カテゴリ: 賢い消費者2

今年、私にとっては個人的な大きな事件がなく、比較的平穏な一年でした。しかし、社会的にはいろいろなことがありました。中でも一年を通して問題になったのが物価の高騰です。インフレを助長する高市氏の政権になったので、この傾向は来年も続くでしょう。

適度なインフレは経済として普通の状態ですが、日本はあまりにも長くデフレという異常事態にあったのでまったく慣れていません。では私達はどういう対策をとればいいのでしょうか。

まず、インフレとデフレを簡単におさらいすると、

・インフレ→通貨の流通量が増える→通貨の価値が下がる=物の値段が上がる
・デフレ→通貨の流通量が減る→通貨の価値が上がる=物の値段が下がる


となります。ですから、

・インフレ→お金を物に変えた方がいい。
・デフレ→現金を貯めたほうがいい。


となります。

インフレの時は待っているうちに値段が上がるので、買う必要のあるものはなるべく早いうちに買ったほうがいいのです。物に変えるほうがいいとはいえ、食料などを買いだめしても腐るだけです。そこで換金性の高い金や株などに変えることになります。すると需要が増えるので金や株はますます値上がりします。

では借金はどうでしょうか。

・インフレ→自然に借金が目減りする。
・デフレ→自然に借金が増える。


デフレでは放っておいてもお金の価値が高くなったので貯金は有効でしたが、インフレでは逆に借金が有効になります。もちろん金利の問題もあるのでそう単純ではありませんが、ざっくりいうとそういうことです。

私の父は工場で働くごく普通のブルーカラーでしたが、専業主婦の母と子供三人を養い、マイホームまで持ちました。自動車も持っていました。現代では考えにくいことですが、これもインフレのなすわざなのです。

私が子供の頃はインフレで物の値段が上がっていきました。それと同時に賃金も上がっていきました。家は高い買い物ですが、数十年経って借金を返し終わって振り返ってみると、そのころでは考えられないほど安い買い物になっていました。当時の金利は10%近かったにもかかわらずです。

インフレは物の価値が上がることですが人間も物なのです。ですから、通常インフレだと賃金も上がります。しかし、現在のところいわゆる物の値段の上がり方に、賃金の上がり方がついていっていません。社会保障費や税金が上がっていますから、実質的には賃金は下がっています。

インフレですし労働者は減っているので、賃金はこのままでもある程度は上がるでしょう。しかし、人間以外の物よりも価値が上がるかどうかはちょっと難しいと思います。それは労働者が賃金を上げる努力をしていないからです。

賃金を上げる努力とはよく働くことではありません。よく働いたところで雇用主から感謝されるだけです。賃金を上げる努力とは、雇用主と賃金の交渉をし、「賃金を上げないなら働かないぞ」と言うことです。私の父の時代は組合が力をもって交渉していたから、賃金が上がっていったのです。

お金について、今後私達は意識を変えていく必要があります。デフレの時と同じようにしていたら、どんどん貧しくなるでしょう。

さて、今年もあと2時間で終わりです。それでは、よいお年を。
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実は去年からNISA口座で株式投資しています。やってみたところ、これはなかなか難しいなというのが実感です。

NISAとはNISA口座で購入した株式やETFの配当・分配金・売却益が非課税になる制度です。通常、配当・株式ともに20%程度の課税になりますので、たしかにこれはお得です。その代わり年間の投資額が決められています。

私は株式投資歴20年以上になりますが、今までNISA投資はしませんでした。理由は、投資限度額が年間120万円と少なかったからです。この程度で非課税とかいわれてもたかが知れています。昨年から枠が240万円になったのでやってみたというわけです。ちなみに私が買った銘柄は、ドル建てのSP500ETF(VOO)と香港ドル建ての香港証券取引所(0388.hk)です。

さて、なぜNISAは難しいかをお話しましょう。

まず、NISAは非課税である代わりに損失を出せません。例えば一般口座でAという株で50万円利益を出し、Bという株で50万円の損失を出したとします。すると全体での利益は0ですから、課税はされません。しかし、BがNISA口座だとAの利益からB損失を引けないので、Aの50万円に税金がかかり10万円ほど払う必要が出てきます。NISAなのに逆に税金を払わなければならないという怪現象がおきるのです。

