唐鏡』が完成し、『醒睡笑』もあと一歩で終わる。

ここのところ長い作品が続いたので、なるべく短くて読みやすいのをやりたい。というわけで、『一言芳談抄(いちごんほうだんしょう)』にした。

一言芳談抄:やたナビTEXT


底本は国会図書館蔵の慶安元年版本で、ちくま学芸文庫『一言芳談』(小西甚一・筑摩書房・1998年2月)の底本でもある。現存する伝本で一番古いらしい。

『一言芳談抄』は中世の高僧の言葉を集めたものである。「一言」というとおり短いものが多いが、高僧の言葉だけあってなかなか含蓄に富んでいる。『徒然草』98段に引用されたものが有名である。
『徒然草』第98段:やたナビTEXT
尊き聖(ひじり)の言ひ置けることを書き付けて、一言芳談とかや名付けたる草子を見侍りしに、心にあひて思えしことども。
  • 「しやせまし、せずやあらまし」と思ふことは、おほやうは、せぬはよき也。
  • 後世を思はん者は、糂汰瓶(じんだがめ)一も持つまじきことなり。持経・本尊に至るまで、良き物を持つ、よしなきことなり。
  • 遁世者は、なきにことかけぬやうをはからひて過ぐる、最上のやうにてあるなり。
  • 上臈は下臈になり、智者は愚者になり、徳人は貧になり、能ある人は無能になるべきなり。
  • 仏道を願ふといふは、別のことなし。暇(いとま)ある身になりて、世のことを心にかけぬを第一の道とす。
このほかもありしことども、覚えず。
これを読むと、仏教の話ばかりではないことが分かる。

とくに最初の「「しやせまし、せずやあらまし」と思ふことは、おほやうは、せぬはよき也。」というのは、今の政治家の肝に銘じてやりたい。