2005年09月

最近出版された平家物語を知る事典(日下力、鈴木彰、出口久徳著・東京堂出版)を買った。NHK大河ドラマ「義経」のおかげで、この分野は特需景気みたいなことになっているが、この本はそんな「ブームにいっちょかみ本」とはちょっと(いや、かなり)違う。

この本は簡単に言っちゃえば『平家物語』各巻のあらすじと名場面、人物事典、その他基礎知識を網羅した一般向けの解説書である。
実を言うと僕は軍記が苦手である。嫌いなのではない。むしろ好きなのだが、人名を覚えるのが苦手なのだ。『平家物語』ならまだしも『太平記』なんかだと誰が誰やら分からなくなってくる。そんなナサケナイ僕にぴったりである。

一般向けなのでとにかく読みやすい。なじみのない用語や人名などは脚注で解説されているから、初心者でも楽に読めるだろう。人物事典は史実と物語の違いが対比されていておもしろい。文覚って元高利貸だったのか。どうもどことなくやくざっぽいと思った。

「一般向け」といって「一般」をあまりにバカにした本も多いが、この本は参照した資料の書名がすべて書いてあったり、『平家物語』の鑑賞には欠かすことのできない諸本の問題や芸能、享受史までていねいに解説されていて一歩踏み込んだ鑑賞や研究にも役に立つ。

さらに、平家琵琶CDのオマケ付き。2800円でこれはおトクだ、持ってけドロボー。

難点をいえば、これを読んだだけで『平家物語』を読んだ気になっちゃうことぐらいだろうか。ちゃんと原典も読みましょう。
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三連休の23日と24日、群馬県のならまた湖というところで、友人とカヤック(カヌーの一種)の進水式をした。カヤックから見た景色というのは、視点が低くてなかなか斬新である。漕ぐのも一見難しそうだが、それほどではない。

さて、このカヤックは僕のものである。僕は滅多に衝動買いをしないのだが、これは立派な衝動買いだ。

そのころすでに自転車でのツーリングにはまっていた僕は、アウトドアショップの店先で折りたたみ式のカヤック(ファルトボートという)を発見した。
それは、畳んであるときは100リットルの登山ザックほどの大きさだが、アルミのパイプで本体を組み、皮をかぶせると全長4メートルの立派なカヤックになるのである。

僕の脳裏には、カナダのユーコン川(野田知祐の影響であることは間違いない)を荷物満載のカヤックで悠々と漕ぐ自分が映し出されていた。さらに、僕の妄想は続き、前に自分の子ども(もちろん子どもはおろか嫁もいない)をカヤックに乗せて釣りなんぞをする(もちろん釣りの趣味は無い)自分の映像が・・・。

高価なものなので、さすがにいきなり買うわけにはいかない。だが、欲しくてたまらなくなり、いろいろ調べてARFEQ ボイジャー460Tというカヤックとパドルその他一式を買ってしまった。これならユーコンだろうが長江だろうが楽勝だ。もちろん息子(もしくは娘)を乗せるためタンデム(二人乗り)である。

そんなにお金があるわけじゃないのだが、その二年前に30万円の自転車を買ってしまってから、こういう維持費がいらないものは高くてもじきに元が取れることに気づきポンと買ってしまったのだ。

ところが、いざツーリングに出かけようとして気が付いた。これはだいたい20Kgぐらいである。それだけならなんとか持ち運びできるが、これにキャンプ道具を持っていったらえらいことになる。僕は自動車は持っていない。そんなこんなで四年間、放置することになってしまった。

1980年代ごろ、サーフボードを持っていて、サーファーファッションを着ているのにサーフィンをしない人を陸(おか)サーファーといった。僕は世にも珍しい陸カヤッカー(略してオカカ)だったのだ。続きを読む
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自分の興味本位で授業で長恨歌をやってしまった。

個人的に読んでいたときにはさほど長いとは思わなかったけど、さすが長恨歌というだけあって長い長い。
それに書かれていない部分も説明しなきゃならないから、予想外に時間をとってしまった。おかげで期末考査(二期制なので)の試験範囲は長恨歌だけになってしまった。

説明しにくい部分が多いのも困った。「春宵苦短日高起」なんてどう説明すればいいんだろう。最近の高校生はすすんでいるなんていっても、まともに説明したら間違いなくクビが飛んじゃうだろうな。続きを読む
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下のようなマジメなこと書いたら、また面白い発見をした。
もう書くまいと思っていた国民新党HPである。こうばしいな。

始めのころから比べると、このサイトずいぶん良くなってきたと思う。

が、しかーし、最初に表示される更新情報の2005年9月12日のところに「公約を更新いたしました」ってどうなんだ?
投票日は11日だった。なぜ投票日の次の日に公約を更新する?