つまり、NISA口座では絶対に儲かる銘柄を買わなければならないということです。もちろんそんな銘柄はありませんが、それに近いものはあります。それが人気のSP500やオルカンといったETFです。

しかし、ここに別の問題がでてきます。それは年間の投資枠があることです。SP500やオルカンとて、買うタイミングを間違えると、「いつまでたっても儲からない銘柄」になってしまうかもしれません。

つまり、
買うタイミングを間違えて高値づかみをしてしまった。下がったときに買い増し(ナンピンといいます)しようと思ったらもう枠がなかった。
とか、
「タイミングを逃してしまったら年末になってしまった。投資枠がもったいないから買ったら高値づかみになった」
という可能性が出てくるのです。

一般口座なら、買うタイミングを間違えても、余力があれば下がった時に買い増しできますし、損切しても税金を減らせます。NISAではそうはいきません。つまり、投資機会の自由度が下がるぶんNISAでの投資は難しいのです。

なお、以上のことは積立NISAとは関係ありません。こちらはやったことがないのでよく分かりませんが、この制度は積立のほうがあっているのかもしれません。
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米が高い。だいぶ前に不作だかなんだかといって、新米が出たら下がるはずだとかいっていたのに、下がるきざしがない。買い占めだとか、減反政策がどうのとか、いろいろいわれてはいるが、どうもしっくりこない。

米なんか買い占めしたって限界がある。賞味期限があるし、貯蔵する場所だってタダではない。確実に上がるというわけでもないのに、そんなことするやつがいるはずがない。減反政策にしても、じゃあなぜ今なのかが説明できない。それに減反政策ってのは田んぼを減らして畑にするわけだから、米が高くなるぶん野菜が安くならなければならないはずだが、野菜だって高くなっている。

そもそも、値段があがっているのは米だけではない。あらゆる物の値段があがっている。賃金の上昇が物価の上昇に追いついていないから実質賃金は下がっているそうだが、名目賃金はちゃんと上がっている。

これはもう単純にインフレが原因と考えるほかない。ようするに高いとはいいながら米代が払えるから上がっていくのである。だから短期的な上がり下がりはあるかもしれないが、米の値段がもとに戻ることはないだろう。

インフレとは、市中に出回るお金が増えて、お金の価値が下がることである。お金の価値が下がるから、物を買うのにたくさんお金を払わなければならなくなる。

お金の価値が下がるということは、貯金しているお金の価値も下がるということだ。だから、貯めこむより使ってしまったほうがいいということになる。借金は自動的に減るから、もっと借金して物を買おうとする。すると、ますます市中にお金が流れて、インフレが加速する。みんながお金を使うわけだから景気もよくなる。

日本は景気の悪い時代が長かったから、みんなこの感覚を忘れているが、終戦からバブル崩壊まではずっとこんな感じだったのだ。かつて、ごく普通のサラリーマンが一人で働いて、家族を養い、その上家まで買うことができたのもインフレだったからである。

果たしてそううまくいくかどうかは分からない。賃金の上昇が物価上昇に追いつくかどうかが鍵になるだろうが、労働者がまともに「ゼニよこせ」と言わないのに、そう簡単に賃金が上がるとも思えない。実質賃金が下がりまくって、いよいよ生活できないとなったら「ゼニよこせ」と言い始めるかもしれない。いずれにしても、インフレの現状が好景気の予兆であることは間違いないと思っている。

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今年から新NISAが始まった。相場もいいので、初心者の参入も多い。

それは結構なのだが、いままで株式投資をしてこなかった人が、新NISAが始まった途端始めるというのも、僕からしたら不思議である。はっきりいって、一般口座よりもNISAの方が難しいからである。

一般口座で株式投資を行うと、配当と譲渡益に税金がかかる。譲渡益にかかる税金は20%なのでこれがなかなか痛い。NISAならそれがかからない。それは結構なことだが、実はここに落とし穴がある。

利益に税金がかからないということは、損失が計上できないということである。例えば一般口座で100万円利益を出して、別銘柄で100万円の損失を出すと、利益は差し引き0円になって税金はかからない。儲けがないのだから当たり前だ。ちなみに損失は3年間持ち越せる。

