というわけで(西遊記ブームの時代)Amazon Prime Videoで『飛べ孫悟空』を見た。ドリフターズのメンバーが人形劇で出てくるアレである。

『飛べ孫悟空』:Amazon Prime Video

これはすごい!もしかしたら今の若い人が見たら面白くないかもしれない。でもすごさは伝わるんじゃないだろうか。

『飛べ孫悟空』は『西遊記』を元ネタにした人形劇である。当然、三蔵法師御一行が主役なのだが、問題はドリフのメンバーが5人だというこだ。まず、玄奘がいかりや長介なのはいうまでもない。猪八戒が高木ブーなのも決まり。沙悟浄が仲本工事も順当だろう。ここまでは自動的に決まる。

問題は孫悟空。人気だった加藤茶・志村けんのいずれかということになるが、どちらかが悟空だともう一人は馬の玉竜ということになる。加藤茶や志村けんが馬なんて「役不足」の用例に使えるぐらい役不足だ。しかも当時のドリフには、奇声を上げさせたら日本一、6人目のメンバーともいわれたすわしんじがいる。役不足以前に玉竜(『飛べ孫悟空』での役名は「うま」)も埋まってしまった。

そこで、『飛べ孫悟空』ではオリジナルキャラ「カト」を作った。加藤茶演じるハゲズラで酔っ払ったオッサンのアレである。紹興酒の瓶を持っていることだけが唯一中国っぽい。

キャラクターがこうだから、ストーリーはもっとめちゃくちゃである。一応金角・銀角とか火焔山とか『西遊記』を翻案した話もあるのだが、ほとんどは全くのオリジナルで、いつの間にか天竺通り越して古代ギリシアに行っていたり(しかもなぜかピンクレディーがギリシアロケしている)、絶海の孤島に漂着したり、クリスマスにサンタクロースとコラボしたり、ここまでくれば清々しいほどのデタラメぶりだ。

しかし、キャラクターやストーリーはデタラメでも、通して見ると大真面目に作っているのが分かる。まず、これはよくできた人形劇であるだけでなく、本格的なミュージカルである。あらゆるジャンルの曲を替え歌にして、それが見事に場面にマッチしている。作り手に相当な音楽的教養とセンスがなければあれはできないだろう。

映像も同様で、人形がよくできているだけではなく、実写をまぜたり、凝ったセットを使ったり、特殊効果を使ったりして非常に手がこんでいる。

ゲストもやたらと豪華で当時活躍していた芸能人のほとんどが出ている。もちろん声優としての登場だが、なぜかアイドルだけは意味もなく実写で顔を出すのがお約束だ。なお、どんな人が出ているかは、Wikipediaの記事を見てほしい。
ヤンマーファミリーアワー 飛べ!孫悟空#ゲストの役名

他にも、「小島一慶このころからこういう芸風か」とか、「ピンクレディーいくらなんでも出過ぎだろ」とか、「トライアングル(最初はキャンディーズJrとクレジットされているが、途中キャンディーズファンの猛烈な反対にあい改名)意外とかわいいじゃないか」とか、「あのねのね(今回の都知事選に出た清水国明と原田伸郎のユニット)歌がくだらなさすぎて途中でリストラされてやんの」とか、「ニンニキニキニキってエンディングテーマじゃなかったんだ」とか、限りなく見どころがあるので、ぜひ74回通してご覧になることをオススメする。