Xでしょうもないことをポストしたら、バズっちゃいました。なんと11万いいね。ちょっとびっくりしました。自分でも面白いとは思いますが。

あくまでネタのつもりだったのですが、空海がコケたことを本気にする人も出てきました。これはコケているのではありません。空海の名誉のため、野暮を承知で解説します。

空海が五筆和尚と呼ばれたというのは有名な話で、『今昔物語集』11-9『古今著聞集』293にも見られます。また、『高野大師行状図画』や『高野大師行状絵伝』というタイトルでいくつも絵画化されています。下衆ヤヴァ夫さんが引用しているのはその一つで、このように座って書いているのが普通です。

私が引用した仰向けで書いている絵は、江戸時代に作られた版本の挿絵です。版本とは版木を用いて印刷された本ですから、これまた多く出回っています。私が引用したのは四天王寺大学図書館蔵本です。

高野大師行状図画:国書データベース

本文には次のようにあります。
大師すなはち参内しつつ、左右の手足並に口に五の筆を持て五行を同時に書き給ふに、主上・臣下おどろきあやしむ事かぎりなし。
このように、本文にはどのような姿勢で書いたかまでは書かれていません。空海が座って書いたのか、寝て書いたのかは絵師の解釈によるものです。

手書きの絵の方が先ですから、版本の絵師は座って書く空海を知っていたはずです。彼は座っている空海をわざわざ仰向けにしたことになります。「この状態で座れるわけねぇだろ」と思ったのか、「書いているうちに転んだにちがいねぇ」と遊び心が湧いたのか、それとも単にオリジナリティを出したかったのか、想像すると面白いですね。

ところで、空海は本当に五本の筆で同時に書いたのでしょうか。これはおそらく、5つの書体を自在に書けたというのが曲解されたのだと思います。実際、空海の作品は行書・草書だけでなく、いろいろな書体で書いたものがあります。