ところが一般口座で100万円の利益を出して、NISA口座で100万円損失を出しても、一般口座の利益からNISAの損失を引くことはできない。一般口座の税金20%を支払わなければならないから、20万円の損失になってしまうのだ。

だからNISAで投資するときは、確実に儲かる銘柄に投資しなければならない。もちろんそんな銘柄は存在しないが、オルカン(全世界株価)やSP500(米国株式の指数)ETFが好まれるのは、長い目でみれば確実に儲かる銘柄に一番近いからである。

ここでもう一つの要素が重要になってくる。買うタイミングである。たしかに、オルカンやSP500は儲かる可能性が高いし、実際今も上っている。しかし、今後どうなるかは誰にも分からない。それが株というものだ。

今が天井で何らかの原因で突然下げに転じることもありうるのだ。しかも、現在は円安で史上最安値を付けている。ドル建てのETFだと、株価は上っているのに儲けがでないとか、株価の下げに拍車がかかるとかいうことになる。

下がったら損切りすればいいかというと、そんなに単純な話でもない。NISAの損切りに節税的な意味がないというだけではない。損切りして更に下がったところを買い戻すのは至難の業なのだ。僕の経験では、マイナスがついたまま我慢して値が戻るのを待つほうが儲かることが多い。かつて邱永漢先生は「株の儲けは我慢料」と言ったが、まったくそのとおりである。

問題はどのくらい待つかだろう。これが分かれば苦労しないが、例えばあのリーマンショックの時高値で掴んでいたとすると、もとに戻るまでに5年ほどかかった。これは特殊な例なので、普通はどんなに高値づかみしても2年も持っていればたいがいもとに戻る。長期投資がいいというのは、そういう意味である。

たしかにNISAは課税されないのが魅力だが、だから初心者向きなのではなく、そのせいでかえって難しいものになっている。さらに、株高と円安で、実は今は投資を始めるには難しい時期でもある。

誤解のないように言っておくが、だからNISAはやめておけなどというつもりは全くない。むしろおおいにやるべきだ。ただ、株式に限らず投資というものは、今は損しても未来に回収するものだという原則を忘れてはいけない。ちょっとマイナスが出たぐらいで損切りするぐらいなら最初からやらないほうがいい。

最後に邱永漢先生の言葉をもう一度繰り返す。

株の儲けは我慢料。
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2月のはじめ、テレビが壊れた。買ってからすでに15年経っている。さすがに買い替え時だろう。

さて、問題はどれにするかである。部屋が狭いので、それほど大きい必要はない。今までのが32インチだから、せいぜいそれより一回り大きい40インチぐらいでいい。4Kは魅力的だが、それぐらいの大きさならフルハイビジョンでも見た感じ大した違いはないだろう。

あとは機能だが、比較するとだいたい似たりよったりである。そんな中、androidTVとかGoogleTV(よく分からんが別物らしい)というのが目に入った。うちは二人ともスマホはandroidだから、これはちょっと面白そうだ。

というわけで買ったのはこれ。
S516シリーズ:TCL

TCLというのは中国の大手テレビメーカーである。22年前、初めて中国自転車旅行をしたとき、様々な宿に泊まったが、当時は星4つ以上だとソニーやSAMSUNG製、3つ以下のまともなホテルはTCL、星ナシの招待所などはどこかで見たようなパチもん臭いメーカー製だった。このようにTCLというメーカーは僕にとっては馴染みがあるのだが、まさか自分が買う日が来るとは思ってもみなかった。

それにしても、テレビも安くなったものだ。前のaquosは10万円以上したと記憶しているが、今回は4万円でお釣りが来た。さすがに15年では技術の進歩もすさまじく、重さや厚さも体感で半分以下、消費電力に至っては169wから75wと半分以下である。

映像は比較していないのでよく分からんが、とくに問題はない。少なくとも15年前のaquosよりはいい。aquosと違いスピーカーが前に付いていないので音質が心配だったが、想像していたより悪くはなかった。

肝心のandroidTVだが、設定が面倒くさいかと思ったが、画面に出てきた指示通りにしたら、スマホとの連携であっという間でできてしまった。ただし、これはスマホがandroidだったからかもしれない。

