古活字本『伊曾保物語』の電子テキストを公開しました。
古活字本『伊曾保物語』:やたナビTEXT
いつもどおり、翻刻部分はパブリックドメインで、校訂本文部分はクリエイティブ・コモンズライセンス 表示 - 継承(CC BY-SA 4.0)で公開します。
『伊曾保物語』は江戸時代初期に刊行された『イソップ物語』の翻訳で、本邦初のヨーロッパ文学の翻訳になります。『イソップ物語』の翻訳にはローマ字で書かれた『エソポノハブラス(天草本伊曾保物語)』が有名ですが、これとは別の本になります。
別の伝本に万治二年版本があり、こちらには挿絵が入っています。イソップが長屋のご隠居みたいだったり、古代ギリシャ人がチョンマゲ野郎になっていたり、セミがゴキブリにしか見えなかったりと、なかなか面白いので、挿絵に該当する説話に挿入し、挿絵を概観できるギャラリーを作ってみました。
『伊曾保物語』は三巻からなり、冒頭から中巻9話までがイソポ(アイソーポス・イソップ)の伝記、それ以降は寓話集になっています。
前半の伝記は次のような内容です。戦乱により奴隷の身分となったイソポが、シヤントという賢人に買われます。イソポは弁舌によりシャントの危機を何度も助けますが、うまいこといいくるめて自由の身を得、得意の寓話を使って王にアドバイスをするようになります。その後、イソポは各国を遍歴し、いろいろな国の王に「よき道(道徳)」を説きますが、デルホス(デルポイ)という島に至り悪人に殺されてしまいます。
イソップは多くの辞典で古代ギリシャの寓話作家と書かれていますが、この伝記を読む限りでは寓話作家というよりは政治コンサルタントに近い印象を受けます。各国を遍歴して道徳を説いたというところは孔子を想起させます。ちなみに、イソップは紀元前620年ごろ、孔子は紀元前552年ごろの生まれで、生きた地域は違いますがほぼ同じ時代の人です。
後半は有名な寓話集です。各話は寓話の後に教訓という構成で、あとの方になるほど仏教説話っぽい感じになってきます。
登場人物を動物にするというのは画期的な工夫です。動物が持つ個性により、古代ギリシャと江戸時代の日本、そして現代の日本と、どの時代のどこの人が読んでも理解できる普遍性があります。日本にもたらされた最初のヨーロッパ文学が『イソップ物語』というのは、そのような強い普遍性によるものでしょう。
イソップの寓話は子供のころに読んだきりでしたが、今読むとなかなか考えさせられるものがあります。是非ご一読ください。
古活字本『伊曾保物語』:やたナビTEXT
いつもどおり、翻刻部分はパブリックドメインで、校訂本文部分はクリエイティブ・コモンズライセンス 表示 - 継承(CC BY-SA 4.0)で公開します。
『伊曾保物語』は江戸時代初期に刊行された『イソップ物語』の翻訳で、本邦初のヨーロッパ文学の翻訳になります。『イソップ物語』の翻訳にはローマ字で書かれた『エソポノハブラス(天草本伊曾保物語)』が有名ですが、これとは別の本になります。
別の伝本に万治二年版本があり、こちらには挿絵が入っています。イソップが長屋のご隠居みたいだったり、古代ギリシャ人がチョンマゲ野郎になっていたり、セミがゴキブリにしか見えなかったりと、なかなか面白いので、挿絵に該当する説話に挿入し、挿絵を概観できるギャラリーを作ってみました。
『伊曾保物語』は三巻からなり、冒頭から中巻9話までがイソポ(アイソーポス・イソップ)の伝記、それ以降は寓話集になっています。
前半の伝記は次のような内容です。戦乱により奴隷の身分となったイソポが、シヤントという賢人に買われます。イソポは弁舌によりシャントの危機を何度も助けますが、うまいこといいくるめて自由の身を得、得意の寓話を使って王にアドバイスをするようになります。その後、イソポは各国を遍歴し、いろいろな国の王に「よき道(道徳)」を説きますが、デルホス(デルポイ)という島に至り悪人に殺されてしまいます。
イソップは多くの辞典で古代ギリシャの寓話作家と書かれていますが、この伝記を読む限りでは寓話作家というよりは政治コンサルタントに近い印象を受けます。各国を遍歴して道徳を説いたというところは孔子を想起させます。ちなみに、イソップは紀元前620年ごろ、孔子は紀元前552年ごろの生まれで、生きた地域は違いますがほぼ同じ時代の人です。
後半は有名な寓話集です。各話は寓話の後に教訓という構成で、あとの方になるほど仏教説話っぽい感じになってきます。
登場人物を動物にするというのは画期的な工夫です。動物が持つ個性により、古代ギリシャと江戸時代の日本、そして現代の日本と、どの時代のどこの人が読んでも理解できる普遍性があります。日本にもたらされた最初のヨーロッパ文学が『イソップ物語』というのは、そのような強い普遍性によるものでしょう。
イソップの寓話は子供のころに読んだきりでしたが、今読むとなかなか考えさせられるものがあります。是非ご一読ください。
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