2006年12月

今年はやたらと飲酒運転やら何やらのニュースが続いた。たぶんマスコミのキャンペーンというやつなんだと思うが、自転車乗りの立場としては、キャンペーンだろうが何だろうが、こういう報道で危険を喚起するのは歓迎である。

で、今日テレビを見ていたら、保育園児の列に脇見運転のバンが突っ込んだ事故の被害者の両親が出ていた。

この事故は飲酒運転ではないから、ドライバーは危険運転致死傷罪にならず禁固4年ほどなのだそうだ。この両親は刑が軽すぎるとして、署名運動をしているらしい。

かわいいさかりの娘を亡くしたのだから、親の立場としては、禁固4年どころか、死刑だって納得できないだろう。しかし、刑を重くすればいいのだろうか。

個人的には、もっと重くってもいいと思う。だが、それで事故が減るかというとそうじゃない。こういう人は「自分は事故を起こさない」と思い込んでいるのだ。自分だけは「事故を起こさない」のだから、いくら刑を重くしたところで無駄なのである。

飲酒運転も同じことで、捕まったときの罰を重くするのは効果があるだろうが、事故を起こした後の刑を重くしたところで、事故を起こさないと思い込んでいる人には無駄なのである。

こういう事故に一番効果的なのは、とにかく自動車を走りにくくすることである。たとえば、数百メートルおきに、道のど真ん中に木を植えておくとか、道路に大穴を開けておけば、こんな事故は絶対におきないだろう。何、今の車は安全にできているから、ちょっと木にぶつかったり、穴に落ちたぐらいでドライバーは死なない。最初に標識で注意しておけばいいのだ。それにもかかわらず、ぶつかったり穴におちたりしたら、自業自得である。まして、死ぬようだったらどう考えてもスピード違反である。

信号機も多すぎる。あれは青だと安心して走ってしまうからかえって危険だ。どうしてもなきゃいけないというなら、青→黄→赤と規則正しく変わるのではなく、ルーレットみたいにランダムに変わるようにしたらどうか。時々紫とかへんな色になっちゃうとか。なぜか煙が出てくるとか。

さて、実際に川口市がとった行動は、歩道にグリーンのペンキを塗ることだった。あほか。それじゃますます安心して走るだろ。
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中学校の国語の教科書、三省堂『現代の国語』3にある呉人恵さんの「「ありがとう」と言わない重さ」というエッセイがすごくいい。

このエッセイによると、モンゴル人は日本語の「ありがとう」に当たる言葉(バヤルララー)を言わないのだそうだ。

彼らの価値観の中では、お礼の気持ちを言葉ですますのは安易であり、むしろ失礼となる。人の恩は黙って受け止め、そのことを忘れずに、いずれ恩返しという形で表現しなくてはならない。このような価値観は、助け合わないと生きていけない、モンゴルの厳しい風土に由来しているのだという。

簡単に言っちゃえば、「ありがとう」=「Thank you」=「バヤルララー」と簡単にイコールで結べるものではなく、言葉には文化的な価値観の違いがあるということだ。

こういう価値観の違いってのは、何も言葉の使い方だけじゃないだろう。例えば、欧米人には頭が付いた魚が食べられない人が多い。ほとんどの日本人は気にせず食べられる。しかし、中国でスープ食べると中から鳥の頭が出てきたりするが、日本人にはちょっとムリな人が多いんじゃないだろうか。

魚の頭と鳥の頭にいかほどの違いがあるのだろうと思うが、妹に聞いてみたら「魚は鳴かないだろ」と訳の分からないことを言われた。だが、少なくとも魚の頭と鳥の頭に優劣はない。

ともかく、水に感謝の声をかけると結晶が美しくなるとか言っている人たちや、朝鮮半島の人や中国人が犬を食うのはけしからんとか言っている人たちは、是非読んでほしい。

まあ、そういう人は読んでも分からないかもしれない。それが価値観の違いなのだ。
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妄言砂漠思いて学ばざればで紹介されていた、中央研究院文献処理実験室の篆書フォントを試してみた。

篆書フォント
左のサンプル(クリックすると拡大します)は、一番上から北師大説文篆文(7,475字)・中研院金文(1,533字)・中研院楚系簡帛文字(1,095字)・中研院甲骨文(760字)。空白は文字がないもの。

小篆は説文のものなので、問題ないが、金文・甲骨は時代がごちゃごちゃになっているようなので注意。

例えば、サンプルでいうと、金文の「荒」は、なんだかナサケナク見えるが、中山王器の金文である。ちょっと調べてみたら他に用例がみつからなかったので、適当にやっているのではなく、できるだけ古い用例をフォントにしているのかもしれない。
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ウサギジャンプともかく、むちゃくちゃ忙しいのだが、そんな時にかぎってゲームにはまってしまったりするものだ。
今、はまっているのはWinterBells因幡の白兎よろしく、ウサギくんを操作して、白いベルを足場にジャンプしつつ上を目指すというもの。

