2007年11月

エスカレータ歩行注意

むじんさんとこの「思いて学ばざれば」日本人は機械に従うのエントリを読んで思い出した。

この写真は、都営地下鉄三田駅の三田線と浅草線の乗り換え通路にあるエスカレータの乗り口についている注意書きである。

「エスカレータ内の歩行は思わぬ事故のもとになりますので」ときたら、当然「ご遠慮ください」と続くと思いきや、注意を促している。どことなく、尻切れトンボというか、竜頭蛇尾というか、ヘンな文である。

さすが三田駅の駅員さんたちは、長い歴史を持つだけあって横浜地下鉄の駅員さんたちとは一味ちがう。ここは、ラッシュ時には恐ろしく混む場所なので、禁止しても誰も守らないと思ったのだろう。短い文の中に駅員さんたちの逡巡する様子が見えるようだ。

もっとも、ラッシュ時にこの注意書きに気づく人がどのぐらいいるか、もしいたとしても、注意書きに気づくぐらいの人なら、普段から注意しているだろうなあ。
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僕はいちおう教師だから、よく生徒から「なぜこんな役に立たない勉強をしなければならないのか」と聞かれることがある。

はっきりいうと、中学校以上の勉強は実生活にはほとんど必要ない。よく英語は役に立つとかいう人がいるが、あんなもの役に立つもんか。少なくとも僕は実生活の役には立っていない。

では、もっと役に立つことを教えるべきではないかという人もいる。そういう人は何を教えろというのだろう。

役に立つことというのは「今、役に立つこと」である。逆にいえば、「将来は役に立たなくなるかもしれないこと」なのである。

例えば、僕が大学生ぐらいの時に、「これからはパソコンだ!」ってなもんで、パソコンの授業が取り入れられたが、そのころはMS-DOSで一太郎の使い方程度しか教えなかった。今、タイピング以外は何の役にも立っていない。

で、僕はこう答えることにしている。

貧乏にならないためだ。

勉強したからといって、金持ちになれるわけではない。だが、貧乏にはならないですむんじゃないだろうか。もちろん、好き好んで貧乏な人もいるが。

実際問題として、教育の行き届いている国に貧しい国はないし、基本的に(あくまで基本的に)学歴が低いほど低収入なのは間違いない。

だが、いまいちしっくりこない。大卒が高卒と偽って就職したとか、ネットカフェ難民なんて話を聞くと、本当にそうなのかという気もしてくる。

ところが、みうらじゅん先生が的確な答えを出してくれた。あまりに的確だから、妙に納得してしまった。

●●●●(自粛):みうらじゅんの頭のなか

教育というものは、男にとって●●●●(自粛)以外のことを考える修業である。気を散らすために大して役にも立たないことを覚えさせられるのである。それさえ授業を始める前に説明してもらえれば“何のために?”とか、若い頃、悩まずに済んだはずだ。

じゃあ女の場合はってことになるが、たぶん僕たち男には分からない●●●●(自粛)に該当するものがあるのだろう。

ちなみに、お寺の山門に打ってあるあれは、乳金具(ちかなぐ)という。
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平家物語:成立年代の謎、火山研究で迫り成果…鹿大准教授:毎日.jp

平家物語にある霧島山(鹿児島、宮崎県境)噴火の記述を、鹿児島大理学部の井村隆介・准教授が地質調査結果などと照合したところ「平家物語の成立は1235年より前」との結論に達した。平家物語は成立年代が不明で、研究者は「非常に貴重な意見」と評価。火山の科学的研究が古典文学のなぞに迫るユニークな成果となった。19日から長崎県島原市で始まる第5回火山都市国際会議で発表される。
 平家物語の原本から派生した長門本平家物語には、原本にはない「霧島山が子の刻(午前0〜2時ごろ)、鳴動して岩が崩れ、火はもうもうと燃えた」など噴火の様子が記されている。年月は書かれていない。
<中略>
 一方、長門本には、口語訳すると「噴煙が渦巻いた後、幅3〜6メートル、長さ30〜40メートルほどの大蛇が現れた」など詳細な描写がある。井村准教授は「『大蛇』はおそらく溶岩流のことで、実際に目撃したか、それに近い人物でないとここまで記述できない。霧島山の溶岩流出噴火から時間を置かずに長門本が成立したのではないか」と推定した。

