2005年10月

 自転車で旅行していると、ホームレスのおじさんとお友達になったりする。ホームレスのおじさんは地元の人間だから貴重な情報源だ。
 仲間と間違われたりしたときは、ちょっと複雑な心境である。なにしろ、相手はアウトドアライフのプロだ。プロからプロに間違われたということは光栄だが、でも、ホームレスに見えちゃうかなーとちょっと悲しくもある。
 まあ、そんなことはどうでもいいのだが、今回紹介したいのは吾妻ひでお『失踪日記』(イースト・プレス)である。
 吾妻ひでおは「ちょっとアレ(今でいうところの萌え系、そのころそんな言葉はなかったけど)」な不条理ギャグ漫画で七〇年代から八〇年代にかけて活躍した漫画家である。だから、この『失踪日記』も漫画。「漫画じゃないか」と言うなかれ。漫画でもいいものいいのだ。
 漫画家吾妻ひでおは突然漫画が描けなくなって失踪、自殺しようとして死にきれずホームレスになる。食べ物をあさっている最中に警察に保護され、家につれもどされる。再び漫画が描けなくなり失踪、ホームレスに。その後友人の紹介でガスの配管工になる。そしていつのまにか連れもどされ、本来の仕事に復帰(漫画家)するも今度アル中(アルコール中毒)になり、薬物中毒者の病院に入院させられる。
 なんだか無茶苦茶だが、全てノンフィクションである。ホームレス生活で食べ物の入手のしかたなんかがこと細かに描かれているが、僕がプロから聞いた話(プロは初心者の僕に教えているつもりらしい。おおきなお世話である)とまったく同じである。
 こうやってストーリーを書くと、なんだか救いようのない悲惨な漫画だと思われるかもしれないが、なにしろ「ちょっとアレ」なギャグ漫画を描かせたら日本一の吾妻ひでおだ、悲惨な感じはまったくなく、お笑いとして楽める。作者もそのつもりで描いたと付録のインタビュー記事にある。
 だが、笑えるからといって、作者がホームレス生活やアル中生活を楽しんでいると思ってはいけない。これは作者のサービス精神の現れにすぎないのだ。そこには僕たちには想像もつかない戦いがあるのだと思う。よく読んでみるとそれが分かるだろう。作者はそういう読まれ方を期待していないのかもしれないけど。
 僕は悲惨なものを悲惨に描く作品は嫌いだ。なんか「お涙ちょうだい」「ありがとう」みたいじゃないか。創作ならまだ許せるが、それがノンフィクションだとなおさらで、そんなのを読んで「気の毒だなぁ」なんてちょっと上に立ったつもりでいる自分が嫌になってくるのである。
 この漫画は作者の精一杯のサービス精神に笑って、あとからひりひりと痛みを感じるようなそんな作品なのである。
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3分でお目当ての本運搬 奈良、100万冊の自動書庫

そろそろ卒論の追い込みシーズンで、大学図書館に入り浸りという人もいることだろう。

僕の出身大学の図書館は開架式だった。開架式とは書庫に自由に入れる方式で、それに対し司書に読みたい本を注文して書庫から出してもらう方式を閉架式という。

僕の出身大学が開架式なのは、当時の教授たちが大学図書館の書庫は開架式であるべきだと主張したことによるものだと聞いたことがある。これは見識である。この伝統は図書館が建て替わった現在でも残っている。僕は閉架式の大学図書館は学生に勉強するなといっているのと同じじゃないかと思う。

閉架式の利点は本の管理が容易で、紛失、破損が少ないことだ。このため国会図書館のような「所蔵することに意義がある」図書館に向いている。つまり、図書館側にだけ利点はがある方法なのである。もし、閉架式の本屋なんてあったら、そこで本を買う人なんか一人もいなくなるだろう。

それに対して開架式は自由に書庫の中に入れるから、紛失、破損の危険性は増すものの、直接読んでから選ぶことができるので、お目当ての本が思っていた内容と違っていたときの対応がすばやくできる。また、探していた本の隣に実はもっと重要な本が隣にあったということもしばしばある。

どんな悪意ある人が使うか分からない公共図書館では仕方ないのかもしれないが、「3分でお目当ての本運搬」とか言われてもなぁと思ってしまうのである。
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[マブチ事件]2容疑者、服役中に出会い 出所2カ月で事件

その時、僕はTさんと中国を自転車で旅していた。だから、この事件を知ったのは、ひと月ほど経って、新聞の犯人がまだ捕まらないという報道を見てからである。

殺された由香さんと、僕と一緒に中国を旅行していたTさんとは同じ書道の愛好会で活動しており、そんな関係で僕も何度か会ったことがある。また、同じ同好会に属する別の友人は警察の取り調べでほとんど犯人同然の扱いを受けたという。僕は少なからず会ったことのある人が理不尽に殺されたことに深い憤りを感じた。

僕はこの事件はいろいろな問題をはらんでいると思う。

まず、なぜ馬渕さんの家が狙われたか。僕の記憶が正しければ、当時馬渕さんは長者番付の一位だったと思う。それが犯人の頭にあったのであれば、長者番付は犯罪を助長したことにならないか。

