンタル/ノウハウが強まる)⇒(益々強みを発揮)・・・
という連鎖が発生し、「強みの脳内神経」「強み発揮のノウハウ」そして「強み発揮を肯定するメンタリティ」の3要素が、加速度的に伸びていくわけです。
強み形成の過程とGIFTについて
さて、こうしたメカニズムを踏まえて、大切にしたいと個人的に思うのは、この過程が
「親⇒自分」
だけでなく
「その親⇒親⇒自分」
はたまた
「・・・⇒その親の親⇒その親⇒親⇒自分」
と、何百年も受け継がれてきたヌカ床のように、伝統のあるものだということです。
親が伝えてくれたDNAもそうだし、伝えてきた価値観、伝えてきたノウハウも、姿・形を代々変えて、自分に受け継がれてきたと思うと、とても大切で、誇らしく、そして根拠に満ち溢れたものだと感じられます。
強みは、その発揮に感謝するとともに、両親を筆頭に、ご先祖様、はたまたそこに関わった人からの賜物である、と感じる次第です。
以上、これが才能(「強み」)は、「GIFT」なんだなあ・・・と、私が感じる理由です。
こういう捉え方をしていると、強みをお互いに持っていることが、相手への尊重にもつながるし、自分と大きく異なっているGAPにも納得がいく。いやあ、人と付き合ったり、コミュニケーションするのは、本当に楽しいなあ・・・と、感じる次第です。
ちなみに、ここで例示したモデルは、あくまで直結的に強みが受け継がれた場合のケース(個人的には、これが中心的な役割を担っていると感じますが)ですが、その他にも、以下のような例に代表されるような、ちょっと違った形での強みの形成もあると思います。
・親とは違った強みが形成される過程~親への反抗
・親以外の要素で強みが形成される過程
ただ、いずれにせよ、こうした親、その先の先祖などにつながる部分からの影響というのは、強み形成に非常に大きな役割を果たしており、その人その人の根幹を担っているという点には、変わりはないと考えます。
さて、次回以降は、こうした形成プロセスを持っているものとして「強み」を捉えた上で、コラボレーションなどのテーマとの関連性を考えていきたいと思います。