それから半年使っているのだが、いわゆるテレビは地上波もBSも見なくなってしまった。見るのはYoutubeやamazonプライムビデオ、ABEMAなどである。アプリを追加すれば他にもいろいろなものが見られる。あまり実用的ではないが、一応インターネットブラウザもインストールできる。

それまでもChromecastを使っていたので、テレビでネットのコンテンツを見ることはできた。この場合、スイッチを入れて最初に出てくるのはテレビ画面だから、あくまでテレビが主、ネットは従という主従関係が成り立っていた。なんとなくスイッチを入れて見るのはテレビだったのだ。

しかし、スマートテレビになって、ネットの動画とテレビが対等になった。スイッチを入れると、アプリの選択画面(TVにすることもできるが)が出てくる。テレビは多くのコンテンツの一つに過ぎない。そして、よほどみたい番組がない限りテレビは選択しない。

今は、朝の出勤前に時計がわりにテレビをつけるだけである。
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僕と同年代のある人が大手金融機関からお金を借りることになった。これを元手にして事業をやって、その収益で返済する寸法である。

僕の聞いたところ、リスクの高い事業ではなく、担保も十分にある。月々の返済が不可能になることはまずない。具体的な話を百人聞けば百人が「それは固いですね」というだろし、僕もそう言った。

その人に負債はない。それなりにまとまった金融資産もある。街金で金を借りたこともなく、クレジットカードも延滞したことがないと言う。ことお金に関して言えば、誰がどう見ても優等生である。

ところが、その金融機関は金は貸してはくれるものの、ある条件を付けた。それは彼にとってとても飲むことのできない条件だったらしい。今のところ保留になっているが、向こうがその条件を取り下げない限り、いかに金利が低くてもその金融機関から金を借りる気はないと言っている。

金融資産があるなら、金を借りずにそれを使えばいいと思われるかもしれない。実際、全力で株だの何だの売っぱらえばなんとかなるらしい。しかし、ちょっと考えてみてほしい。

その場合、持っている金融資産はかなり目減りする。その状態で、もし突然まとまった金が必要になったらどうだろう。病気でも災害でも、そんな場面はいくらでも考えられる。そういう場合、当然どこからか借金をしなければならなくなる。

この借金は金を生むための借金ではないから、まともな金融機関から借りるのは難しいだろう。金利も当然高くなる。今回の借金は借りる用途が決まっていて、金を生むための借金だから、借りやすいし金利も安いのだ。

借金というと金がないから借りるというイメージがあるかもしれないが、金があるときに借りる借金もある。いや、実際にはそちらのほうがずっと多い。今は金利が安いのだから、金を借りて金利以上に稼ぐのはさほど難しいことではない。よくテレビなんかで「うちは無借金経営です!」とか言ってドヤ顔している社長がいるが、そんなのは自分は無能だと言っているのと同じである。

それはともかくとして、金融機関が条件をつけた理由で考えられるのは、彼が非正規だということらしい。僕も非正規だが、今まで金や担保物件さえあればいいと思っていた。しかし、金融機関からすると違うようだ。

おそらく、彼が正規の公務員とか大企業の正社員だったら、無条件で金を貸しただろう。しかし、それが一体何の保証になるのだろうか。そういう職業でもクビになることはあるし、会社が潰れることもある。もちろん、辞めたから返せとは言えないから、金を借りた途端に勝手に退職するかもしれない。

つまり、この金融機関は事業内容や個人の返済能力は全く評価せず、何の信用もおけない就業形態でしか評価していないのである。実にお手軽なことだが、そんなので激動の世界経済に立ち向かえるのだろうか。僕は以前から日本の金融機関を信用していないが、その気持ちはますます強くなった。

なお、現在彼は他の金融機関を当たっているらしい。
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僕は昭和43年生まれのいわゆるバブル世代である。卒業してすぐ大学院に進学しその間に就職氷河期に突入したので、いわゆる就職での恩恵は受けていないがそのころの状況は分かる。

バブル世代は羨まれることが多い。しかし、ほとんどが誤解である。まず、教員の採用が氷河期以降減ったという。これは完全な間違いで、教員の採用が減ったのは就職氷河期以前からで、社会の経済状況が理由ではない。

数の多いバブル世代が就学するとともに、元祖ベビーブーマーの団塊の世代が教員になった。このころは需給ともに多かったのだが、バブル世代が教員になる時代には少子化で需給バランスがくずれた。つまり、供給(教員・教員志望者)は多いのに需要(児童・生徒)は少なくなってしまったのである。

