古今著聞集』の最後の篇「魚虫禽獣第二十」はその名のとおり動物の説話が集めてある。ありとあらゆる生き物がでてくるが、猫の話でちょっと面白いのがあったのでご紹介。

『古今著聞集』686
宰相中将なる人の乳母が飼っていた猫は、縄を引きちぎってしまうほど力が強かった。十歳に余るとき、夜背中から光を発した。
これはまあ不思議といえば不思議。光っていたのは静電気じゃないかという疑惑はあるが・・・
この乳母は日ごろから、「おまえが死ぬときに、私に死にざまを見せるな」と言っていたら、十七歳になったときどこかへ行ってしまった。
「猫は死に際を見せない」というのはよく言われる話だ。一説によると、猫は病気の苦痛と、他の動物に襲われるの苦痛の区別が付かず、とりあえず苦痛から遁れるために安全な場所を捜すのだという。

「鎌倉時代はそんなことは言われてなかったのかな」と思って次の説話を読んだら、もっと面白いことが書いてあった。

『古今著聞集』687
ある貴所に、「しろね」といふ猫を飼はせ給ひける。その猫、鼠・雀などを捕りけれども、あへて食はざりけり。人の前にて放ちける、不思議なる猫なり。
いや、たしかに不思議だけど、これは不思議な猫ではなくて、猫の不思議である。猫が鼠・雀を捕ってきて、ドヤ顔で飼い主に見せびらかすというのは、猫を放し飼いにしている人なら誰でも経験することだ。

橘成季は猫のことをよく知らなかったらしい。たぶん、「うちのしろねちゃんは不思議な猫で・・・」とかいう、飼い主の猫バカ自慢を真に受けてしまったのだろう。