トビ(鳶)という鳥は「トンビが鷹を生む」とか「トンビに油揚げさらわれた」とかロクな諺に使われないが、古典でもあまりいい役回りを与えられていない。
例えば、『今昔物語集』には、「糞鳶」が仏に化けて人をだましていたとか、天狗の正体が「糞鳶」だったとかいう話がある。ただのトビではない。クソ呼ばわりだ。
トビはタカ目タカ科の猛禽類で、大きさもオオタカと決してひけを取らない。たしかに、オオタカほど恰好よくはないが、鷹の仲間だけに飛んでいる様子はなかなか堂々としている。それに、ピーヒョロロなんてないて悠々と空中を旋回する様子は、牧歌的で悪くない風景だ。
『徒然草』(第10段)にも、後徳大寺大臣(藤原実定)が寝殿に鳶避けのヒモを張っていたのを見た西行が「トビがいるのに何の不都合があろうか。この殿の心はその程度のもんだったんだな」といって、二度とそこには通わなかったという話がある。
トビ避けのヒモというと鳩よけのテグスを思い出す。トビはたしかに群れる傾向はあるが、よけるほどのものでもない。
兼好も理由が分からなかったらしい。「綾小路の宮のおはします小坂殿の棟」に池の蛙を取られるのがかわいそうだという理由で烏避けのひもが張ってあったことを引いて、「後徳大寺にも、どんな理由があったのでしょうか。」なんて言っている。
僕も、ついこの間までは、後徳大寺大臣がトビを嫌う理由が分からなかった。だが、今は違う。
ちょうど、溶連菌で高熱を出す前日のことである。僕は、ヨメと由比ヶ浜を歩いていた。少々腹が減っていたので、浜辺で座って蒲田駅で買ったアンティ・アンズ(Auntie Anne's)のプレッツェルを食べた。
これを袋から取り出し、手に持ってしゃべっていた。手に硬いものが当たったような痛みを感じた瞬間、目の前を黒いものが通り過ぎ、もうプレッツェルは無くなっていた。まわりを見回したが何もない。空にはトンビが悠々と飛んでいる。もう、あいつしか考えられない。
この後、いろいろなところで「トンビに注意」と書かれた看板を見つけた。最近、鎌倉付近ではトンビに油騰げならぬ、弁当をさらわれる事件が多発しているらしい。僕はトビが大嫌いになった。たぶん、後徳大寺大臣も何か盗まれたのだろう。このクソトビめ!

例えば、『今昔物語集』には、「糞鳶」が仏に化けて人をだましていたとか、天狗の正体が「糞鳶」だったとかいう話がある。ただのトビではない。クソ呼ばわりだ。
トビはタカ目タカ科の猛禽類で、大きさもオオタカと決してひけを取らない。たしかに、オオタカほど恰好よくはないが、鷹の仲間だけに飛んでいる様子はなかなか堂々としている。それに、ピーヒョロロなんてないて悠々と空中を旋回する様子は、牧歌的で悪くない風景だ。
『徒然草』(第10段)にも、後徳大寺大臣(藤原実定)が寝殿に鳶避けのヒモを張っていたのを見た西行が「トビがいるのに何の不都合があろうか。この殿の心はその程度のもんだったんだな」といって、二度とそこには通わなかったという話がある。
トビ避けのヒモというと鳩よけのテグスを思い出す。トビはたしかに群れる傾向はあるが、よけるほどのものでもない。
兼好も理由が分からなかったらしい。「綾小路の宮のおはします小坂殿の棟」に池の蛙を取られるのがかわいそうだという理由で烏避けのひもが張ってあったことを引いて、「後徳大寺にも、どんな理由があったのでしょうか。」なんて言っている。
僕も、ついこの間までは、後徳大寺大臣がトビを嫌う理由が分からなかった。だが、今は違う。
ちょうど、溶連菌で高熱を出す前日のことである。僕は、ヨメと由比ヶ浜を歩いていた。少々腹が減っていたので、浜辺で座って蒲田駅で買ったアンティ・アンズ(Auntie Anne's)のプレッツェルを食べた。
これを袋から取り出し、手に持ってしゃべっていた。手に硬いものが当たったような痛みを感じた瞬間、目の前を黒いものが通り過ぎ、もうプレッツェルは無くなっていた。まわりを見回したが何もない。空にはトンビが悠々と飛んでいる。もう、あいつしか考えられない。
この後、いろいろなところで「トンビに注意」と書かれた看板を見つけた。最近、鎌倉付近ではトンビに油騰げならぬ、弁当をさらわれる事件が多発しているらしい。僕はトビが大嫌いになった。たぶん、後徳大寺大臣も何か盗まれたのだろう。このクソトビめ!
