今まで京劇には全く興味がなかった。何しろ何を言っているのかわからないし、ある程度ストーリーを知っていても、うろ覚えだから演技だけで理解できる自信がない。

しかし、京劇には『水滸伝』を元ネタにするものがいくつかあるのを知って、Youtubeで見てみたらなかなか面白かった。ストーリーは知っているので、言葉は相変わらずよく分からないものの、誰が何をしているのかはよく分かる。

魯智深と林冲が暴れる『野猪林』、李逵が母親に会いに行き虎退治をする『李逵探母』、武松の虎退治『武松打虎』などを見たが、一番面白かったのが『時遷盗甲』。


時遷はこそ泥の達人である。宋江から、徐寧を仲間に引き入れるため家宝の鎧を盗めという命令が下り、夜中に徐寧の屋敷に忍び込み、天井の梁にぶら下げられている鎧の入った箱を盗み出す。単純明快なので、『水滸伝』を知らなくても楽しめるだろう。

登場人物はほぼ時遷一人だけ。これがまたヘンな格好をしている。表情も喋り方もしぐさも面白いし、パントマイムありアクロバットありコサックダンスもどきありで見ていて飽きない。京劇というと、やかましくドンドンシャンシャンやっているイメージだが、なにしろ鼓上蚤(太鼓の上ではねても蚤が飛ぶのと同じように音がしない)と渾名されるドロボーなので、ほとんど無音の場面も多い。

それにしても、箱が小さすぎる。書類箱みたいで、とても鎧一式が入っているようには見えないな。