2012年09月11日

政治家との勉強会に参加してきた

世の中の本流、日々企業が取り組む内容やトレンドと、政治によるアウトプットが乖離しており、一方的に政治からの影響を受けるばかりで、そこへのフィードバックを返せないという感覚、もやもや感の大きさってありませんか?

スライド2
今回はこのテーマにて、先日巻き込まれた政治家との勉強会の経験を共有したいと思います。

#####今回の要旨#####

1.政治から一方的にアウトプットだけ受ける社会構造がある
2.政治への観点は、知り合いが居ると変化する
3.インタラクティブな勉強会に参加すると、凄く変化する

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それでは、本編です。


■政治から一方的にアウトプットだけを受ける社会構造

選挙による国民の声の反映というのは、感覚的には上の図に書いた程度のもので、実際には「政治の沼」の中で決まっていて、選挙なんて、そのときだけの瞬間的なイベント。

そんな感覚はありませんか?

僕は、あります。

アメリカの著名な心理学者ミハエル・チクセントミハイによれば、「自分が何かをして、それによる影響が目に見えて分かる状況ほど、その対象物への興味・関心が高まり、より関与が強くなる」という傾向があり、これを「自己統制感」と呼びます。

今の日本の政治は、まさにこの「自己統制感」が欠如し、結果として政治への関心が薄くなり、ますます政治への関与度は下がり・・・という負のスパイラルが連鎖し、結果として、本流からの流れが入り込まない「政治の沼地」からの影響で、益々日々の生活に辟易とするアウトプットがもたらされるという悪循環に陥っています。

 
■友人が増えるととたんに関心が増して行く

そんなことを悶々と感じていたところ、大きな転機になったのが、「実名官僚」として有名な、厚生労働省の千正さんとの出会いです。

彼は見た目は本当にいかつくて、どう見てもSPの方にしか見えないのですが、実際には厚生労働省の本流を歩いてきた、れっきとした官僚。

あるイベントで知り合って以降、じっくりと7−8人のグループで会ったり、個人的に飲みにいって語らったりする機会があったのですが、そこで見えてきた状況や話をベースにすると、大きく政治の世界が身近になってきます。

例えば、

・政治家は世論を常に気にしていて、応援されているか批判されているかで全然心持ちが違う

という話。

政治家は、選挙のときだけしか国民を見ていないかといえばそうではなく、実際には、日々の政策論争や大きな論点で、国民に支持されているかどうかという空気を感じて、それに大きな影響を受ける。だから、そういう空気が色々なところからちゃんと発せられるようになっていると、それがきっかけになって大きな影響を及ぼす。

このような経験から、次第に政治に対しても、そこに関わる人達と交わりながら、自分たち自身で世の中の流れや、何をどうすべきかを深く、腰を据えて考える営みが大切だと思うようになり、そんな活動を続けるようになりました。


■たまたま政治家との勉強会に巻き込まれた

そんなとき、ふと声をかけられたのが、以前一緒にベンチャー会社の運営をやっていた友人からの、勉強会の誘い。この会ですが、ざっくりとテーマとして「日本の将来を考える」というもので、何やらよくわからない感じのテーマで、面白そうだから参加してみようか、というノリで参加してみました。

すると・・・会場の入口からアウエー感満載

集まったのは、水道橋の某ビルの1F。

いつも、この友人も含めて開催する勉強会というと、主に大企業や有力ベンチャー企業の30代ビジネスマン、ベンチャー経営者、弁護士といった連中が集まり、かなりライトでホップ(死語・・・)な雰囲気なのですが、この日はどうも様子がおかしい・・・。

集まっている10人程の人たちのほとんどは、夏なのにスーツ姿。聞こえてくる会話というと、

「こないだ◯◯先生が・・・」

「明日は講演会のあれですか・・・」

「今日は、いつもの政策検討とはちょっと違って・・・」

といった声が聞こえてきます。この時点で、相変わらずのこの某友人の事前説明の甘さと、仕切りへの不安が増します(汗)。


■明らかになった当日の全容と趣旨

冒頭説明で分かりましたが、この会は、日本全国250人程の若手政治家の集まりである「竜馬プロジェクト」という営みの主催をしている神谷さんという議員と、僕の友人がどこかで意気投合し、

