河野太郎外務大臣の名状しがたい篆書のようなものが話題になっている。
河野太郎外相「一度見たら忘れない」書体 G20事務局発足で看板披露:産経ニュース
河野太郎の書

篆書の筆遣いをしておらず、字形も篆書らしさがない。一度もまともに篆書を書いたことのない人の字なのは間違いないのだが、それ以外にもいくつか気になる点がある。

1.片仮名
「サミット」は片仮名で書かれている。平仮名や片仮名は、漢字とは別の文字である。したがって平仮名や片仮名の篆書というのは存在しない。通常篆書と仮名を組み合わせることはないが、どうしても組み合わせなければならない場合、漢字と違和感がないように組み合わせなければならない。

河野大臣の片仮名を見ると、「サ」や「ツ」「ト」の最終画に、篆書に寄せようとする工夫が見られる。それが成功しているとは思えない(これならそのまま書いた方がいい)のは、河野氏が篆書を理解していないからだが、それならば、この工夫はどこから来るのか。

2.「事」の筆順
篆書にきまった筆順はない。だが、人間どうしても書き慣れた楷書の筆順に近いものなる。特に、「事」のような、楷書とほとんど同じ字形であれば、なおさらだ。

ところが、どうも縦画の直前のヨの筆順がおかしい(下図参照)。
比較
指導する人がいたり、手書きの文字をお手本にしたりしたのなら、こういうことは起きないだろう。

3.「務」の「力」
筆遣いはともかく、字形的にはほとんど合っている。しかし、「務」の力がなぜか楷書の字形になっている。本来の字形(『説文解字』の小篆)はこうなる。
務
4.「局」の「口」
篆書を勉強した人なら、いちばん違和感を持つのが、「局」の口だろう。篆書で口を書く場合、上に二本ツノが出るのが普通である。
局

河野大臣の書き方では、口がひっくり返っているように見える。書道の先生がお手本を書いた場合、このように書くことはまずありえない。

このような書き方は印相体という、開運印鑑屋がでっち上げた書体に見られるらしい。


以上をまとめると、この文字は書家が指導したものではなく、おそらくフォント等を参考にして書いたものだろう。フォントなら平仮名・片仮名も篆書的にデザインされているはずだ。片仮名最終画の妙なくねりはそれを感じさせる。

それでは、なぜ普段使っている楷書や行書で書かなかったのだろうか。インパクト重視なら、インパクトのある楷書なり行書なりを書けばよいだけだ。おそらく、楷書や行書によほど自信がないから、上手いのか下手なのか分からない(一般的には)奇妙な書体で書いたのだろう。ようするにハッタリである。

ハッタリ書道というと、小泉元総理を思い出す。小泉元総理は書くスピードが異常に早く、自分の字で書いていた。全く上手いとは思えないが、文句を言わせないハッタリ感があって、それがいかにも小泉氏らしさをだしていた。

河野氏の書は、向いている方向は小泉元首相と同じだが、結局何らかのお手本、それもフォントのような安直なものを見ていて、まともに勉強していない。まあ、そういう人間なのだろう。