2011年07月21日

【詳しいやり方が分かる】ワールドカフェ実践マニュアル

最近、ワールド・カフェに参加をした、ワールド・カフェを使ってイベントを開催する、という声を聞くことが増えてきました。


この、ワールド・カフェという話し合いの手法ですが、私が以前勤務をしていたHumanValue社が、この手法の書籍を日本語訳していたり、同社勤務時代も、その後の複数のビジネスの場面、カンファレンスを主催した際にも活用しており、この方法が拡がっていくのは、とても嬉しく感じています。


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※ワールド・カフェの風景「コラボレーションカンファレンス2010in福岡」

ですが一方で、ワールド・カフェに参加した友人や知り合いから

「こないだ参加したワールド・カフェ、酷かったよ・・・」

など、ちょっと気になる話を聞くことが増えてきたのも、また事実です。


そういった場合、詳しく状況を聞いていると、ワールド・カフェを運営する上で、押さえておきたいポイントが押さえられていなかったり、根本的に進行方法がワールド・カフェとは似ても似つかないものになってしまっていたりすることが多々ありました。


そこで、「ワールド・カフェをぜひやってみたい!」と思った方が、

難しいファシリテーションの技術や、詳細な事前準備などをせずとも、
ある程度安定的にワールド・カフェを運営できるような


実践的なマニュアルを作成したいと考えるに至りました。
 

■このマニュアルの位置づけ

・このマニュアルは、ワールド・カフェの開発者であるアニータ・ブラウン氏、およびデイビッド・アイザックス氏の著書「The world cafe」の日本語訳である、「ワールド・カフェ」(HumanValue出版)の内容、および私自身が企画・ファシリテーションを担当したワールド・カフェ運営を通した経験を基に、制作しました

・主な想定対象者は、「ワールド・カフェに参加してみて、自分でもこれをやってみたい」と感じている方、および「これまでワールド・カフェをやってみたんだけれど、どうもいまひとつしっくりこない」と感じている方です

・このマニュアルに記載したのは、あくまでワールド・カフェの1つの運営パターンであり、これ以外にも様々なバリエーションが存在しますし、これ以外の運営方法を否定するものではありません

・マニュアルの内容は、今後みなさんからのインプットなどをふまえて、改善/拡充したいと考えております
 

▼それでは、以下がワールド・カフェ実践マニュアルの本編となります。少しでも、みなさんのお役に立てばなによりです。


ワールド・カフェ実践マニュアル 本編

Step0〜Step12の流れに沿って、各コンテンツを自由にご活用ください。

本内容に関しては、パワーポイントファイルをそのまま編集して実施に利用したり、企画会議などで転用などをしていただいて構いません。
 

Step0:ワールド・カフェの進行イメージと要点理解

自分が運営サイドになったとき、どのように進めればいいか、何に気をつければいいかを、下記の2つの資料「ワールド・カフェ進行表」および「進行スライド」を参考に、イメージしてください。


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ワールド・カフェ進行表(ダウンロード)

ワールド・カフェの進行を、どのように進めればいいか、進行役向けに詳細を記載しています

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進行スライド(ダウンロード)

上記進行表に対応した、パワーポイントの進行スライドになっています

これら2つの資料は、組み合わせて使うことで、そのままワールド・カフェの進行ができるように制作しました。
話し合いのテーマなど、内容を実際の企画に合わせて、ご自由に変更し、ご利用ください。
なお、進行表との対応を明確にするため、各スライドの右下に、そのスライドの名称を白いボックスで記載してありますが、実際に進行に使用する場合は、削除してしまってもいいかもしれません。

また、上記の進行表/進行スライドに沿って、実際のファシリテーションを録画した映像を下記の通り用意しましたので、進行表を印刷し、進行スライドをPC上に写しながらご覧いただきますと、進行のイメージがよりつけやすいかと思います。


これらの資料 で、進行のイメージが確認できましたら、次に下記の資料にて、進行上、決して外してはいけないポイントについて、ご確認ください。

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ワールド・カフェの要点(ダウンロード)


この資料は、私の友人たちが遭遇した「痛いワールド・カフェ」にて、特によくありがちな進行に関する誤解を解消するために制作しています。
 

→上記内容で、不明な点などがあれば、このページのフェースブックコメント欄、あるいは私のツイッター http://twitter.com/yasuyasu1976 へのメッセージという形にて、ご質問くださいませ。

ご自分の中で実施のイメージがついたら、下記のStep1へと進んでください。
 

<ワールド・カフェ開催の1週間〜2ヶ月前>

Step1:ワールド・カフェのイメージ共有

ワールド・カフェがどのように楽しかったか、どんなことが自分たちで実施したら起きそうか、といったことを、ワールド・カフェを体験していないチームメンバーに共有し、実施への賛同や合意を得ます。
この賛同や合意を得る相手は、社内でワールド・カフェを行おうという場合であれば、上長、および運営を共同で行う同僚がそれに該当します。もしも、外部に向けて行うイベントやセミナー、カンファレンスなどであれば、その運営チームが、相手となります。