しかも数の多い団塊の世代の教員はまだ引退する年齢ではない。こうして教員の世界は就職氷河期に先んじて氷河期に突入していたのである。当時、東京都の高校国語は一人しか採用されず、受験生の数=倍率となっていたのをよく覚えている。

しかし、一般企業は引く手あまただったから、氷河期世代に比べればずっとましだろう。僕の周りでも教員は諦め一般企業に就職した人が多かった。しかしよく考えてほしい。就職はしたら終わりではない。

バブル世代が就職してしばらくしてバブルは崩壊、会社はボコボコとつぶれた。当時は胡散臭い新興IT企業が注目を集めていた時代で、なんとかバブル崩壊の影響は免れても、続くITバブル崩壊でどんどん消えていった。

もちろん、そのスタートすらまともに切れなかった氷河期世代の人たちには同情する。しかし、バブル世代だって、たいがいはロクな目にはあっていない。羨むのはお門違いである。

一番の問題は、時代が変わったのにバブル以前のシステムを変えなかったことだろう。経済は波があるものだから、その状況で就職難の年があるのは仕方がない。しかし、一度機会を逸しただけで取り戻せないのはどう考えてもおかしい。また正規と非正規であまりに待遇が違うのもおかしい。

他の世代を羨んでいたって何も変わらない。言うべきことは「銭よこせ!」である。
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『沙石集』にこんな話がある。

ある男が虫歯になって、歯科の技術を持つ唐人のところへ抜いてもらいに行った。唐人は2文で抜くというが、男はケチなので1文にまけろという。ムカっときた唐人、1文では絶対に抜かないと譲らない。男は、「では3文出すから二本抜け」といい合意。虫歯と健康な歯を抜いてもらった。

南都に、歯取る唐人ありき。ある在家人の、慳貪にして、利簡を先とし、ことにふれて商ひ心のみありて、得もありけるが、「虫の食ひたる歯を取らせん」とて、唐人がもとへ行きぬ。

一つ取るには、銭二文に定めたるを、「一文にて取りてたべ」と言ふ。少分のことなれば、ただも取るべけれども、心ざまのにくさに、「ふつと一文にては取らじ」と言ふ。やや久しく論ずるほどに、おほかた取らざりければ、「さらば、三文にては二つ取り給へ」とて、虫も食はぬ、よに良き歯をとりそへて、二つ取らせて、三文取らせつ。心には利分とこそ思ひけれども、傷なき歯を失ひぬる、大きなる損なり。
このあと『沙石集』お約束の、やたらと長い説教がつづく。かいつまんで言えば、歯を抜いた人のように人は目先の利益にとらわれて菩提という後世の宝に気付かないと言う。

人は目の前の得には気付きやすいが、損には気付きにくいものだ。この説話は典型的で、ケチ男はケチゆえに得をしたつもりで損をしている。しかし、歯を失って損したことには全く気づいていない。得だけが見えて、損が見えていないから、これでも案外幸せなのかもしれない。

損には気づきにくい仕組みは簡単である。A店で1000円の物を買ったとしよう。数件先のB店では、全く同じ物が半額の500円で売っている。A店とB店の両方見た人は、間違いなくB店で買うだろう。この場合、B店で買って500円得をしたことにはすぐに気付く。得には気付きやすいのだ。

ところが、先にA店で買った人が、B店を見ることはない。見れば損したと感じるはずだが、普通は買った後で同じものを売る店を見ることはないから、自分が損したことには気付かない。ことほどさように、人は損には気付きにくいものなのだ。

理論上は、毎回A店とB店を比較すれば損しないのだが、実際の買い物で毎回そんなことはできない。比較する時間が無いこともあるし、A店の隣に同じものを売っているB店があること自体を知らないかもしれない。損したと分かると嫌だという心理が働くから、買った後でB店に気付いても、わざわざ見ることもない。

損をしないためには、買い物の際よく考えるしかない。買った後も考えて、次は損をしないようにする。しかし、損に気づかないのは幸せなことでもある。どちらがいいかは難しい問題である。
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投資はプロには絶対に勝てないのだから、素人は手を出すべきじゃない。これはよく聞く話だ。素人投資家の僕としては、これは一面では正しいが、基本的には間違っていると思っている。

