授業で『枕草子』の「村上の先帝の御時に」を読んでいる。
この話、後半がよく分からない。どういう話かってえと、村上天皇が炭櫃に煙が立っているのを見て、「兵衛の蔵人」なる女房に「あれは何の煙か見てまいれ」ってなことを言うのだが、実は蛙が炭櫃に飛びこんで、焦げたものだったというのである。
こんな話の何が面白いかってえと、とっさに藤原輔相の「わたつ海のおきにこがるる物見ればあまの釣してかへるなりけり」という和歌で返事をした兵衛の蔵人の機転が見事だというのである。
蛙というのは湿っているもんだから、仮に炭櫃に飛び込んだとしてもすぐに火がつくわけはなく、煙が出るほど燃えるまで逃げないわけがない。そもそも、水ならともかく、火の中に飛び込むなんてことがあるだろうか。さらに、炭櫃なんて暖房器具だから、蛙の季節にあるわけもない。
なんてことを考えていたら、偶然笠間書院から、『稲賀敬二コレクション』のパンフレットが届いた。このパンフレットに『清少納言の社交術』(初出は広島女学院大学「国語国文学誌」第11号)という稲賀敬二氏の講演録が全文載っていて、自殺蛙のことも書いてあった。
かいつまんでいうと、この蛙は、兵衛の蔵人への課題として、あらかじめ村上天皇が仕込んでいたもので、モズのはやにえなどによる蛙のミイラだったのではないかというのである。なるほど、それならつじつまがあう。目から鱗が落ちた。
前半では妙なものを持ってきて、兵衛の蔵人に歌を詠めと命じているのだから、村上天皇の仕込みと考えてもさしつかえない。それにしても、兵衛の蔵人の反応が見たいなら、餅でも焼いておけば済む話である。本当にミイラかどうかはともかく、蛙を燃やすなんざ、村上天皇、かなり悪趣味だ。
実は村上天皇、「きゃー!変なものがあるぅぅぅぅぅ。ありえなーい!」なんていう反応を期待していたんじゃないだろうか。そういえば、前半部には「歌などよむは世の常なり。折に合ひたることなむ、言ひがたき」という天皇の評価があるが、後半部にはない。冷静に反応されちゃったんで、がっかりしたんだな、きっと。
この話、後半がよく分からない。どういう話かってえと、村上天皇が炭櫃に煙が立っているのを見て、「兵衛の蔵人」なる女房に「あれは何の煙か見てまいれ」ってなことを言うのだが、実は蛙が炭櫃に飛びこんで、焦げたものだったというのである。
こんな話の何が面白いかってえと、とっさに藤原輔相の「わたつ海のおきにこがるる物見ればあまの釣してかへるなりけり」という和歌で返事をした兵衛の蔵人の機転が見事だというのである。
蛙というのは湿っているもんだから、仮に炭櫃に飛び込んだとしてもすぐに火がつくわけはなく、煙が出るほど燃えるまで逃げないわけがない。そもそも、水ならともかく、火の中に飛び込むなんてことがあるだろうか。さらに、炭櫃なんて暖房器具だから、蛙の季節にあるわけもない。
なんてことを考えていたら、偶然笠間書院から、『稲賀敬二コレクション』のパンフレットが届いた。このパンフレットに『清少納言の社交術』(初出は広島女学院大学「国語国文学誌」第11号)という稲賀敬二氏の講演録が全文載っていて、自殺蛙のことも書いてあった。
かいつまんでいうと、この蛙は、兵衛の蔵人への課題として、あらかじめ村上天皇が仕込んでいたもので、モズのはやにえなどによる蛙のミイラだったのではないかというのである。なるほど、それならつじつまがあう。目から鱗が落ちた。
前半では妙なものを持ってきて、兵衛の蔵人に歌を詠めと命じているのだから、村上天皇の仕込みと考えてもさしつかえない。それにしても、兵衛の蔵人の反応が見たいなら、餅でも焼いておけば済む話である。本当にミイラかどうかはともかく、蛙を燃やすなんざ、村上天皇、かなり悪趣味だ。
実は村上天皇、「きゃー!変なものがあるぅぅぅぅぅ。ありえなーい!」なんていう反応を期待していたんじゃないだろうか。そういえば、前半部には「歌などよむは世の常なり。折に合ひたることなむ、言ひがたき」という天皇の評価があるが、後半部にはない。冷静に反応されちゃったんで、がっかりしたんだな、きっと。
歌などよむは世の常なり。折に合ひたる「ありえなーい」なむ、言ひがたき。