これが何かご存知だろうか。
認識票表
認識票裏
ちょうど去年の今頃だったろうか、祖母の家を片付けていた母が、祖父の遺品の中からこ汚い袋に入ったこれを見つけた。母にはこれが何だか分からなかった。これを見て、僕は子供のころの出来事が蘇ってきた。

僕が小学生の時のことである。何故か、祖父は僕に古銭をくれた。ほとんどが戦前のもので、その中に満州国のものと天保通宝が混ざっていたのを覚えている。その時、古銭が入っていた箱の中にこれが入っていた。

僕は最初これを小判だと思ったのだが、それにしては小さくてのっぺりしている。祖父は、「おっと、これはあげられない」と言って、すぐに箱に戻してしまった。よほど大切なものらしいが、子供の僕にとっては、他の古銭とちがってあまり興味をそそられなかった。

あらためてよく見てみると、真鍮製と思われる楕円形の板に、タガネで意味不明の数字が刻まれている。しばらく考えて、これはDogtagではないかと思った。Dogtagは米兵がつけている身分証で、最近はファッションアイテムになっている。旧日本陸軍にも同じものがあったのではないかと思って検索してみると、たしかにこれは旧日本陸軍のDogtagで、正式名称は認識票だった。

Wkipedia(認識票:Wikipedia)によると、上下の穴に紐を通して、たすき掛けにして身に付けるのだという。万が一戦死した場合、これさえ回収されれば戦死とみなされ、回収されないと行方不明ということだったらしい。真鍮でできているのは、焼死体になろうとも、腐乱死体になろうとも、死体を野犬に食われようとも、これだけは損傷しないようにするためである。

袋にはこの認識票と粗末な数珠が入っていた。袋には何か書いてあるようだが、薄くて読めない。なお、十円玉は比較のために僕が置いたものである。
袋と数珠と認識票

祖父は三回徴兵され、最後はウズベキスタンのタシュケントに三年抑留されたが、幸いなことに、焼死体にも腐乱死体にもならず、この認識票とともに帰ってきた。たいへん縁起がいいものなので、僕がもらって常にかばんに入れている。