結局彼ら、公約の意味が最後まで分からなかったようである。
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いまさらながら、小泉自民党の圧勝を論じてみる。僕はこれを「個人の時代」へ移行する一つの現象だと思う。

戦前は「個人の時代」、戦後は「法人の時代」だといったのは故山本夏彦氏である。そして僕はバブル崩壊後、再びゆっくりと「個人の時代」になるのではないかと思っている。

企業は個人投資家を重視して、株主総会を一変させた。ホリエモンのニッポン放送買収事件も、表向きはライブドアによる買収だが、ホリエモンの買収といった方が通りがいい。今回の選挙では組織票を(ほぼ)無視した小泉陣営が圧勝した。

法人に属していれば安心だという時代はじきに終わるのだろう。いつまでも会社だの学校だのの「組織」にしがみついていると痛い目にあうよ。
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「やたがらすナビ」の行事情報を書いていて思い出した。
もうずいぶん前の話、たしか説話文学会の例会だったと思う。それはまさに「記録より記憶に残る学会発表」だった。

発表の内容は、『宇治拾遺物語』第74話にでてくる「ふりちうふぐりをちりちうあぶらん」という言葉の解釈をめぐるものだった。発表者はかなり有名な研究者で、質問者もこれまた有名な研究者である。

発表者「・・・というわけで、『ふりちう』というのは『チンボを振る』という意味の『ふりちん』と解釈できるわけです」

<実際にはこの後も発表は続いた>

質問者「『チンボ』というのはそもそも『中棒(ちゅうぼう)』の撥音便ですから、『ふりちう』を『ふりちん』と読む必要はないと思います」

発表者「なるほど、それでは意味としては『フルチン』でいいわけですね」

質問者「いや、私は先生の『ふりちう』の『ちう』を『チンボ』と解釈する説には反対です。『チンボ』の用例を出してください。」

発表者「ここで用例を出せといわれましても・・・女性も大勢いらっしゃることですし・・・」

十年ぐらい前なんで、詳細は忘れてしまったが(もしかしたら僕の創作が入っているかもしれない)こんな感じだった。

それにしても、僕は後にも先にもこれほど「チンボ」という言葉が出てきた学会は知らない。
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ちょっと古いかもしれないが、「30代以上・未婚・子ナシ」を「負け犬」というらしい。もとは酒井順子氏の『負け犬の遠吠え』(講談社)が出典だそうだ。僕はこの本を読んでいないし、あんまり興味ないがテレビなんかでもこのキーワードはさかんに出てくるからいやでも耳に入ってくる。

僕はつねづねこの「負け犬キャラ」ってどこかで聞いたことあるなとおもっていた。
そして今日、『更級日記』を読んでいて思い出した。

「コイツだ!」

『更級日記』の作者菅原孝標女は結婚している。しかし、それは32歳ごろで、平安時代としては十分晩婚だ。
『源氏物語』の世界にはまっていたり、現実とのギャップに悩んだり、夫との結婚生活はたいして書いていないのに、男前(なのか?)の源資通との交流(といってもたいした関係ではない)を長々書いていたりと、「これはウワサの・・・」と思ってしまうのである。

まあ、どうでもいいことなんだけどね。続きを読む
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僕みたいに自転車で旅をする人のことのことをチャリダー(本当はサイクリスト)という。
旅しているうちに、チャリダーにも種類があって、ひたすら距離を走る奴だとか、山に登りたがる奴だとか、海外しか走らない奴とかいろいろいるのがわかった。

自転車に大荷物を積んで旅行するだけでも、十分「酔狂なやつ」と思われるが、僕なんかぜんぜんたいしたことはなくって、この世界には本当にスゴイ人がいくらでもいる。面白いのは同じチャリダー同士で「こいつはスゴイ」とは思いつつも、どこか「酔狂だなぁ」と思っていることである。

