10月というと、多くの企業で人事評価が行なわれるタイミングかと思いますが、聞いていてとても残念な気持ちになるのが、
「やれやれ、人事評価のタイミングだよ」
「上司との面談、いやだなあ」
という話。
マネジメントや人事評価が、人からモチベーションを奪うものとして捉えられ、運用されているのはとてももったいないし、そこには大きな誤解があると思います。
本質的に、人の評価とはすなわち、その人に興味を持ち、その人の営みと成長に他者が関わり、そこで生まれたエネルギーが、全体にも貢献できるようにすりあわせをし、ガイドするもの、だと私は思っています。
上手くいけば、「元気になり」「成長が加速され」「全体と、よりハッピーな働き方が見つかる」ようなものであるはずです。
そこで今回は、「人事評価やフィードバック」に関するありがちな誤解と、「こうあったらいいなあ」というところを、簡単に紹介したいと思います。
■ありがちな誤解
まず、私がよく感じる、人事評価によくありがちな誤解には、以下の3つがあります。
1.定期の業績評価をしっかり行なうことが大切
2.客観的に評価することで、よりよい結果が導かれるはず
3.できていないことを指摘することで、成長のきっかけになるはず
1つ1つ、見て行きましょう。
1.定期の業績評価をしっかり行なうことが大切
これは、
会社で定められた半期などでの定期評価をしっかりとやればいい、
という考え方です。
それ自体は間違っていないかもしれませんが、裏返して言うと「定期評価以外では、メンバーのことをちゃんと見ていない」ということにつながります。
普段、ろくに仕事内容も知らず、こっちが何を考えているかにも興味を持たずにいるのに、期末になると、突然紙のシートを書かせて、それを勝手にこねこねして、一方的にしゃべってくる。
これでは、
評価を受ける側は、ちゃんと見てくれていないなあ・・・、
とすねるのが自然というものです。
2.客観的に評価することで、よりよい結果が導かれるはず
客観的に評価する、という姿勢が高じると、往々にしておきるのが、マネージャがメンバーを評価対象「物」としてみてしまう、という現象です。
人⇔人のメタファーが、人⇒物というメタファーになると、そこでのやりとりには、相互作用が生まれません。
以前、仕事でアセスメント研修(クライアント企業の人材を昇格させるべきか、様々なテストを実施してこちらが評価するという研修)をやっていたときに気づいたことなのですが、評価されるグループが発揮するパフォーマンスは、こちらが「評価対象として厳しく観察する」姿勢をとるほど、明らかに低下するのです。
こんな状態に陥ってしまうと、メンバーがじっくり自分自身のやってきたことをオープンにし、マネージャと一緒に、今後の方向性などを考えるといったことができるはずはなく、ただただ、辛い時間が経過していってしまいます。
3.できていないことを指摘することで、成長するはず
できないことを指摘されると、元気はなくなります。
自分が本来苦手としていることを伸ばすのは、費用対効果が低いし、なによりもモチベーションを失わせます。
逆に、自分が得意で、現在の業績を挙げるために貢献している部分には、光があたらないのは、本当にもったいないことです。
本当は、そこに投資すると、一番伸びるけれども、マネージャはできないことを見つけ出すのと、それをどうすべきかを説教する術は知っていても、できることを見つけ出し、それをどうやったらさらに伸ばすか、その方法を知らないことが多いのではないでしょうか。
■人事評価はどうあって欲しいか?
これらを踏まえ、本来は評価・フィードバックがどうあるべきかを考えると、
個人的には:
評価というのは、メンバーとマネージャがじゃれあい、互いに興味を持ち、
そこで何ができるか、お互いが最大限になるとどこまで成長できるか、
そのパワーを結束すると、どこまでみんなででかいことができるか、
これを醸成する貴重な機会
だと思います。
そうするための具体的なポイントを3つ挙げると:
1.よくしゃべるのは:× マネージャ ⇒ ○ メンバー
2.やりとりは:× 半期に一回 ⇒ ○ 毎日(メンバーの成熟度合いにより)
3.フォーカスすべきは:× できないことをできるように ⇒○ よくできることを、卓越してできるように
ということかと思います。これは、恋人・夫婦関係になぞらえると、こんな風になります。
1.よくしゃべるのは:× 自分 ⇒ ○ 相手(相手の話をよく聞く)
2.やりとりは:× 誕生日だけ豪華なプレゼント ⇒○ 普段からこまめなやりとり
3.フォーカスすべきは:× 相手の欠点 ⇒○ 相手のすてきなところ(を盲目的に)
どうでしょう?このほうが、素敵だと思いませんか。
■現実に適合するか
さて、そんな風にやったときに、「そうは言っても、評価をつけて、納得してもらい、それによって報酬を決めなきゃいけないからさ・・・」という声が聞こえてきそうです。
ですが実際には、相手の話を「普段から」「深くまで」聞いていることで、多くのファクトを掴むことができ、それによって、より納得感のある評価につながります。
例えば、Aという課題に対してこのメンバーはBというリアクションをし、それによってCという結果を得た、としましょう。
このA,B,Cを抑えておけば、その内容を他の人のABCと比較し、「君のABCと、彼のABCを比較すると、ここがこう低くて・・・」という、根拠の強い説明ができるようになるため、評価そのものの精度・納得度が高まります。
同時に、普段から「そのABCはちょっとよくない」「そのABCはいい」というように複数回フィードバックを返し続けておくことで、目線はあっているので、敢えて評価面談でもめることはなくなります。
というわけで、評価・フィードバックをぜひとも、互いに元気がでる、素晴らしい機会にして欲しいと思う次第です。
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