印盒とは、印泥(朱肉のようなもの)を入れる磁器製の入れ物のことである。今ふと思ったが、中に入っているのは印泥だから、印盒ではなくて印泥盒と言うべきではないか。話がそれた。とにかく書道用の印泥は、磁器で出来た印盒に入った状態で売られている。

印盒1
これは数年前にそのへんの書道具屋で買ったものである。立派な竜の文様が付いている。よく見ると、五本爪の竜だ。五本爪の竜の意匠は、中国の皇帝しか使えなかったので、この印盒は御物だったことが分かる。

裏返してみると・・・。
乾隆年製
「乾隆年製」と書いてある。乾隆帝の在位期間は1735年から 1796年。ということは、220年以上前、乾隆帝が使っていたものということになる。

もちろん、そんなお宝ではない。一部の方はご存知のように、上海西泠印社製の印泥には、昔からこの文字が入っている。数年前に作られたものである。

ニセモノといえばニセモノだが、誰もホンモノだと思って買う人はいない。せいぜい、なにか勘違いした人が『開運お宝鑑定団』に出して恥をかくぐらいである。売る方も、この印盒を乾隆年製に見せかけて、より高く売ろうなどという意識はない。単に高級品として立派に見せたいだけである。

もちろん、現代に作られたものに「乾隆年製」と書いても、古いものとして売らなければ、法律的には何の問題もない。しかし、こういう意識が、知的財産権の存在するブランドやキャラクターなどを模倣してしまうのと地続きであるのは言うまでもない。

さて、今年、授業で使うために、いくつか同じ印泥を買い足した。絵柄は違うが、同じ五本爪の竜である。
印盒2
何気なく裏返してみて驚いた。
ブランドマーク
なんと、お約束の「乾隆年製」という文字の代わりに、西泠印社のブランドマークに変わっているではないか。しかも、ご丁寧にRマークまで付いている。西泠印社のブランドマークが商標登録されているという意味である。それにしても、この意匠に、Rマークは不似合いだ。

中国はニセモノだらけの国で、知的財産権保護の意識が低いといわれる。それは実際その通りなのだが、決して何も変わっていないわけではない。この印盒のブランドマークとRマークはそれを示している。

まあ、個人的には怪しいパチものだらけの中国の方が好きなんだけどね。