 地質調査から霧島山の溶岩流出は788年、1235年、1768年とされている。788年と1768年は源平の時代ではないことから、1235年が長門本に書かれた噴火の時代であるとみて、「長門本成立を1235〜45年ごろとすれば、平家物語原本の成立はそれより前になる」との結論を導いた。

『平家物語』は本文の違う異本が多く、内容から大きく分けて語り本系と読み本系に分けられる。ただし『平家物語』の成立事情は複雑なので、どちらが先かということは一概にいえない。なお、一般的に『平家物語』といった場合は、語り本系を指す。

毎日.jpの記事は、長門本は読み本系に属しているものの、語り本系の影響も強く受けているので、長門本のみに見られるこの記事が1235年の噴火をさしているならば、原『平家物語』の成立はそれ以前と考えられるというのである。原『平家物語』は、1230年前後以降、10年ほどの間に作られたと考えられているから、従来の説を補強することができる。

問題は、井村准教授のいうように、本当に霧島山の溶岩流出噴火から時間を置かずに長門本が成立したのか、ということである。

長門本『平家物語』の噴火の記事は以下のとおり。

然れども彼峯を何の本地ともしらざりけるを、はりまの国、書写の山を建立してける、證空上人彼峯に登山して、我この神の本地を拝み奉らんと誓ひ給ひて、七日参籠して、法花経をどくじゆせられける、
五日といふ子の刻ばかりに、大山震動して、岩崩れ、めう火もえて、ことに煙りうずまきて、暫ばかりして、廻り一二丈そのたけ十余丈ばかりある大蛇の、角はかれ木の如くおほひかかり、眼は日月の如くかがやきて、大にいかる様にて出来給ふ、上人是を御覧じて、此山の有さまを見るに、もとより龍宮じやうとはぞんぜられ候ぬ、思ふにすゐじやくは龍のすがたにてあつし候か、本地をこそ拝み奉度候へ、とくとく本地を現はさせ給へ、あしくもげんぜさせ給ふものかなとて、はたと守り奉る、大蛇本地に帰りぬ、
平家物語・長門本・全巻による。底本は国書刊行会本)

要するに「書写の山を建立してける、證空上人」が霧島の大蛇をいさめておとなしくしたというのである。「證空上人」というのは、書写山を建立したというのだから性空(917-1007)の誤り。性空は平安時代の高僧で、実際に霧島で修行している。国書刊行会本が誤ったか、読みが同じだったため写し間違えたのだろう。

もし、長門本『平家物語』の成立が1235年の噴火以後すぐなら、平安時代の性空が霧島の噴火を治めたという説話を挿入するのは、ちょっとムリがあるんじゃないだろうか。

伝承というのは、年が経つにつれて、時代の違いが混同されるようになるものである。1235年の噴火よりずっと後に、噴火とこの地で修行した性空が結び合わされ、長門本『平家物語』に取り入れられたと考えるべきだと思う。
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昨日のエントリで、読売新聞があまりにアホな見出しをつけているので、驚愕してクサしたわけだが、そのあとで検索してみたらアホは読売だけじゃなかった。

小中高いじめ把握、前年度の6倍の12万件…ネット悪用も:YOMIURI ONLINE
いじめ:全国の小中高校、6倍の12万件 自殺「一因」6件−−昨年度:毎日.jp
いじめ、06年度急増12万件 聞き取り重視の結果:asahi.com
いじめ一挙6倍、定義を見直し12万5000件:産経ニュース
いじめ6倍12万5000件 定義見直し、自殺も6人:東京新聞

読売と毎日は、見出しだけ見ると単純に6倍に増えたように見え悪質だ。

朝日は、6倍を書かず(ただし記事本文にはある)、「聞き取り重視の結果」と一応理由付けているが、これだと今まで隠していたのが露呈して増えた印象を与える。

産経と東京新聞は6倍という、全く意味のない数字を書いているものの、定義を見直した結果であることも記されており、まだましな方だ。

いずれにしろ、6倍なんて数字を出している時点で、各社そろいもそろって数学のできない人たちばかりであることだけは間違いない。

実際の調査結果は平成18年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」なる調査で、文部科学省のサイトで見ることができる。下にPDFファイルをリンクしておいた。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/11/07110710/001/002.pdf


