自転車で旅行していると、ホームレスのおじさんとお友達になったりする。ホームレスのおじさんは地元の人間だから貴重な情報源だ。
仲間と間違われたりしたときは、ちょっと複雑な心境である。なにしろ、相手はアウトドアライフのプロだ。プロからプロに間違われたということは光栄だが、でも、ホームレスに見えちゃうかなーとちょっと悲しくもある。
まあ、そんなことはどうでもいいのだが、今回紹介したいのは吾妻ひでお『失踪日記』(イースト・プレス)である。
吾妻ひでおは「ちょっとアレ(今でいうところの萌え系、そのころそんな言葉はなかったけど)」な不条理ギャグ漫画で七〇年代から八〇年代にかけて活躍した漫画家である。だから、この『失踪日記』も漫画。「漫画じゃないか」と言うなかれ。漫画でもいいものいいのだ。
漫画家吾妻ひでおは突然漫画が描けなくなって失踪、自殺しようとして死にきれずホームレスになる。食べ物をあさっている最中に警察に保護され、家につれもどされる。再び漫画が描けなくなり失踪、ホームレスに。その後友人の紹介でガスの配管工になる。そしていつのまにか連れもどされ、本来の仕事に復帰(漫画家)するも今度アル中(アルコール中毒)になり、薬物中毒者の病院に入院させられる。
なんだか無茶苦茶だが、全てノンフィクションである。ホームレス生活で食べ物の入手のしかたなんかがこと細かに描かれているが、僕がプロから聞いた話(プロは初心者の僕に教えているつもりらしい。おおきなお世話である)とまったく同じである。
こうやってストーリーを書くと、なんだか救いようのない悲惨な漫画だと思われるかもしれないが、なにしろ「ちょっとアレ」なギャグ漫画を描かせたら日本一の吾妻ひでおだ、悲惨な感じはまったくなく、お笑いとして楽める。作者もそのつもりで描いたと付録のインタビュー記事にある。
だが、笑えるからといって、作者がホームレス生活やアル中生活を楽しんでいると思ってはいけない。これは作者のサービス精神の現れにすぎないのだ。そこには僕たちには想像もつかない戦いがあるのだと思う。よく読んでみるとそれが分かるだろう。作者はそういう読まれ方を期待していないのかもしれないけど。
僕は悲惨なものを悲惨に描く作品は嫌いだ。なんか「お涙ちょうだい」「ありがとう」みたいじゃないか。創作ならまだ許せるが、それがノンフィクションだとなおさらで、そんなのを読んで「気の毒だなぁ」なんてちょっと上に立ったつもりでいる自分が嫌になってくるのである。
この漫画は作者の精一杯のサービス精神に笑って、あとからひりひりと痛みを感じるようなそんな作品なのである。
仲間と間違われたりしたときは、ちょっと複雑な心境である。なにしろ、相手はアウトドアライフのプロだ。プロからプロに間違われたということは光栄だが、でも、ホームレスに見えちゃうかなーとちょっと悲しくもある。
まあ、そんなことはどうでもいいのだが、今回紹介したいのは吾妻ひでお『失踪日記』(イースト・プレス)である。
吾妻ひでおは「ちょっとアレ(今でいうところの萌え系、そのころそんな言葉はなかったけど)」な不条理ギャグ漫画で七〇年代から八〇年代にかけて活躍した漫画家である。だから、この『失踪日記』も漫画。「漫画じゃないか」と言うなかれ。漫画でもいいものいいのだ。
漫画家吾妻ひでおは突然漫画が描けなくなって失踪、自殺しようとして死にきれずホームレスになる。食べ物をあさっている最中に警察に保護され、家につれもどされる。再び漫画が描けなくなり失踪、ホームレスに。その後友人の紹介でガスの配管工になる。そしていつのまにか連れもどされ、本来の仕事に復帰(漫画家)するも今度アル中(アルコール中毒)になり、薬物中毒者の病院に入院させられる。
なんだか無茶苦茶だが、全てノンフィクションである。ホームレス生活で食べ物の入手のしかたなんかがこと細かに描かれているが、僕がプロから聞いた話(プロは初心者の僕に教えているつもりらしい。おおきなお世話である)とまったく同じである。
こうやってストーリーを書くと、なんだか救いようのない悲惨な漫画だと思われるかもしれないが、なにしろ「ちょっとアレ」なギャグ漫画を描かせたら日本一の吾妻ひでおだ、悲惨な感じはまったくなく、お笑いとして楽める。作者もそのつもりで描いたと付録のインタビュー記事にある。
だが、笑えるからといって、作者がホームレス生活やアル中生活を楽しんでいると思ってはいけない。これは作者のサービス精神の現れにすぎないのだ。そこには僕たちには想像もつかない戦いがあるのだと思う。よく読んでみるとそれが分かるだろう。作者はそういう読まれ方を期待していないのかもしれないけど。
僕は悲惨なものを悲惨に描く作品は嫌いだ。なんか「お涙ちょうだい」「ありがとう」みたいじゃないか。創作ならまだ許せるが、それがノンフィクションだとなおさらで、そんなのを読んで「気の毒だなぁ」なんてちょっと上に立ったつもりでいる自分が嫌になってくるのである。
この漫画は作者の精一杯のサービス精神に笑って、あとからひりひりと痛みを感じるようなそんな作品なのである。