最近、Xなどで自称〈理系〉の人が「古文や漢文はいらん」といっているのをよく見る。「古文や漢文はいらん」というのは「古文や漢文は苦手」をカッコつけて言っているだけのことだと思っているので、「ああそうですか」としか思わないが、40年ぐらい前に受験生だったころを思い出すと、別の意味で違和感を覚える。

それは、そのころ古文・漢文が苦手という〈理系〉志望の人に会ったことがないからである。むしろ、現代文の方が苦手だという人が多かった。彼らのいいぶんは「古文や漢文は単語と文法を覚えてそれに当てはめればいいから簡単。現代文はその先を考えなければいけないから難しい」というものだった。

入試の古文・漢文は解釈が問題の中心になるから、文法が分かれば正確な答えが出る。文学史は他の教科同様覚えるだけ。今の言葉でいえば、〈理系〉の人にとって古文・漢文はタイパがよかった。

一方、僕を含めていわゆる〈文系〉の人は文法が苦手な人が多い。たぶん、コンテクスト(文脈)で読むくせがついているからだろう。研究するとなると苦手じゃすまないので、イヤイヤ文法を勉強したが、受験生のころは苦手すぎて〈理系〉の人に聞いていたぐらいである。

時代が変わったと言ってしまえばそれまでだが、それならそれで理由があるはず。昔よりもやることが増えて余裕がなくなったか、古文・漢文の授業が減って理解が追いつかなくなったか、入試にあまり必要なくなったからか、そのへんはよく分からない。

さて、ここまで〈理系〉〈文系〉とカッコ付きで書いたが、これは〈理系〉〈文系〉などと分けるのが嫌いだからである。〈理系〉・〈文系〉は学術用語ではなく受験用語である。こんな言葉にいつまでも囚われず、受験が終わったらさっさと忘れたほうがいい。