例えば、この世界で有名な人に安東浩正さんというスゴイ人がいる。先日ラジオの番組で「夏は行かないんですか」と聞かれて、こともなげに「いや、暑いのは嫌いなんですよ」と答えていたのには笑った。
冬のシベリアを横断しちゃうなんて、もう尊敬するしかないが、やっぱり雪の中走るなんて「酔狂な」なのである。

僕の場合はやっぱり文学で、それに関連したところを走りたいというのがある。走る前と後では文学作品から受ける印象がまったく違うのである。
もちろん、そこにある風景は平安時代や鎌倉時代とは違う。道もちがっているかもしれない。そこで大事なのが地形と気候なのである。

山が削られたり、土地が隆起したりすることもないことはないだろうけど、1000年程度で山が谷になっちゃうなんてことはまずない。自動車道はなかったろうが高野山の標高は平安時代から800メートルぐらいである。気候も温暖化で少しは変わっているだろうが、夏なら盆地は暑いし、山の上は涼しいのは同じである。

これを感じるには本当は徒歩が一番いい。実際熊野古道は徒歩だった。でも、それじゃ時間がかかりすぎる。だから自転車なのである。

古典に出てくる場所―たとえそこに何もなくても地名だけでもいい―へ自転車で行くこと、これが僕の目的なのだが、ほかのチャリダーからしたらやっぱり「酔狂な奴」なんだろうなぁ。
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旅程

2005年08月26日
和歌山のビジネスホテル
夕方和歌山着。ちょっと変わっていたけどなかなかいいホテルでした。

2005年08月27日
ホテル>紀三井寺>和歌の浦>紀ノ川>根来寺>粉河寺>道の駅紀ノ川万葉の里(幕営)
本当は和歌の浦には行くつもりなかったんだけど「やっぱ夏は海でしょ」ってな感じで走った。行ってよかった。道の駅で自転車乗りに出会って、情報収集。ビールと炉辺焼きをおごってもらった。ご馳走様でした。

2005年08月28日
道の駅紀ノ川万葉の里>高野山(金剛峰寺・奥の院など)>天軸山森林公園(幕営)
やっとの思いで高野山に着いたときはうれしかった。自動車が僕をじゃまそうによけていくが、おまえの方がじゃまだ。ひそかに幕営しようと思っていたのに、地元の人たちがバーベキューしていたのでばれてしまった。

2005年08月29日
天軸山森林公園(幕営)>高野山(霊宝館)>吉野川>大淀町の河原(幕営)
前日の高野山が昼過ぎだったので再び。霊宝館はよかった。高野山からは、渓流にそってほとんど下り。道は狭かったけどいい感じでした。しかし、幕営した吉野川ってもっときれいな川だと思ってました。

2005年08月30日
大淀町の河原>脳天大神>吉野神宮>金剛峰寺蔵王堂>津風呂湖温泉>道の駅宇陀路大宇陀(待合室)
蔵王堂と間違えてちょっとアヤシイ脳天大神へ(アヤシイのは名前だけじゃないよ)。蔵王堂で大雨。アヤシイと言った罰が当たったか。話し好きのおばあちゃんから、待合室が24時間開いていると聞き、テント・シュラフなどを家へ送り返す。

2005年08月30日
道の駅宇陀路大宇陀>大神神社>天理>帰宅
この日は一日中ふったりやんだりで、大雨の中道の駅から走った。大神神社で晴れたけど、またすぐに降り出し、天理の駅前で自転車を分解し帰宅。
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泊まったところ
  • 道の駅紀ノ川万葉の里
    • 近くにコンビニ、ファミレスあり。最高。
  • 天軸山森林公園
    • キャンプ設備はいいが、本来許可がいる。町から遠い。
  • 大淀町吉野川の河原
    • 水場なくやや汚い。キャンプには不向き。
  • 道の駅宇陀路大宇陀
    • 24時間あいている待合室。雨の日も安心だが、夜中に人が来るのと、明かりがつきっぱなしが難点。
    • 近くの温泉は8時に閉まる
行った主な寺社(リンクはオフィシャルとはかぎりません)
旨かったもの
  • 和歌山市紀ノ川大橋のたもとの喫茶店の限定ランチ
  • 道の駅紀ノ川万葉の里の近くの炉辺焼き
  • 高野山大門前の釜飯
  • 吉野蔵王堂近くの吉野葛うどん
  • 激坂を上り終えた後のコーラ
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