昔、池袋の西口から歩いて3分ぐらいのところに「純喫茶 蔵王」という喫茶店があった。ちなみに、池袋は西武デパートがあるのが東口で、東武デパートがあるのが西口である。

で、この蔵王だが、とんでもない喫茶店だった。

小さなビルの地下にある、うすぐらく怪しい店内。だが、メニューはいたって普通。コーヒーとか紅茶とかごく普通のラインナップだ。値段もブレンドコーヒー一杯が400円ぐらいだったと記憶している。ドトールなど、セルフサービスの店に比べると高いが、当時はそういう喫茶店はあまりなく、これが標準的な値段だった。

普通じゃないのはここからだ。席に着くと、テーブルにお冷と、皿と、なぜかゆで卵が置かれる。

オーダーしてしばらくすると、籠にトーストを山盛りにした店員が店内を巡り「トーストいかがですか?」と尋ねてくる。「ください」というと、一人当たり二枚(一枚を半分に切ったもの)、さっきの皿にトーストを置いていく。パンは結構厚みがあって、4枚切りぐらいの厚さにバターが塗ってある。これがなかなかうまい。

これがこの店最大の売りで、蔵王池袋店はトーストが食べ放題なのである。だいたい15〜20分に1回ぐらい、トーストを配る店員が回ってくる。客が多いと、最後の方には無くなってしまうこともあるので、僕はなるべく厨房から近いところに座るようにした。

腹いっぱいトーストを食べて、店員が来たときに「結構です(いりません)」と言うと、皿を片づけてくれて、今度はなぜか昆布茶がでてくる。この店では何を注文しても、ゆで卵・トースト・昆布茶がセットなのである。

それだけではない。店内のテレビには映画がかかっていたり、夏場は別室で高校野球がかかっていたりした。雑誌も豊富にあった。その上24時間営業だったので、大学生のころは終電を逃すと朝までここにいた。

こういう次第なので、この店の客はみんな長居をする。長居無用なんて無縁の世界である。どう考えても店が長居するように作っているとしか思えない。

初めてこの店に行ったのは中学生の時だった。その時は父に連れて行ってもらったのだが、高校が池袋に近かったため常連になった。その後、大学、大学院と10年近く行ったが、その間サービスはほとんど変わらなかった。

大学院以降は家が遠くなったためあまり行かなくなったが、2004年ごろ閉店したらしい。

【追記 2020/03/19】
コメント欄から、関西テレビで放映された蔵王の動画があることを教えていただきました。
↓の記事からどうぞ。
在りし日の池袋蔵王動画:2020年03月19日