マウスを動かすだけの簡単操作で、画面もきれいだし、BGMもいい。ベルに触れないと、あわれウサギ君はまっさかさま、ぐちゃっと血まみれに・・・はならなし、因幡の白兎ではないので、サメに食われてズルムケになっちゃったりもしない。

つい、やりすぎて、スクリーンショットにあるような驚異的な得点をたたき出してしまった。
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上海市の中学・高校アンケート 最も好きな作家は魯迅

ちょっと「本当かよ!」とか思ってしまうが、上海なら魯迅が最後に住んでいたところだし、日本の高校生よりもはるかにエリート意識が高そうだから、こうなってもそんなに不思議じゃないのかもしれない。日本で同じアンケートを採ったら、漱石や鴎外は何位ぐらいになるんだろう。少なくとも1位じゃないことは間違いないと思うけど。

魯迅は日本人にもなじみのある作家である。なによりも特筆すべきは、その教科書に採用される作品数で、中学校では『故郷』が不動の小説教材三大定番の一つ(後の二つはヘッセ『少年の日の思い出(クジャクヤママユ)』と『走れメロス』)だし、高校現代文では『藤野先生』が多くの教科書に採られている。また、中学道徳の教科書にも魯迅の作品があったのを記憶している。

教材としての長さがちょうどいいのと、中高生に理解しやすいのが理由だろう。この二つを満たす短編小説は意外と少ない。しかしそれ以上に、イデオロギーばりばりの読み方ができる一方、日本人好みの情緒的な読みも許される普遍性の高さが教科書に採用される一番の理由ではないだろうか。

僕はどういうわけだか、ある一時期魯迅詣でをしたことがある。上海の魯迅記念館と魯迅故居、紹興の魯迅記念館と魯迅故居、東北大学(日本)を同じ年に回ったのだ。わざとそうしたのではなく、たまたま同じ年に重なったのである。残念ながら北京の魯迅記念館には一度も行っていない。

一番印象に残っているのは、紹興の魯迅故居。ここは『故郷』の舞台になった場所である。

この街は、いかにも江南らしく運河が縦横無尽に通っていて、『故郷』にもでてくる舟が多く行き交う。かなり観光地化されているが、それでも『故郷』の面影をしのぶことができる。

ああ、閏土の心は神秘の宝庫で、わたしの遊び仲間とは大違いだ。こんなことはわたしの友達はなにも知ってはいない。閏土が海辺にいるとき、彼らはわたしと同様、高い塀に囲まれた中庭から四角な空を眺めているだけなのだ

僕はこの一節を思い出して、中庭から空を眺めてみた。なるほど四角い。魯迅故居は奥行きがあるわりには幅が狭く、塀が異常に高いのである。今度行くときには20mmぐらいの超広角レンズを持っていこうと思った。

魯迅少年になったつもりで、感傷に浸っていたら、閉館時間まぎわになってしまった。といっても時間を過ぎたわけじゃない。まだ5分は合ったはずだ。それなのに、門を出ようとしたら、なんと閉まっているじゃないか。

開けろコラー!有〜人〜!(合ってるのか?この中国語)

魯迅故居の台所写真は紹興市、魯迅故居の台所。『故郷』で最初に「わたし」と閏土が出会った場所。
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北京に地下都市があると聞いたのは、僕が高校生のときだった。同級生のN君が東京都のなんちゃらで中国に派遣されたのである。当時、埼玉県民だった僕はとてもうらやましく感じたものだ。

N君の土産話で、N君自身、一番驚いたのが、故宮でも万里の長城でもなく、この地下都市だという。

N君の話によると、北京には地下に地上と全く同じ町があるのだそうだ。商店なんかも、地上と全く同じように看板がついていて、商品が置いてある。違うのは地下だから、真っ暗なことと、誰もいないことなのだとか。心優しい僕たちはN君の壮大なホラ話だと思って、生暖かい笑顔で聞いていた。

もっとも、当時は冷戦時代で、どこから核ミサイルが飛んできても不思議じゃないから、シェルターぐらいあっても全然不思議じゃなかった。それを見学したのを、適当に膨らませているんだろうなと思っていた。

冷戦ついでに言っておくが、あのころは、日本のすぐそばに、中国・ソ連という核保有国があり、どちらも社会主義国なのに仲が悪かった。日本、韓国にはアメリカがついているから、三つ巴でいつ核ミサイルが飛んできてもおかしくない状態だったのだ。だから、日本人でもシェルターを作る金持ちがいたし、1999年に世界が滅亡するなんていう『ノストラダムスの大予言』なんてしょうもない本が流行ったりした。

