パリオリンピックで活躍が期待されていた体操の宮田笙子選手が、未成年者であるにもかかわらず喫煙・飲酒を行ったことが判明し、代表を辞退することとなった。これについて賛否両論あるが、否の方、つまり煙草くらいで代表辞退は重すぎるんじゃないかという方は、気持ちはよく分かるが時代錯誤である。

喫煙者なら気づいていると思うが、世の中の喫煙に対する風当たりは年々強くなっている。とくに都会では、喫煙できる場所を探すことが難しい。それだけでなく、喫煙に対する意識も変わってきている。

煙草に対する意識は分かりやすくいえば違法薬物に近づいている。当然、若い人たちにとって、僕たちが思っている以上に縁の遠いものになっている。ある意味で違法薬物よりも縁遠いものかもしれない。

値段は昔よりずっと高くなっているし、昔みたいに吸っていてカッコイイとも思われない。違法薬物のように気持ちよくなるわけでもハイになるわけでもない。ただ煙草くさくなって人に嫌われるだけなので、喫煙は若い人にとって何のメリットもないものになっている。

一方でスポーツと喫煙はなぜか相性がいい。僕は職業柄体育科教員との付き合いがあるが、昔は体育科教員の喫煙率が非常に高かった。喫煙室では体育の先生数人と僕だけが煙草を吸って雑談しているなんてことがよくあった。はるか昔に教員採用試験を受けた時などは、明らかに体育科の試験会場の前の灰皿だけが山盛りになっていた。自分のことは棚に上げて「保健を教えるのに、これでいいのか?」と思ったものだ。

しかし、今は学校も校内での喫煙が禁止になり、だれがいつどこで煙草を吸っているのか分からない。たぶん、体育科教員の喫煙率も下がっているだろう。スポーツと喫煙の組み合わせは昔のことと思っていた。

そんな中でこのニュースを聞いたので驚いた。どのように発覚したのか分からないが、よもや好奇心で人からもらって一本吸ったら、たまたま見つかったというわけではないだろう。やはり置かれていた環境で喫煙・飲酒が常態化していたとしか考えようがない。いまだにスポーツの世界と喫煙の親和性が高いらしいことが不思議である。

実のところ僕はオッサンだから、「未成年とはいえ19歳だし、辞退までせずとも」という気持ちもないではない。しかしそれは喫煙が身近な時代の価値観である。しかも彼女は順天堂大学スポーツ健康科学部に在学している。「健康科学部」で喫煙では、出場辞退はやむをえないだろう。