七人の死刑が執行され、またオウム事件が話題になりつつある。誰しもが気になるのがその真相だが、細かい犯行のいきさつ以上に気になるのが、なぜ新興宗教団体があのように先鋭化されていったかだろう。

僕は東西冷戦が元凶だと思っているのだが、テレビなんかを見ていると、誰もそこに触れない。どうにも隔靴掻痒の感がある。

例えば、今「人類が滅亡するのは、最短でいつごろだと思いますか?」というアンケートを取ったら、どういう結果が出るだろうか。自分で考えると、最短でも数百年は滅亡しないだろうと思う。長さは人によって違うだろうが、数十年後に滅亡すると思っている人はほとんどいないはずだ。現在ならば、「人類の滅亡」よりも「日本の滅亡」を心配する人の方が多いだろう。

ところが、冷戦時代はそうではなかった。

当時、世界は東西に二分され、その親玉であるアメリカとソ連が大量に核兵器を持ち、全部合わせれば地球を何個破壊できると言わていた。冷戦とはいうものの、朝鮮戦争を始め、ベトナム戦争・イランイラク戦争・アフガニスタン紛争など、実質的な二大国の代理戦争も多かったから、人類滅亡はリアルな話だった。

日本の置かれた位置はさらに微妙だ。なにしろ地理的にアメリカとソ連・中国に囲まれていて、三国とも核兵器を所持し、それぞれが(ソ連と中国も仲が悪かった)敵対していた。

しかし、当時「日本にも核兵器を!」と考える人はほとんどいなかった。もちろん、日本が被爆国だからだが、それ以上に、こんな状況で核兵器を持っても意味がないし、キューバ危機などを考えれば、持っている方がヤバいと思っていたからである。

日本に核兵器が飛んでくることは、同時に世界的な核戦争の始まりを意味し、さらに人類滅亡を意味した。日本の滅亡=世界の滅亡だったのだ。

放射能除去装置(コスモクリーナー)をイスカンダルに取りに行くという『宇宙戦艦ヤマト』や、1999年に人類が滅亡するという『ノストラダムスの大予言』は、そういう文脈で支持されたのである。どちらも1974年の放映・発行である。

そんなわけで、『宇宙戦艦ヤマト』や『ノストラダムスの大予言』で育った少年時代の僕たちは、人類は50年を待たずに滅亡すると本気で思っていた。「なんとかしなきゃ!」と思うわけだが、ガキになんとかできるわけもなく、あらぬ方向…つまりオカルトへ行ってしまう人もあった。かくして、オカルトブームからオウムへと繋がるのである。

その後、1989年にベルリンの壁が崩壊し冷戦は終結。1991のソ連の消滅により、冷戦は完全に過去のものになった。僕たちはガキだったから、政治情勢なんか理解できるわけもなく、自分たちの恐怖が冷戦に由来していること自体知らなかった。冷戦が終結しても、潜在的な滅亡の恐怖だけが残ったのだ。

オウム真理教は冷戦の終結するちょっと前に誕生し、冷戦終結後に規模を拡大した。人類滅亡の恐怖を終末思想へと転化し、「なんとかしなきゃ!」という子供っぽい思いが、残酷な犯罪へと先鋭化していったのだろう。実際オウムに対する『宇宙戦艦ヤマト』の影響は強かったらしく、空気清浄機をコスモクリーナーと言ったり、主題歌の替え歌を作ったりしていた。

一方で、滅亡の恐怖は、「人類」から「日本人」へと矮小化していったのではないか。僕はこれが最近の特殊な思想(いわゆるネトウヨ)につながっていると考えている。