でも、核ミサイルは飛んでこなかった。最近になって、北朝鮮から飛んでくるんじゃないかとか、中国が脅威だとか言っている方々がいるが、僕はまず杞憂だろうと思う。なにしろ、あの状況でも飛んでこなかったのだから。

話を元にもどすと、最近、司馬遼太郎の『長安から北京へ』という本を読んだら、この北京の地下都市のことが書いてあってびっくりした。
かれ(注:洋服屋のオヤジ)がどこかのボタンを押すと、その床が床ごと動いて、下に階段があらわれた。(中略)階段を降りていくと、立派な坑道が四通八達していて、途中、通行者を淋しがらせないために音楽も鳴っており、ところどころに大きな集会場所もある。無人の商店も多数あった。地上の商店街がそのまま地下にもぐってしまうわけで、われわれが見たのはこの一角の商店街だけが使用する地下であったが、北京のすべてがこうなっていて、ほとんど瞬時に北京のすべての市民が地下に入りうるという。

N君、ごめん。今だからいうけど、君の話、全然信じてなかったよ。本当だったんだね。

それにしても、今はどうなっているんだろう。見学したいけど、その辺の商店のオッサンに言えば見せてくれるんだろうか。
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例によってぎりぎり国立東京博物館の仏像展を見てきた。時間もぎりぎりだったせいか(今日は6時までだった)、思ったよりも空いていた。

逸品ばっかりなんで、仏像についてはいうことなし。もちろん、みうらじゅんが愛した向源寺の国宝十一面観音も見てきた。やっぱりすばらしい。腰のくねり方がセクシーだ。360度、どの方向からも見られるようになっていて、ウワサの(僕がうわさしただけか)暴悪大笑面もじっくり見られた。

円空、木喰をまとめてみたのは、初めてである。円空は現代美術だと思った。こういう人は、たぶん、木材を見ていると、仏様に見えちゃうんだろう。本来怖い顔をしいていなきゃいけない、十二神将だの不動明王だの、全部笑っている。が、そこがまた良かったりする。

同じ全部笑っているのでも、木喰はなんかイヤだな。観光地の土産物(というか、みうらじゅん氏のいう「いやげ物」に近い)みたいに俗っぽい。いや、土産物がマネしたのか。光背がシャンプーハットみたいでちょっと笑える。円空と違って、どこか狙った感があるのがいただけないが、これは寺で見るとまた違うのかもしれない。

それにしても、最近の東博は見せ方がうまい。仏像の展覧会って、どうしても寺にあるのとちがって、ありがたみがうせてしまい、単なる「モノ」に見えてしまうものだが、ライティングもうまいし、バックにわざわざベージュの薄い布をたらしてあって、仏像の魅力を引き出すのに成功していると思う。

図録のできも良かったので、買ってきた。あまり書かれない、材質などについても分かりやすく説明されている。装丁はなぜかハードカバーなので、本棚にしまいやすくっていい(けど、見づらいかも)。

と、さんざん褒めたけど、今日で終わっちゃったよ〜ん
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田中貴子先生と小谷野敦先生がなにやらやりあっております。
ちょっと面白いです。

まずは、田中先生から、カスタマーレビューをどうぞ。
新編 軟弱者の言い分 (文庫) :amazon.com

続いて小谷野先生、ご自身のブログで
2006-11-27 田中貴子登場:猫を償うに猫をもってせよ

さらに、田中先生もブログで久しぶりの更新。
小谷野敦さんのブログで・・・:夏への扉

動きがあったら、さらに更新します。

さっそく来ました。
2006-12-02 田中貴子さんへ:猫を償うに猫をもってせよ
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Firefoxの拡張、Internoteを試してみた。

これは、ブラウザで見ているページに付箋を貼れる拡張である。Firefoxの拡張なので、ブラウザがFirefoxでないと動かないので注意。

用途はまったく普通の付箋と同じ。好きなところに貼れるし、貼ったページを閉じても、ちゃんと保存されていて、後でそこにジャンプすることもできる。

もちろん、付箋の色、大きさは自由に変えられる。また、スケスケにして下の文字が見られるようにもできるというなかなか気の利いた機能もある(デフォルト)。

Webページを見ていて「ここにコメントを入れたい」とか「また見たいけど、ブックマークするほどのものじゃない」とか「文章が長すぎて、どこが重要だかわかんねぇよ!」ってときに大変便利。

より詳しくは、Webページごとに付箋紙を貼り付けられるFirefox拡張機能「Internote」:窓の杜を参照のこと。

【追記】
「http://hogehoge.com/」と「http://hogehoge.com/index.html」は同じページだとみなされるけど、アンカー付きの「http://hogehoge.com/index.html#foo」は別のページをみなされるらしく、付箋が消えてしまうようなので注意。バグだと思うので、そのうち対処してくれるでしょう。
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