このファイルによると、平成6年度と18年度に調査方法の改定があり、表やグラフも別のものとして扱われている。

基準と調査対象が同じ平成6年度から17年度までは、7年度と15年度が増加している以外はすべての年度で減少している。それも、10パーセントを超す減少も少なくない。文部科学省の調査によれば17年度までいじめは減少しつづけていたのである。

この調査は、小学校1年生から高校3年生までが対象だから、18年度は17年度の高校3年生が抜けて、代わりに新しい小学1年生が入ったのと、海外に転出、転入、死亡した以外はすべて同じメンバーである。

もし、17年度まで毎年数パーセントずつ減少していたいじめの件数が、18年度になっていきなり数倍にまで跳ね上がったとしたら、前年度まで大人しかった人物が、18年度になって突然いじめを始めたことになる。そんなこと、戦争や飢饉でもない限り常識的に考えられない。

繰り返すが、調査基準と学校数が変わった以上、今回の調査結果と比較しても、いじめが増えているのか減っているのかは分からないとしかいいようがない。それは、今後の調査から判断されるべきものである。

もちろん、いじめは撲滅せねばならない重要課題であることは今後も変わらない。だからといって、この程度の統計もまともに読めないアホな新聞各社に煽られて、必要以上に不安になることもないのである。
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小中高いじめ把握、前年度の6倍の12万件…ネット悪用も:YOMIURI ONLINE

ええっ!6倍!こりゃ大変だ、教育現場の荒廃もここまで来たか!と思いきや、記事を読んでみると・・・

文科省は、調査対象をこれまでの「公立校のみ」から、「国立、私立を含むすべての学校」に広げ、都道府県教委を通じて、いじめの件数を報告させた。また、実態を幅広く把握するため、定義を「一方的、継続的に攻撃され、深刻な苦痛を受けたケース」から、原則的に「いじめを受けたと子供が感じたケース」に変更した。

 その結果、いじめの総数は、05年度の2万143件から12万4898件に急増。内訳は小学校6万897件、中学校5万1310件、高校1万2307件、養護学校など(現在の特別支援学校)で384件だった。いじめが確認された学校は、小学校では全体の48%、中学校では71%、高校は59%を占めていた。


オイ、コラ読売、なめてんのか。

調査対象をこれまでの「公立校のみ」から、「国立、私立を含むすべての学校」に広げ

思いっきり分母が増えてるじゃないか。

定義を「一方的、継続的に攻撃され、深刻な苦痛を受けたケース」から、原則的に「いじめを受けたと子供が感じたケース」に変更した

基準が変わっているじゃないか。
そりゃ長い学校生活、たいていの子供が一度はいじめを受けたと感じることがあるだろ。

これで単純に6倍なんていえないことは、九九の七の段さえおぼつかない僕だけじゃなくって、小学生にすら分かることだ。

読売新聞社の記者の数学レベルは小学生以下らしい。
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たまたま、池袋の芸術劇場に行ったら、エスカレータの足元に妙なブラシが付いていた。ここのエスカレータは非常に長いのだが、ブラシは最初から最後まで一列にずっと付いていた。

これで靴でも磨くのかなと、靴を当ててみて(スニーカーだから意味がないけど)やっと気がついた。これがあると、靴がサイドの壁にくっつかないのである。もちろん、ブラシに靴を取られるということもない。

帰ってから調べてみたら、これは安全ブラシというものらしい。

EHC D-Flector安全ブラシ

靴がエスカレータに引き込まれる事故は以前エスカレータにひきこまれるかどうか試してみたのエントリで書いたが、これがあれば、間違いなく事故が減るだろう。

エスカレータのことはよく分からないが、設置するのに、そんなに工事費がかかるものとも思えないし、一度設置したら、それほど維持費のかかるものとも思えない。

簡単な装置だが、画期的である。汚れた靴も磨けるし。
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Canon Wordtank M300を使い始めて5ヶ月が経った。もう、電子辞書なしではいられないが、今まで使った感想をまとめておく。なお、今までの記事はこちらにまとめてある。

