怪しいサイトの作り方のエントリの冒頭に書いた、「怪しい本」とは、『Power for living(パワー・フォーリビング)』である。
『Power for living』でピンとこない人には、TVCMで久保田早紀だのジャネット・リンだのヒルマン監督だのがでて、「人生が変わった」とかいっているアレといえば分かるだろう。
なにしろ怪しいCMで、申し込むと無料で冊子を送ってくれるという以外なんだかよくわからない。「知りたい」という知的欲求を狙っているのかもしれないが、「知りたい」以前に、そんなわけの分からないところに「住所など教えられるか」というのがあのCMを見た人の感想だろう。
さて、「この本を読んで人生が変わった」という「この本」とはどんな本か?
一言で言うなら、「聖書を読んでクリスチャンになろう」という本である。いろいろなブログで詮索されているような、新興宗教がらみのものではない。表紙に十字架の一つでもあれば一目瞭然なんだが、写真にもあるように紺の表紙に「Power for living パワー・フォー・リビング」と書いてあるだけ。扉には聖書の引用があるから、別に隠そうとしているわけじゃないと思うが、かえって怪しさ満点である。
第1章に例のコマーシャルに出ている人たちの短文もある。しかし、なぜか「この本を読んで・・・」というくだりが書いていない。クリスチャンになった理由は友人に誘われて教会にいったとか、どう考えてもPower for livingを読んでクリスチャンになった感じではない。どうもコマーシャルでいっている『この本』というのは『聖書』そのものを指すらしい。それならそうといえばいいのに、言わないからますます怪しい。
例のCMに莫大なお金をつぎ込んでいるのはアーサー.S.デモス財団という団体である(これまた表紙には書いていない)。奥付には所在が書いていない。この本の巻末はに、アーサー.S.デモス財団への手紙が付いているのだが、あて先は「赤羽郵便局私書箱○号」となっている。「住所は教えねえぞ」ってことらしい。裏面にはこっちの氏名・住所・電話番号を書く欄があるから、怪しい以前にいくらなんでもこれはちょっと失礼だ。
第1章には、そのアーサー.S.デモス氏(故人)の文章も載っている。それによると、彼は10代後半に馬券売り場を経営して大もうけ、後にNY証券取引所上場企業のCEOとなった大金持ちだったそうだ。そのお金で、この本を世界に広めているらしい。なんだか邱永漢先生の「お金儲けは難しいが、使うのはもっと難しい」という言葉を思い出した。
第2章以降が本題となるのだが・・・ごめん、コメント不能。何言ってんのか全然分からない。これ、本当に非クリスチャン向きに書かれているのだろうか。読み進めるのに脳ミソがイヤイヤをするのだ。
ただ、ざっと読んだところ、特定の宗派に勧誘するものではないようだ。だから、中身は表紙ほど怪しくない。原理主義的なものを感じるが、過激な文言があるわけではない。
たぶん、怪しくないようにしているつもりが、ますます怪しくなっちゃっているんだろう。キリスト教徒の多い国ならこれでもいいのかもしれないが(よくないと思うが・・・)、自称無宗教の人の多い日本ではかえって反感をもたれるだろう。
とにかく、熱意が空回りした大金持ちってすごいなーと思った。