Step2:ワールド・カフェ実施の企画を立案する

下記の「企画マニュアル」に沿って、ワールド・カフェの開催概要を、運営チームでの議論によって検討します。

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ワールド・カフェ企画マニュアル(ダウンロード)

こちらのマニュアルには、実際に行われたワールド・カフェの企画段階のサンプルも記載しております。

Step3:会場の下見と確保

「企画マニュアル」に沿って決定した開催概要の中には、会場に関する要素も含まれています。その内容に沿って、会場選定と予約を行うのが、このステップです。
会場を決定する際には、それが社内の会議室であっても、外部の会議室であっても、距離の離れた郊外の施設であっても、実際に現場に赴き、下見を行った上で最終決定することを、強くお勧めします。 


Step4:招待内容の制作

参加者への募集、参加勧誘の告知を制作します。
ワールド・カフェに関する告知/説明には、 下記サンプルも参考資料としてお使いください。

ワールド・カフェ開催告知例(コラボレーションカンファレンスin福岡)


Step5:参加者への声かけ

実際の参加者への勧誘、募集などを行います。


Step6:資材の調達

当日資材の調達を行います。主な必要資材は、下記の通りとなります(◎:必須、○:あると好ましいもの)。

-機材・資材等:

◎参加者全員が4人1組で座れるだけの、机と椅子

◎各テーブルの上を覆えるほどの大きさの模造紙(A1またはA0というサイズ)

◎上記の模造紙をテーブルに固定するための、セロテープなど

◎各テーブルごとに、模造紙に書き込みができる8色または12色の色ペン(ポスカ など)

◎ワールド・カフェの最後に個人の発見などを書き込むポストイット(一辺4cm程度の正方形のタイプのもの)

◎プロジェクタ+スクリーン(本マニュアルに添付しているスライドなどを投影して進行できます)

○カフェ的な雰囲気を出すために、各テーブルと模造紙の間に敷くテーブルクロス

○カフェ的な雰囲気を出すために、各テーブルに提供するちょっとしたお菓子や軽食

○リラックスした雰囲気のために、開始前に会場に流すBGMと音響装置


<開催当日>

Step7:事前準備

当日の機材、会場のセッティングを行います。
実際の会場設営イメージなどは、下記のFlicker写真などをご参照ください。

コラボレーションカンファレンス2010 in Fukuokaのワールド・カフェ風景写真


Step8:当日の進行

進行表に沿って、ワールド・カフェを実施します。
※この実施には、先ほどStep0で提示した下記の一連の資料そのままで行っていただくことを、強くお勧めします

(再掲):ワールド・カフェ進行表(ダウンロード)

(再掲):進行スライド(ダウンロード)

(再掲):上記内容の実際の進行例:動画(YouTubeへのリンク)


Step9:記録作業

当日の成果物である模造紙、およびポストイットを、デジカメでの撮影や、ベタうちなどの作業でとりまとめます。これらのデータは、なるべく早いタイミングで参加者のみなさんに配布すると、個人個人の振り返りや、ブログ等での共有をしていただくことができるようになります。


Step10:当日の運営振り返り

次のイベントが予定されていなくても、この振り返りを実施することで、その日の運営者としての学びを運営メンバー同士が蓄積できることから、おすすめです。
特に、打ち上げの飲み会などの前に、10-15分程度で十分なので、ぜひとも実施してみてください。
振り返りでおすすめの方法は、下記の3つのフレームです:

*継続すべきこと

*止めるべきこと

*新たに初めるべきこと


→そして、打ち上げ!


<開催翌日〜翌々日>

Step11:結果速報の共有

可能であれば当日の深夜、遅くとも翌日の午前中までには、参加者のみなさんに結果などを共有します。
これによって、みなさんが感情的にも共有したい状況で、この会の成果などを伝播できます。


Step12:振り返りアンケートの配布/とりまとめ

実際の参加者へEメールなどによってアンケートを実施し、改善点などを確認します。
特に「次にまた参加したいか?」という質問例は、とても重要です。

※後日アンケートを実施する理由は、「当日アンケートを実施すると、せっかくの探求モードが、普通の状態にもどってしまう」という点です。


ぜひ、このマニュアルを参考にして、ワールド・カフェを通した思考の刺激、アイデアの創発をお楽しみください。


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CollaborationConferenceでワールド・カフェを終えて興奮気味の会場

2011年07月01日

忘却と「タイムラグ」から何が学べるか?


