原稿用紙に文章を書く場合、行頭に句読点や括弧の終わりを書いてはいけないというのは、小学校で習う原稿用紙の書き方の基本である。印刷物では字間を変えたり余白に入れたりして、句読点などの約物が行頭に来ないようにする。これを禁則処理という。

そうしないと読みにくいから、ルール以前の習慣だと思っていた。ところが、現在翻刻している『一言芳談抄』の版本はなぜか句点が行頭にある。現代の活字と違ってまるごと版木を彫るのだから、句点を行末に入れるのはそれほど難しいことではないはずである。
行頭に。
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/2583391/1/15
ここだけで三回も連続して行頭にあるのでも分かるように、この本に限っては珍しくはない。

では、行末の句点はないのかと思ってすべて確認してみたところ、わずかに二箇所だけ見つかった。そのうちの一つ。
行末に。
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/2583391/1/18
二箇所あるのだから行頭にこだわりがあるわけでもないようだが、数からすると圧倒的に行頭の方が多い。

句点のある版本をあまり扱ったことがないので、これがよくあることなのか、なぜこうなっているのか分からないが、確実に言えることは、

これは読みにくい

ということである。ない方がまだまし。