犯人の二人は刑務所で知り合い出所後に連絡を取ったというが、そんなことがあっていいのか。刑務官も24時間受刑者に張り付いているわけにはいかないから、なかなか難しいことだと思うが、相手は常習犯である。何か方法はないのか。

また、12年の刑を終えたあとのフォローはどうなのか。これだけの悪質な犯罪者の懲役が12年でいいとは全く思わないが、出すなら出すで「はい、刑期が終わりましたよ。出て行ってください」で、12年もの懲役をくらった犯罪者が簡単に社会復帰できるはずがない。たとえ本人が更生しても、社会は受け入れないだろう。
かくして、彼らは出所後わずか二ヶ月で馬淵家を襲い、その後二年半に渡って同じような犯罪を繰り返してきたのである。僕たちのすぐ近くにもそんな犯罪者がいるかもしれないのだ。

ともかく、今はただあらためて亡くなった二人のご冥福をお祈りするばかりである。
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いろいろ話題になっているTBSだが、水曜日18:55から『まんが日本昔ばなし』を再放送しているらしい。ぜんぜん知らなかったぞ。

『まんが日本昔ばなし』はある一定の年齢以上の方なら知らない人はまずいないであろう、アニメの傑作中の傑作(最高視聴率33.6パーセント!)である。
市原悦子といえば、いまやすっかり『家政婦は見た』シリーズだが、僕にとっては常田富士男とともにやっぱり『まんが日本昔ばなし』の語りのイメージである(というか家政婦シリーズを見たことがない)。

僕が説話に興味をもったのも、(多分)このアニメがあったからだと思うし、たとえそうでなくても、説話集なんか読んでいて「あれ、これどっかで読んだぞ」と思ったら実は『まんが日本昔ばなし』だったなんてマヌケなことはよくあることだ。

ちょっと残念なのは、新しく作られたのではなくて、再放送というところだ。いや、あまりに傑作アニメだからこれはこれで十分価値があるのだが、古典を愛好する者としては是非新しいのも作って欲しい。

そこで、提案。
今やアニメといえば深夜である。だから、深夜という枠でしかできない、分かりやすく言えばちょっとアダルトな『新まんが日本昔ばなし』を作ってくれないか。続きを読む
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「太宰治物語」(TBS)が、世帯視聴率7.9%で主演の豊川悦司がガッカリだそうで。
そもそもそんなドラマがあったこと自体知らないが、ブログなんかを検索してみたら、それほど評判は悪くないようだ。

ところで気になるのが上の記事の
このドラマは女と酒にだらしない破滅型作家の太宰治を、実はサービス精神が旺盛で人がよく、明るい人物だったという新解釈で描いた意欲作。
ってところだ。これ、新解釈なのだろうか?中期の作品なんか読めば、新解釈というより常識だと思うのだが。

僕は太宰治をお笑いの天才だと思っている。例えば、富嶽百景にこんなシーンがある。
とかくして頂上についたのであるが、急に濃い霧が吹き流れて来て、頂上のパノラマ台といふ、断崖の縁に立つてみても、いつかうに眺望がきかない。何も見えない。井伏氏は、濃い霧の底、岩に腰をおろし、ゆつくり煙草を吸ひながら、放屁なされた。いかにも、つまらなさうであつた。
この井伏氏とは『山椒魚』なんかで有名な井伏鱒二のことで、太宰の師匠である。

さっと読んじゃうと、「ああ、井伏鱒二がつまらなそうに屁をこいたんだな」と屁を「景色のつまらなさを表現するもの」だと思ってしまうが、よく考えてみると「屁」である。つまらないからといって出るものではない。「屁」で笑えるのは、出したくないのに勝手に出てしまうからだ。実際、井伏はオレはあの時屁はこいていないぞと怒ったとかいう話を聞いたことがある。
しかも「放屁なされた」。尊敬語だ。師匠だから尊敬語は当たり前だが、なかなか屁で尊敬語は使えない。

屁のすごいところは、どんなシリアスな場面でも、屁一発ですべて帳消しにして笑いに変えてしまうところだ。それは突発的な笑いで、たとえ屁で笑いをとったとしてもそれは屁をこいた人が笑いをとったのではなく、屁そのものが笑いを取ったといえよう。つまり、屁は笑いの禁じ手、最終兵器といえる。

しかし、『富岳百景』のこの場面では、この危険なアイテムがごく自然に使われている。これほどにみごとに屁が使われている文学が他にあるだろうか。
この危険なアイテム「屁」を自然に使いこなせるのは、太宰が笑いの本質を知っていたからなのである。
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007シリーズでおなじみ英国のMI6がスパイの公募をしたら、アクセスが殺到したそうだ。

諜報機関といえども時代の流れには勝てない。今やどの諜報機関でもホームページを持っている。有名どころを上げてみる。

まずはCIA。シンプルでカッコよろしいな。
ついでに諜報機関ではないけどFBIも。いかにもアメリカっぽくてステキだ。ビン・ラディンの顔写真もある。

今回スパイの公募をしたMI6。おしゃれだ。MI6とSISの呼称の違いも書かれている。
MI6といえばMI5。MI6が国外が管轄なのに対し、こっちは国内。

もちろん、イスラエルのモサドもはずせない。さっぱり読めないヘブライ語と相まって、怪しい雰囲気満点だ。

もちろん、諜報機関はわが国日本にもある。オウム事件で有名になった公安調査庁だ。

そしてこれが公安調査庁のホームページだ!

