網膜剥離で手術した(その1)の続き

というわけで、緊急入院からの手術と相成ったわけだが、目玉の手術というものは聞くだに恐ろしいものだ。穴のあいて剥れた網膜を貼り直し、目玉に空気を充填するという。空気を充填するのは、貼り直した網膜を空気圧で押えるためなんだそうだ。

この説明じゃよく分からないと思う。「網膜剥離 手術」あたりのキーワードで検索してもらえれば、病院や専門家による詳細な解説が図解付きでいくらでもヒットするので、気になる人はそちらを参考にしてほしい。

時間が来たら車椅子で手術室に運ばれる。手術台に乗ると音楽が聞こえてきた。なんと僕の好きなボブ・マーリーである。リクエストした記憶はないのだが、とてもうれしい。

何がどうなったかよくわからないまま手術は始まった。最初は光が見える。何度か痛みを感じたので、その時に麻酔をしたのかもしれない。局所麻酔だから、ボブ・マーリーの曲も執刀している先生の声もちゃんと聞こえる。

やがて光は見えなくなるが、まったくの暗闇ではない。目を開けているのか閉じているのかすら分からないが、棒のようなものの影が二本見えたような気がする。音楽はボブ・マーリーがかかり続ける。"Get Up Stand Up"、"I Shot The Sheriff"そして"No Woman No Cry"で手術が終わった。だいたい一時間ぐらいである。

終ったあとは全く目が見えない。執刀した先生から、これからうつむいて生活するように言われる。再び車椅子に乗せられるが、来たときと違い目線はヘソのあたりである。

うつむくのは目玉に入れた空気が上(網膜側)に行くようにするためだそうだ。今、僕の目玉の中には液体と空気が入っている。下を向くと、液体は瞳の方に下り、空気は網膜のある目の奥に行く。この上昇する空気によって貼り直した網膜が目玉に押し付けられてくっつくという寸法だという。イマイチ納得しがたいが、ともかくそういうことらしい。

寝るときもうつぶせでなければならないそうだが、僕の場合はそこまで要求されず、横向きに寝れば大丈夫だと言われた。剥れた位置や大きさの問題なのだろう。うつぶせ寝もトライしてみたが、とても寝られたもんじゃない。

手術直後は目玉の中の空気が多いため何も見えないが、日が経つと自然と空気が減っていく。するとどうなるか。正面を見ると視界に水平線が現われるのである。
手術後数日の見え方
この水平線は文字通り水平線だから、目や頭を傾けても水平を保つし、左右にふるとプルプルと動く。今なら家の傾きもすぐにわかりそうだ。ちなみに網膜には上下逆に映るので、ボケている方(下)が空気である。

目玉の中の空気は次第に減っていくので、それに従い水平線も下がっていく。一週間ほどで視界の三分の一ぐらいまで下がり、下を見ると円形の気泡に見える。僕の場合、一週間で退院できたが、そのとき下をみるとこんな感じに見えた。
手術後一週間見え方
今はこの気泡がさらに小さくなっている。小さくなるとレンズの効果がでるのだろう。円形の中に見える画像は、虫眼鏡を通して見たように大きくはっきり見える。

気泡が小さくなると、ちょっと頭や目を動かしただけでプルプル動くので、とても邪魔くさい。前の方を見ると、今度は視界の下の方でプルプル動いている。目玉の中にスライムを飼っている感じである。

つづく