たしかに、プロ(証券会社やヘッジファンドなど)は、手に入る情報の量も違うし、相場に向き合える時間も違う。その点ではたしかに素人はプロのカモにしかならないように思える。

しかしそれはプロと同じ土俵で戦った場合のことだ。素人にはプロがどうやってもかなわない強みがある。

プロは絶えず成績が問われるから、◯月◯日までに稼がなければならないという期日がある。素人にはそんなものはない。極端にいえば素人投資家が死ぬまでに儲ければいいのである。つまり素人の強みは時間である。

素人でも期日を作ってしまうと、プロと同じ土俵に立ったことになるから、負ける可能性が高くなる。短期で相場を張ったり、信用取引したりして負けるのはそのためだ。もちろん、プロ並に情報を集め、プロ同様に相場に張り付いてプロに勝つ素人もいるが、そんなのはもはや素人とはいえないだろう。

考えてみると、これは投資の世界だけの話ではない。何となくアマチュアはプロには勝てないと思われがちだが、アマとプロの差なんて納期があるかないか以外にはない。

納期を守って一定のレベルで何かをするのは、よほど実力がないとできないことである。そこがプロのすごいところではあるが、納期を守るためにはどこかで妥協しなければならないだろう。

アマチュアは妥協する必要がない。死ぬまでが納期である。どこまでも自分が満足するまでやればいい。そんな気持ちでやたナビTEXTを作っている。
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投資の話(その3)の続き。

前回、株式投資をするなら米国株を中心にして長期的に投資すべきだという話を書いた。長期投資の場合、銘柄選びが重要である。では、どんな銘柄を選べばよいのだろうか。

初心者は難しいことを考える必要はない。長期投資をするのだから、長期的に株価が上がっている銘柄を買えばいいのである。それには20年以上の長期チャートを見て、右肩上がりの株を買えばいい。

一番わかり易いのがETFである。ETFは投資信託の一種で、個別の株と同じように株式市場で買える。その株価(?)は何らかの指数(株式指数や金価格など)に連動している。一番メジャーなETFである、SP500指数(米国株の指数)に連動しているETF($SPY)の、2000年から現在までのチャートを見てみよう。
SPY
一番左のボコっと下がっているのがITバブル崩壊で、次がリーマンショックである。そういう下落局面が何度かあっても、20年間を均してみると右肩上がりになっているのが分かる。こういうチャートを描いていれば、万一何らかの理由で暴落しても、長期で持っていればちゃんと利益が出る。

個別株でも、同様に右肩上がりのチャートになっていれば安心だ。例えば、みんな大好きアップル($AAPL)。
apple
イヤイヤ仕事で使っているマイクロソフト($MSFT)。
MSFT
アリエールでしょのP&G($PG)。
P&G
最後のP&Gはアップルやマイクロソフトと比べると上がった量は少ないが、それでも確実に右肩上がりになっているのが分かる。米国株でこういう銘柄を見つけるのは非常にたやすい。

それでも米国株は怖いというあなたのために、日本を代表する時価総額1位のトヨタ自動車のチャートを見てほしい。
toyota
右肩上がりと言えなくもないが、先ほど挙げた米国株と比べて上がり下がりが激しい。残念ながら我慢して長期で持っていれば大丈夫とは言いにくい。

もちろん、日本株にも右肩上がりの株はある。例えば、現在トヨタに次いで時価総額二位のキーエンス。
Keyence
チャート的には、これならよさそうだ。

ところが、東京株式市場には単元株というものがあって、キーエンス株の場合100株単位でしか買えない。キーエンス株は現在57,530円なので最低5,753,000円必要になる。二単元買ったら11,506,000円、買えるかそんなもん。

それが米国株なら1株から買える。アップルなら$150(¥16,548)、マイクロソフトなら$288(¥31,772)、P&Gなら$140(¥15,445)あれば買える。1株でも100株でも123株でも買える。つまり、自分の資金に合わせて買うことができるのである。

米国株はドル建てなので、日本円に直すと為替による変動があるのが欠点だが、それを上回る利点がたくさんある。そんなわけで、株式投資を始めるなら米国株から始めることをオススメする。
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