ただし、他の機種と比べたわけではない。電子辞書選びの参考にする場合は、そのあたり割り引いて読んで欲しい。

良かった点

1.持ち歩きしやすい
他の機種とは違い小さいので、ポケットに入れて持ち歩ける。授業に行くときも、おまもりとして持って行くようにしている。

2.古語辞典が秀逸
やはり、旺文社古語辞典が搭載されているのはよい(他機種は旺文社全訳古語辞典)。また、古語辞典に所収の和歌と、その解釈が検索できるのは便利。

3.検索にワイルドカードが使える
*(任意の文字列)や?(任意の一文字)が使えるのは便利。

4.パソコンに繋いでUSB辞書として使える
範囲指定してホットキーを押せば検索できる。ちょっとした英文を読むのに便利。

5.MP3再生機能
実は一番良く使っている機能だったりする。
本体のサイズが小さい上に、閉じたまま操作できるので(もちろんi-podなどの専用機にはかなわないが)、プレーヤーとして十分使える。ただし、あくまでおまけ。

悪かった点

1.反応がにぶい
CPUがしょぼいのか、キーボードのできがイマイチなのか、反応がにぶい。もうちょっとサクサク動作して欲しい。

2.オマケとはいえ、MP3再生機能がショボすぎ
曲順の並べ替え、ランダム再生、一曲の中での早送り・巻きもどしができない。特に、早送りや巻きもどしができないのは、語学の学習用としても使えない。

3.拡張カードがいつの間にか発売されて、いつの間にか売り切れていた。
中国語辞書の拡張カードを買うつもりだったが、発売が延期されて、しらないうちに発売されたらしく、どこでも売り切れになっている。マイナー電子辞書の悲哀を感じた。

4.「ゐ」「ゑ」の入力をなんとかしてほしい。
「ゐ」は「WYI」、「ゑ」は「WYE」で出てくるのだが、直感的に分かりにくい。Yってなんだよ。
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直筆で読む「坊っちやん」 (集英社新書 ビジュアル版 6V)
を買った。

なんと、夏目漱石『坊っちゃん』の原稿すべてが、オールカラーで読めるのである。これは画期的。新書版なのがちょっと残念だが、そのため1200円とお買い得になっている。

漱石の原稿は比較的読みやすいほうだと思うが、なにしろ明治の人なので、変体仮名、異体字がうじゃうじゃでてくる。だから、それらになれていない人にはちょっときついかもしれない。なお、この本は一般向けなので、一応読みにくい部分だけは下のほうに翻刻してある。

活字本にはあらわれない、本文の訂正や誤字とみられるもの、推敲のあとなどが、すべて見られるのは面白い。そういう問題点は巻頭の秋山豊氏の文章にまとめてあって、それらをたどりながら読んでいくと、活字本だけでは得られない漱石像が見つかるだろう。

漱石の作品の中でも「坊ちゃん」は、一番最初に読むものだと思う。僕が最初に読んだのは中学生ぐらいのときだっただろうか。あまりに若いときに読んでしまうから、どうしても子供向け娯楽作品みたいな印象が残ってしまい、その後は読まないか、読んでもいいかげんに読んでしまう。

あらためて原稿で読むと、いくら読みやすいとはいえ、活字にはかなわないから、どうしてもゆっくり読む。すると、実によく考えられた作品だということに気づかされる。

下宿の婆さんとのやりとりの部分が漫才みたいで面白かったのだが、ちょっと気になったのが、マドンナという名前の由来を話す場面である。
「大方画学の先生が付けた名ぞなもし」
「野だがつけたんですかい」
「いいえ、あの吉川先生が御付けたのじやがなもし」

「野だ(野だいこ)」というのは坊っちゃんが画学の吉川先生に勝手につけたあだ名なので、婆さんに言っても通用しない。婆さんは「野田」という苗字だと思って言い直したのだ。

原稿では「野だ」は「野だいこ」の略だから、漱石はすべて「だ」を平仮名にしている。ところが、最後の方では漱石もワケが分からなくなっちゃったらしく、147枚目の21行目(全部で150枚の原稿)でつい「野田」と書いてしまっているのだ。

作者自身でさえも間違えるくらいだから、下宿の婆さんが間違えるものいたしかたないなと思った。
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