成尋阿闍梨母集』のテキストを作っていて、漢字の表記に少々悩んだ。

やたナビTEXTでは、常用漢字はすべて新字体に統一することにしている。そちらの方が読みやすいのと、検索の便を図るためである。ただし、『今昔物語集』は例外で、異体字が非常に多く、それらが使い分けされている可能性があるので、どう考えても大丈夫なものだけ新字体にしている。

さて、成尋は中国の五台山で修行するために渡宋する。五台山は旧字体だと「五臺山」である。もうひとつの聖地、天台山にも行っているのだが、こちらは旧字体でも「天台山」である。地名として「台」だったということらしい。中国語では発音も少し違っていて、天台山の台はtaiの1声、五台山の台(臺)は2声である。成尋の旅行記『参天台五台山記』は、正確に表記すると、『参天台五臺山記』となる。

固有名詞は新字体にこだわらないという方針もあるので、最初は旧字体の「五臺山」にしようと思ったが、これもちょっと問題があることに気づいた。現在、日本でも中国(大陸)でも、「五台山」と表記しているのだ。「五臺山」にしてしまうと、一般的な表記である「五台山」で検索がヒットしなくなる。

今のところ、本文では「五臺山」にして、注釈で「五台山」としている。これならどちらでもヒットするが、字を変えただけの注釈というのもマヌケな話である。

さて、これを書いていたら、台湾に住んでいる知り合いから、ちょっと面白い写真を見せてもらった。台湾の高雄駅の入場券である。
月台票

「月台」とはプラットホームのことで、「この券でプラットホームまで入れますよ(乗車はできません)」という意味である。本来、「月台」は月見のための台なので、「入場券」よりもお見送り感がある。

それはさておき、券の上部にある、「臺湾鐵路局」が「臺」を使っているのに、なぜか「月台」は日本の新字体と同じ形を使っている。この場合、「天台山」とは違い、「月臺」で問題ないはずだ。

簡体字を使う大陸と違い、台湾は繁体字にこだわっているというイメージだったが、よく使うにもかかわらず画数の異常に多い「臺」は、俗字として「台」を使うことが多いらしい。この場合、活字なんだから、「臺」でよさそうな気がするけどね。