あれ?
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先日、「舎人」という地名(東京都足立区)の読みを聞かれた。
一瞬、なんだそんなのも知らないのかと思ったが、古典読んでなかったら知らないだろうなぁ。
#「舎人」は「とねり」と読む。天皇や貴族の警護などをする人のこと。
東京都足立区舎人1

京浜急行には「雑色」(東京都大田区)という駅がある。これも古典を読んでいたらあたりまえだけど、案外読めないかもしれない。
#「雑色」は「ぞうしき」と読む。公家・武家の家の従者のこと。
雑色駅(京急本線)

もっとも何でそんな地名なのかは分からないけど。
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SKK-IME国文>オンラインソフト
に入れた。
なお、インストールと設定の方法はこちらを参照のこと

MS-IMEやATOKと同じ日本語入力システムだが、漢字変換の思想が全く異なっており、古文の入力に最適である。

SKKは"Simple Kana to Kanji conversion program"の略で、もともとUNIXでは有名なエディタEmacs(Mule)上だけで使用できる日本語入力システムだった。これをWindowsのアプリケーションで使えるようにしたのが、SKK-IMEである。

これの特徴は連文節変換を全くしないことである。とはいえ、初期の日本語入力システムのような文節変換でも単漢字変換でもない。ローマ字入力の際、漢字に変換したい部分をあらかじめ指定するのである。

例えば、次の文を入力するとしよう。

今日は運動会の日です。

Kyou haUndoukai noHi desu.

つまり、漢字にしたい部分の最初の一字を大文字(shiftを押す)にして、最後にスペースを押せばいいのである。それ以外の平仮名はそのままどんどん確定されてしまう。慣れるまでちょっと面倒くさいが、慣れてしまえばかなり便利な日本語入力システムである。
これなら、文語文を入力するたびに日本語入力システムがバカになっていくということもないし、平仮名はどんどん確定されるので翻刻などにはこれ以上の環境はないと思う。

ちなみに、送り仮名は、

学校へ行く

Gakkou heIKu

のように、送り仮名の最初も大文字にすればよい。

他にも使い勝手のいい所はたくさんあるので、気になったら是非SKKマニュアルを読んでほしい。
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いつも思うのだけれど、最初にホヤとかナマコとか食べたのはどんなやつなんだろう。いや、僕も好きなんだけどね。
見た目、あんな得体の知れないものを食べちゃうなんてよほど腹が減っていたんだろう。

漢方薬なんか最たるもので、一歩間違えたら死んじゃうのだが、それをかじりまくって薬と毒を見分けたナイスガイが神農(炎帝)である。

この神農、最初はすごいマッチョで男前だったのだが・・・

使用前

「百草の滋味を嘗め、一日にして七十毒に遇」(『淮南子』脩務訓)っているうちに・・・

使用後

こんな姿になってしまった。

ああ、くだらねぇ。今回は完全にネタでした。絶対にウンチクとして使用しないように。続きを読む
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やたがらすナビには、僕のへんなこだわりがある。

1.すべて無料
サーバーは無料、作っているソフトもすべてフリーウェア、もちろん使用料無料。
有料サーバーや自宅サーバーを使えばもっといろんなこともできるだろうし、独自ドメインも取りたい。でも金がかかるからやらない。
逆にアフェリエイトなどで金を稼ぐことも考えない。

2.画像はなるべくつかわない
だって画像って容量を食うもの。
僕は情報量はむちゃくちゃ多いけど、容量は少ない、それでいて読みやすいというサイトを作ってみたいのだ。
ちなみに、現在このブログ以外(ブログはLivedoorにあるため)で2.77MB(掲示板とWikiのスクリプトを含む)である。フロッピーディスク2枚分に満たない。

3.リンク集はCGIにしない
ポータルサイトはたとえナローバンドでもあたかもローカル(自分のコンピュータ内)にあるようにすばやく表示されるべきだと思う。
CGIだとどうしてもレスポンスが悪くなる。

4.管理人の名前は実名
実名で書かれているサイトをリンクしているのに、僕が匿名では失礼だと思うから。
ちなみに、かつてはどのサイトでも実名が主流だった。

5.「新着サイト」は古いもので1週間前までのこす
最低一週間に一回確認すればいいようにするため。
最近はもっと遅くなっているけど。

6.アクセス解析はしない
してみたい欲求にはかられるのだが、気にするととことん気になりそうなのでやらない。
しかし、今後期間限定でやるかもしれない。

以上のことはあくまで現時点でのこだわりで、今後も永久につづくとは限らない。
また、これらはあくまで「僕のこだわり」である。他人に強要するつもりはまったくないことを付け加えておく。
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