「じゃあ、いつもビジネスマン同士で話し合いをする手法を使って、政治家とビジネスマンなど、普段交わらない人で話し合いをして、そこから新しいものを発見しましょう」

という営みだということが判明。

なるほど、その狙いは悪くないな・・・と思いつつ、先ほどのノリでいかにも「議員」という人たちの雰囲気を考えると、全く議論するイメージが沸きません

「きっと、暑苦しく考え方を一方的に聞かされるんだろうな・・・」

など、早くも引く感じが。

これに追い打ちをかけたのが、主催の神谷さんの挨拶。いかにも政治家という感じで、爽やかです。う〜ん、さわやかだからこそ、怪しい。きっとこのスマイルで多くの票を獲得してきたのでしょう・・・。

kamiya






■個人ワーク:1VS1のインタビュー

さて、最初に行ったのが、AIという手法に基づいた1VS1のインタビュー形式での参加者相互理解。この方法そのものは、私もかれこれ7年くらい関わってきた方法で、とても効果的です。

・2人1組でペアになって相手のことをインタビューする
・配布されたシートを読み上げて聞く

という仕掛けになっており、お互いがお互いに何をするか理解しているため、安心して取り組むことができ、役割を交換するため、一方的な話にもなりません。

なにより、相手の話を遮らずに聴き続けるという状況であるため、お互いを深く知ることができます。

そして、幸か不幸か、私はこれを神谷議員と行うことに(汗)。

ですが、これがよかった!

以下のようなことが分かって、一気に神谷さんのことを親しく感じるようになりました

・実家がスーパー経営をしていて、小学生の頃からレジ打ちとかを手伝い、大人の世界を知った

・小学校で、勉強も運動も自信がなかったのが、好きな子ができて頑張るようになり、小6では学校の生徒会長になる

・しかし、小学生のときの横柄な態度の反動で、中学になるとイジメられるハメに

・20歳の頃、カナダ・アメリカ・アフリカと世界を周り、日本がとても恵まれた国であることを実感

・特に、アフリカで子供たちがものを売りつけてきて、その背後で親たちが様子を伺っているのを目の当たりにし、「これは日本だったら、とんでもないことだと批判されることだけれど、それはあくまで日本という恵まれた経済環境の国だから成り立つ規範。この国では、生きるためにみんなが必死だから、これを批判なんてできない・・・これが、世界の現実」と感じたことが、原体験として強く残っている


■日本のビジョンの検討

引き続いて、自分の所属するグループ内にて、日本のビジョン検討。こんな紙を使って、日本の将来像について個人の観点をまとめる作業をしました。



vision

これを「教育」「エネルギー」「経済」「外交・防衛」「政治」といった区分で詳細に考えようとすると、それぞれの領域での自分の視野の限界を痛感。

ですが、他の政治家の人たち、それに他のビジネスマンの制作したものを眺めていると

「ああ、なるほど、みんなはそのくらいの水準か」

「やっぱり、人それぞれ偏りはあるよね」

という新鮮な感覚あり。

こうやって、互いが日本全体について何を考えていて、それぞれの分野でどのような関心や方向性や知識を持っているかを共有しあうという場面って、無いよなあと実感しました。


■「教育」「エネルギー」「経済」「外交・防衛」「政治」のテーマ別検討

次に、自分たちが作ったビジョンをベースに、その主要テーマ毎にグループをつくっての検討。

面白かったのが、このグループ分けでの動き。案の定ですが、「教育」というテーマには人が集まり、他のテーマの倍くらいの人が集結。そうなんですよね、「教育」って、自分が実際に経験してきていて身近で、なおかつやり方によっては、個人でもある程度そこに関与できるので、他のテーマに比べて結果的に関心が高まるというのは、他の勉強会などでも感じること。

逆に言うと、それ以外のテーマ、たとえば「外交・防衛」とかって、先ほどの「自己統制感」が特に低いため、普通はスルーされがち。これは、政治の沼地の人たちのせいとかではなく、仕組み的な問題かも。

