両親と僕と妻の四人で、父の故郷、滋賀県長浜市に行ってきた。滋賀県といえば琵琶湖、琵琶湖といえば淡水魚である。鮒寿司・小鮎やモロコの佃煮・エビ豆など、淡水魚を使った料理がたくさんある。

どれもお土産に最適(鮒寿司は通向きだが)なのだが、土産物屋で買うとけっこうなお値段がする。そこで伯母にいい店を紹介してもらった。スーパーマーケットに隣接していて広大な駐車場もあり、土産物屋よりずっとリーズナブルだ。長浜でお土産を買うならここをオススメする。

マルマン

この店、佃煮や鮒寿司など調理済みの魚が買えるばかりか、琵琶湖や姉川で捕れた生の淡水魚も売っている。地域住民はここで材料を買って、自分で調理するらしい。

例えば鮒。
鮒
モロコ。
もろこ
ほかにもいろいろある。残念ながら小鮎はまだ解禁されていなかったので、すでに佃煮になったものしかなかったのだが、氷魚を見つけた。氷魚は鮎の稚魚である。その名の通り透き通っていて美しい。
氷魚
この魚、以前から本物を見たいと思っていた。というのは、『宇治拾遺物語』79話に出てくる魚だからである。

『宇治拾遺物語』第79話「或僧、人の許にて、氷魚盗み食ひたる事」
ある僧がある人のもとへ行った時、酒の席で氷魚が出た。主人が小用で席を外し、帰ってくると氷魚がずいぶん少なくなっている。主人は不思議に思いつつ僧と話していると、僧の鼻から氷魚が出ている。主人が「お鼻から氷魚がでているのは、どういうことですか?」と聞くと、僧は「このごろの氷魚は目鼻から降ってくるものですよ」と答え、一座爆笑となった。
何かの拍子に米粒が鼻から出たことはあるが、魚が出たことはない。これはどんな魚だろうと以前から思っていたのである。

実際見てみると、透き通った小さな魚で、イワシの稚魚の生しらす(高知でいうドロメ)とよく似ている。しらす同様、釜揚げにして食べるらしい。塩水で茹でるだけだから、おそらく僧が食べたのもこれだろう。

ヒウオの釜揚げ:cookpad

調理された氷魚は写真でみるかぎり生よりは小さく、釜揚げしらすと同じぐらいの大きさのようだ。この大きさなら鼻から出てきても不思議はない・・・と思ったのだが、よくよく考えてみると、何も鼻から出る必要はない。

そもそも、くしゃみでもしない限り、食べたものは鼻からは出てこない。そんな記述はないから、逆に慌てて食べたのが鼻に入り、主人の目から見るとあたかも鼻から出たように見えたと解釈した方が自然だろう。

そう考えると、主人不在時の僧の行動が目に見えるようだ。鼻に入るぐらいだから、手ですくうなどして、自分の鼻に入ったのにも気づかないぐらいの、ものすごい勢いで食べたのだろう。僧侶だから酒も魚もダメなはずだが、人の見ていない間にこの勢いで食べるのが面白いのである。

なんだかドリフのコントで志村けんがやってそうだが、そう解釈すると「このごろの氷魚は、目鼻より降り候ふなるぞ」というヘンな言い訳もよりおかしみを増してくる。