「学芸員はがん」=山本担当相が発言:時事通信 Yahoo!ニュース
山本幸三地方創生担当相は16日、大津市内で講演後、観光を生かした地方創生に関する質疑の中で「一番のがんは文化学芸員と言われる人たちだ。観光マインドが全くない。一掃しなければ駄目だ」と述べ、博物館などで働く専門職員である学芸員を批判した。
とんでもない暴論・・・ではあるのだが、彼の言う「観光マインド」には思い当たる節がある。

観光マインドとは、観光地を訪れた「驚き」のことだろう。もっと簡単に言えば、〈でかい!古い!きれい!〉である。歴史・文化・民俗・地理、そういうことに興味がある人以外の観光客は、基本的に〈でかい!古い!きれい!〉を見に観光地へ行く。

日本の観光地でいうと、奈良の大仏は〈でかい!古い!きれい!〉の代表的なものだ。理屈抜きにでかく、古く、美しい。奈良の大仏に、歴史的意義だとか、美術的な位置づけだとか、哲学的な意味合いなどを見に来る人は、それに興味がある人が想像するほど多くはない。

日本人・外国人を問わず、多くの観光客は、〈でかい!古い!きれい!〉を求めて観光に来る。これなら、知識のない人でも楽しむことができる。たしかに学芸員などいらないということになるだろう。しかし、それでいいのだろうか。

そもそも、日本の観光資源には〈でかい!古い!きれい!〉は意外に多くない。土地が狭いから、ピラミッドだの万里の長城クラスの「でかい!」ものはそれほどない。日本は地震大国で木造建築が多いから、現存しているもので、それほど古いもはない。紀元前の歴史を持つ、地中海諸国や中国・インドと比べてしまえば、8世紀に作られた奈良の大仏でも新しいほうである。日本の自然はたしかに美しいが、パムッカレだの九寨溝だの、この世のものとは思えない風景もそれほど多くはない。

しかし、何でも無い風景であっても、知識があればわざわざ来る意味がでてくる。それを助けるのが、学芸員の仕事である。

例えば、次の写真は、大阪の難波宮跡だが、現在は単なるだだっ広い公園に、基壇だけが復元されている。はっきりいってつまらない風景だが、難波宮の知識があると、基壇の上の大極殿も、歩いている飛鳥・奈良時代の人々さえも見えてくる。
難波宮跡
大極殿基壇
何でもない景色も、知識があれば楽しめることを証明してくれるのが、NHKのブラタモリである。あの番組を見れば、つまらない地形や、何気ない風景にも、たくさんの意味があることが分かるだろう。ブラタモリでは多くの学芸員が活躍している。

また、〈でかい!古い!きれい!〉で驚いただけの人は、リピーターにはならない。〈でかい!古い!きれい!〉は、一度見れば満足してしまうのだ。奈良の大仏も、初めて見た時には大きさに驚くが、二回目は「あれ?こんなもんだったかな」となる。

しかし、ここにさまざまな知識が入ると、二度目はまた別の見方ができるようになる。最初に〈でかい!古い!きれい!〉に圧倒されて見えなかった部分も、二度目・三度目で見えてくることもある。そのような知識の取得を助けるのが学芸員の仕事である。

おそらく、山本幸三地方創生担当相は〈でかい!古い!きれい!〉な観光しかしてこなかったのだろう。だから学芸員は不要だと考えるのだ。

観光客として、そういう観光で満足するなら、それはそれでいい。だが、観光客を受け入れる側は、それではダメだ。観光客に様々な知識を分かりやすく説明し、リピーターになってもらい、ついでに宣伝もしてもらう。それが、観光地の利益にも繋がるはずである。