そして、検討へ。私の居たテーブルは、先ほどの神谷議員、北海道の弁護士の方(=出席している議員の後援者)、ダンディなイタリアン風ビジネスマンの方、という組み合わせで議論。

なるほど、ここでの議論で面白かったのは、日本政府がホワイトハウスに対してどのような行動パターンを持っているかという話や、その背景に軍事力のバランスがどう絡んでいるのか、などの詳細な背景情報。こういった話や要素は、間接的に聞いたことはあっても、こうやって生々しく聞くことは初めて。

逆に、こちらからも、最近の個人テーマである東南アジア圏での経済状況や、現地のベンチャー・政府などの話をインプット。互いに刺激が深まる瞬間でした。

こうしてグループとして意見を統合していくと、いつもとは違った観点での話が1つ生まれました。

この、「互いに持っていない観点を交じり合わせてつくっていく」感じは、分野の異なるビジネスマン同士がアイデアを出しあい、そこから新たなプロジェクトをつくっていくという営みと通じるものがあり、政治に対する興味・関心がぐっと深まりました。


■ワールド・カフェによるネクストステップ検討

そして、この議論を終えたあとに、今度は参加者入り乱れての、「明日から何をしていくか?」というテーマでの検討会。

私が参加した議論では、

「ソーシャルメディアを使って政治家、あるいは政治家でない人が特定のアジェンダ(=例えば「学校カリキュラムってどうなるべき?」などの論点のこと)を提示し、そこに集まってきた人たちが実際にリアルでこうした会合を開催し、意見を深めて、そこから政治家がバトンを受けて現実に反映したらいいのでは?」

という話になり、現役の議員へのソーシャルメディアの使い方を、20代の若手広告マンが指南するという流れに(笑)。

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こうした意見交換や、普段の取り合わせでは発生しない色々なアイデアが、その場で書くテーブルに広まっていっており、会場は文字通り熱気に包まれていました。


■輪になって参加者の感想共有

最後は、こういうイベントでは恒例ですが、20人以上の参加者が輪になってのチェックアウト(=1人1人、1分程度で感想を言いっぱなしにする方法)。

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主な話としては、

(政治家の人たち)
・普段はこうやって、政治家以外の人たちとメッコリやり取りをする機会がなくて、本当に勉強になった
・政策論争という点では、参加者ごとによる知識レベルがまちまちで、物足りなかった
・こういうまぜこぜの議論ができると、直観的に何かきっといいことが起きると感じた

(政治家以外の人たち)
・如何に普段、政治に無関心で勉強不足だったかと感じるとともに、色んなことが知りたくなった
・この営みを継続的に行なって、政治家の人たちと一緒になってできることを探し、アクションしたい

(全体)
・とにかく、頭が疲れたのひとことだけれど、それは普段、こういう脳みその使い方をしていない証拠
・こういう話し合いを、どんどんしていきたいと思った

(私個人)
・アウェイ感満載だったけれど、そういうときほど学びが大きいので期待していたら、その通りになった

という感じでした。



■総括すると

というわけで、今回の営み、お読みになられていかがでしたでしょうか。

今回特に感じたのは、

・他の仕事やテーマと同じで、政治についても自分ごととして議論したり、その分野でめっこりやっている人とやり取りして距離感が近づくと、見えてくるものが全く違う

・マスコミや記事から感じられる話は間接的で、批判的で、何か仮想敵をつくって不満を発散という風になってしまい、この場での話のように建設的になりにくい

・何ができるか、何かが変化するかどうかはすぐには分からないけれど、それはビジネスの世界でも同じ。

・でも、ソーシャルメディアがあるので、上手く拡散や発散、巻き込みができたら、かなり世の中へインパクトがあり、それが直観的にいいことにつながりそう

といったあたりです。

どうでしょう、こうした営みに、あなたも一度顔を出してみませんか?

それでは。


▼友人が主催しているこの営みの詳細は、こちらのページより。上記検討会の続編などを、企画中です。 

▼同じく9月27日19:30−@表参道にて開催の、大阪の未来に関して考えるワールド・カフェ
http://www.facebook.com/events/106722542812959/