先日、友人が主催してくれたソーシャルに関する研究会での議論で、「タイムラグ」が1つの話題になり、それについてしばらく考えていることがあったので、今日はそれをシェアしたいと思います。

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この研究会での議論としては、何かの施策・打ち手を行なってから、実際にそれが結果に結びつくまでには、色々なプロセスが連鎖し、最終結果となるから、安直に「この施策は失敗しましたー」と、短期間で結論付けるのでは、評価できないものがあるよね、というのが1つの切り口でした。

具体的には、フェースブックを使って企業がファンを増やしていっても、すぐには売上増加などには結びつかない(というのは、データで出ていると)。だけれども、直感的には、おそらくそこから長期的に特定の企業に愛着が生まれたり、率先してその商品を購入するようになると思うから、短期的にフェースブックなどでの施策を「売上に結びつかないから撤退・縮小」などとするのは早計だね、というケースが挙げられたりします。

で、その話が頭にちらちらと残っていて、考えたのか今回のお話となります。

この「タイムラグ」、実は個人的に1つ強烈な経験があります。

私は、6年ほど前から手帳に、「今どんなことを考えていて、何をやろうと思っているか」という内容などを、割と細かく記録にとっています(なぜそんなことをしているか、ということをお答えすると、あまりに話が長くなりますので、それは割愛します・・・)。

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その手帳を見返していたら、今から4年程前に、「新しい人と積極的に会いに行き、その際には”キースフェラッチオの本”に書いてあることを実践して、深い交流が持てるようにする。そこから得られる刺激・出会いによって、きっと面白いことがおきるはず。」ということを、このキース・フェラッチオ氏の講演をたまたま海外のカンファレンスで聞いて、思い立ったことが記録されていました。

これは、衝撃でした。なぜなら、この手帳を見返した時(および今もそうですが)、私は夜な夜な色々と新しい出会い、面白そうな人との出会いを求めて、まさにここに書いていることをしていたからです。そして、なにより衝撃だったのは、この行動のきっかけが、この数年前のことにあったのを、すっかり忘却していたからです。

よくよく考えると、これは当たり前かもしれません。なぜなら、

1.何をやったか、という記憶そのものは、数年も経てば、大概は忘れてしまう
2.そのきっかけから、具体的にどんなことをして、結果何が起きるかは、当初は大抵予測不能なため、様々なことがあっても、オリジナルのイベントとの関連性に気付きにくい
3.自分を取り巻く環境が、当時と変わってしまっており、日常の中で、そのきっかけを思い出すトリガーが存在しない

といった理由が考えられるためです。

一方で、こうした、結果が出るまでに時間が長くかかること、言い換えれば「タイムラグ」が大きいことは、取り組むこと自体に、とても価値があることかと思います。その主な理由は、

1.タイムラグが大きいということは、すなわち自分以外のいろんなところをめぐりめくって、周囲との関係の中で変化が起きている可能性が高く、それは即ち、その営みが巻き込む範囲が大きく、より重要な変化に結びついていることを意味するから

2.結果が予測できないということは、それだけ斬新で、革命的な営みである可能性が高いから

といったところでしょうか。


さて、というわけで、

「やり始めのことを記録しておいて、後で検証可能にしておくこと、そこに跡付け解釈を入れる余地を無くすこと」

というのをやってみておくと、結構、いろいろな出来事の因果関係を、結果からの後付け講釈ではなく、事実を元に振り返ることができるかと思います。

で、ここで1つのクエスチョンが頭をよぎりました。

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「因果関係が分かったところで、何か今更それが役に立つのか?」

というものです。

これ、やっぱりとても役に立つな、というのが、私の仮説です。

なぜなら、

・いいと思ってやってみることへの自信がつき、短期で成果が出なくても、「その先に何かが待っている」と、長期の取り組みへの自信につながる

・自分への理解が深まる(自分が繰り返せること、繰り返せないことが、見えてくる)

・同じことへ2回取り組まなくて済む様になる

そう、ひとことで言い換えるなら、

「ちょっとやそっとの目先の失敗や苦労にへこたれず、新しいことにチャレンジする活力が沸いてくる」

かなと思う次第です。


こうして、個人の営みについては、記録をとり、それを振り返ることで「タイムラグ」と、上手く付き合うことができるのではないか、と感じ始めたのですが、一方で、「タイムラグは、個人ではなく、チーム・企業という単位に置き換えて考えると、何を意味するんだろうか・・・・?」という問いが、頭に浮かんできました。

いったい、これはどうなんでしょうか?これが、現段階で私が「タイムラグ」について、最も頭にもたげているテーマとなっています。

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それではみなさん、ごきげんよう。

この件に関するコメントや議論など、大歓迎です。
※ぜひとも、下記のFaceBookコメント欄など、お試し・ご活用ください。まだお会いしたり、お話をしたりしたことの無い方、大歓迎です。