鴨長明『発心集』の電子テキストを公開しました。例によって、翻刻部分はパブリックドメイン(CC0)で、校訂本文部分はクリエイティブ・コモンズライセンス 表示 - 継承(CC BY-SA 4.0)で公開します。

慶安四年版本『発心集』:やたナビTEXT

底本は慶安四年版本で、影印は名大システム 古典籍内容記述的データベースと、早稲田大学図書館古典籍総合データベースを利用しました。慶安四年版本は、いわゆる流布本で、角川文庫や新潮日本古典集成などの底本になっているものです。

漢字カタカナ交じりで、非常に読みやすいのですが、漢字表記が多く、不統一で、さらに濁点、句点がすでに付されているので、これをどう校訂本文に生かしていくか悩みました。

例えば、「発す」は「おこす」と読めばいいのですが、現代ではあまりしない表記です。とはいえ、作品名が「発心集」なので「おこす」と平仮名にしてしまうのも、「起こす」と別の漢字を当てるのも気が引けます。やむなく「発(おこ)す」としましたが、これだと「発す」で検索できません。

読み仮名や送り仮名をどう処理するかも悩みました。翻刻ですべてカッコに入れてしまうと、やたらと読みにくいものになります。やむなく、翻刻では読み仮名・送り仮名は省略し、校訂本文の方に必要に応じて組み入れましたが、これもいろいろ疑問があります。

例えば、「本意」。底本の読み仮名に従うと、「ほい」「ほんい」両方あります。他にもあやしい読み仮名や不統一の読み仮名はたくさんあり、たぶん版本を作った人が勝手に入れた読み仮名だと思いますが、そのまま校訂本文に組み入れました。

最後に『発心集』について。

『発心集』は『方丈記』でおなじみ鴨長明による仏教説話集です。長明が語りモードに入って、少々難しくなることもありますが、仏教説話として読みやすい部類に入ります。

『発心集』とはいうものの、発心譚(仏道に目覚める話)だけではなく、霊験説話・往生説話・遁世説話など、あらゆる仏教説話のタイプが揃っています。無いのは仏伝と縁起ぐらいでしょう(あったっけ?もう忘れた)。そのため、仏教説話集入門としては最適だと思います。

さて、やたナビTEXTに収録した長明の作品は、『方丈記』と『無名抄』があります。これで長明の散文作品はすべて揃ったことになります。

鴨長明ブーム、来ないかなぁ。