せっかく8万円(修理代)+1万円(靴代)もかけたのに、うっとおしい天気が続いて、自転車に乗れない。家のまわりをちょっと走っただけで、僕の自転車はまだ置物だ。
APB
修理に8万円もかかったというと、新しい自転車が買えるんじゃないかとか言われる。気持ちは分かるが、僕にとっては特別な自転車なので、8万円ぐらいしょうがないと思っている。

振り返ってみると、僕の人生はどうにもタイミングの悪いことばかりだった。日本という国は、タイミング次第で生涯安泰だったり、いらぬ苦労を背負わせられたりする。それはどこの国だって多かれ少なかれあるものだが、日本の場合はあとあとまで長引くのだ。

例えば、就職氷河期と言われた時代に大人になった人たちのことを考えてみるといい。彼らは、たまたま大人になった年が就職難だっただけだ。就職難だから、卒業時に正社員として就職できなくてもそれは仕方がない。ところが、氷河期が終わっても彼らはまだ氷の中にいる。そんなバカな話があるか。

湿っぽい恨み節は言いたくないのでやめておくが、僕にも同様のことが、それも何度も起きた。どうしたらいいか、行き詰まってワケがわからなくなった時に、僕を救ってくれたのがこの自転車だった。こっ恥ずかしいキザな言い方だが、本気でそう思っている。

当時、やたらと仕事が忙しく、使う暇がないから金だけはあった(といっても、今から考えたらたいしたことはない)。唯一の楽しみは本屋を冷やかすことだけ。そんなとき、駅前の本屋で九里徳泰氏の『MTBツーリング全技術』という本を買った。なんでこれを手にしたのか、当時も今もさっぱり分からない。何か引かれるものがあったのだろう。

この本には具体的なツーリングの方法が書いてあったから、読んだら旅に出たくなった。まずはロングツーリングに耐えうる自転車を買わなければと思って、MTB(マウンテンバイク)を買うつもりが、何をトチ狂ったかモールトンを買ってしまった。雑誌で見て、なんだかカッコイイ自転車だなと思ってたら、近所にモールトンの専門店みたいな店があったのだ。

自転車に乗るようになると、普通に歩いていた景色が違って見えた。それは自動車から見える景色とも違っていた。ちょっと視点とスピードが変わるだけで、こんなに見え方が変わるのだと驚いた。行き詰まった感じは少しずつ薄まっていった。

さて、自転車を買ったのだから、次はロングツーリングである。当時は今よりも長い夏休みがあったので、アメリカにでも行こうとおもっていたのだが、これまたおかしな成り行きで中国になった。

当時の中国は(今は知らない)自転車が持ち込むことができないため、現地でオンボロ自転車を購入した。そして、中国を走ったら完全に行き詰まり感はなくなった。中国ツーリングにモールトンは使わなかったのだが、その後お遍路に使った。

これはもう19年前、僕が30歳のときの話である。実はそのころも今もたいして状況は変わっていないのだが、その後、二度と行き詰まりのようなものを感じたことはない。

ああ〜、多摩サイ走りてぇな。