博物館教育とは
2月の市民学芸員の日は、統括学芸員さんによる、博物館教育(ミュージアムエデュケーション)についての講義でした。
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博物館教育には、
・展示
・図録や研究報告の刊行
・講演会
・体験学習とワークショップ
などがあります。なかでも、体験学習とワークショップは近年注目されているとか。
でも、ただの体験学習やワークショップでは「教育」とは言えません。「気づき」がなければ、単なる「工作体験」になってしまうし、博物館で実施する意味がありませんから。博物館教育は、学校で行われる「知識の伝授」では生まれない、「主体的な気づきや学びの創出」を目指しているのです。

博物館でのワークショップといえば、どんなことを思い出しますか?
私がよく見かけるのは勾玉作りかな。ロウ石を削って勾玉を作る体験で、できあがった勾玉をペンダントにすると嬉しいんです。でも、そこにどんな「教育」があるのか、考えたことはありませんでした。体験者が、勾玉作りを通して何も気付かず、学ばなければ、「博物館教育」としては残念だってことになります。
でも、たとえば、勾玉作り体験を通じて、「綺麗な勾玉を作るのって案外難しいな。古代の職人さんはもっと硬い石でこの作業をしたんだから、もっとたいへんだったろうな」と考えれば、それは気づきになるでしょう。
それだけでもいいんだそうです。「わ~いきれいにできた」だけか、「綺麗な形に削るため、弥生人はどんな工夫をしたんだろう?」と考えるかの差は大きい。一つでも、学びや発見、気づきがあれば、それが糸口になって、知識への欲求につながるかもしれません。

逆に考えれば、「工作」を「学び」につなげる方法はいくらでもあるってことにも気づきます。たとえば、
・勾玉にどんな種類があるのかを知って貰う。
・勾玉の製作技術を知ってもらう
・使われる石の種類を知って貰う
・形の意味を考えてもらう
・古代の装飾と現代の装飾の違いを考えてもらう
・古代の祈りと現代の祈りの違いを考えてもらう
などの一工夫を入れれば、ちゃんと学びにつながるわけです。

私は、「勾玉はお守りとして使われたと考えられています。いろんな考え方があるけれど、その一つは、牙の模型だっていう説で、命をくわえ込んで離さないという意味があるそうです。それじゃあなたなら、何の形をまねしてお守りを作りますか?」と、オリジナルのお守りを作ってもらうと面白いんじゃないかって考えたんですが、小学生には難しいかも(^^;)
「誰でも参加できる」も、大切な要件なんです。

ちなみに、体験学習とワークショップの違いは、ワークショップの方が対話的な学びにつなげる意味合いが強いんだそうですよ。

学びを創出するポイントはテイクホームメッセージ
学びのある体験学習・WSを作るコツは、
・明確なテイクホームメッセージ
・目的を達成するプログラムデザイン
・フィードバッグをもとに改善を図る
・実施者が目的を理解している
の4点が大切だとか。
テイクホームメッセージとは、家に持って帰ってもらいたいメッセージ。つまり一番伝えたいことです。それがはっきりしていれば、どんな作業をしてもらうかの方向性も決まりますし、フィードバックで改善する際もブレません。
忙しい博物館では、4つめの「全員の理解」がなかなか難しいそう。大きなイベントの際にはボランティアのみなさんも協力されますから、余計でしょうね。
ただ、「絶対にメッセージが必要」とコチコチに考えてしまうと、体験学習もワークショップもプレッシャーになってしまいます。
それに、博物館には多用なニーズがある。何が学びたい人もいれば、珍しい展示物を見たい人、写真を撮りたい人もいます。
遊びたくて来ている子どもに、「聞かないと遊ばせない!」なんて言っちゃったら、次から来てくれなくなるでしょう。特に年少の子ども相手なら、まず楽しんでもらうことを大切に考えて、ある程度の信頼関係ができてきたら、教育を考えるのでも良いかもしれません。楽しければ興味を持つかもしれませんから。

以前、銅鐸パズルの体験をお手伝いしたとき、パズルを崩す前に、「絵を覚えてね」と言いながら、銅鐸の絵柄を説明したのですが……あきらかにそわそわしちゃう子もいましたもんね(^^;)
そこで無理に「聞け!!」と言ってはいけないわけです。
グッと我慢して、
「じゃあ、もうパズルやっちゃおう」
と笑顔になるのが大人なのですよ。

ワークショップの内容も同じです。満足のためには、楽しんで満足するワークショップも必要。ただ、博物館ならではの体験をしてもらうという視点は、忘れずにいたいものだと思いました。

子どもたちに人気の「火おこし体験」にも、いろんなテイクホームメッセージがあります。
どんなことを知ってもらいたいのか、学芸員さんの説明を聞きながら、考えます。
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「博物館教育」なんてしかつめらしく言ってみても、伝える側が楽しまなくちゃ、受け取る側も楽しくないに決まってます。
講師の学芸員さんのこの表情を見て、
「まず自分が興味を持たなくちゃな」
と、改めて思いました。

楽しんでるな~(笑)


火おこし体験で気づくこと
その後、実際に火おこし体験のデモンストレーションを行いました。
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説明をふくめた体験時間は15分ほどでしたが、体験を通して発見したのは、
・火鑽臼(ひきりうす)の材質は杉。柔らかい材木の方が、摩擦係数が高くて火がつきやすい
・火鑽杵は見つかっていない。使い捨てだろう。
・だから、どういう風に摩擦を起こしたかは推測でしかない。
・慣れればもみ鑽でも5分で着火する。
・舞鑽につかう道具は弥生時代などではみつかっておらず、あっても平安時代以降だろう。
・弓鑽に使うような短い弓は縄文時代から見つかっているけれども、火起こしの道具というよりは、玉に穴をあけるための穿孔道具かも。
・火鑽臼の穴の前に切り込みがなければ酸素が供給されないので、火種はできない。
などなど。

ちなみに火鑽臼の切り込みってのはこれ。
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ね?
体験は「気づきの宝庫」でもあるのです。
でも、体験した多くの人に気付いていただくには、やっぱり工夫しなきゃ。
そこに「智恵」が必要なのですね。

「学び」につながる体験学習に挑戦?!
午後1時からは展示解説リターン。
私は3度目ですが、毎回「気づき」があります。
……一回聞いたことを忘れてるだけのことも多いような気もしますけど(笑)
今回は「炭化米の小ささ」が気になりました。弥生時代の米が炭化したものが展示されているんですが、現代のものよりずっと小さいんです。確認したら、「割れたから小さくなっただけで、ただ炭化しただけの米は今と同じくらいです」ということでした。
この件だけは間違いなく、今回初めて聞いたと思う。

そして子どもファーストデーのお手伝い。
弥生時代の石器についての講演もあり、レポートの需要は高いと思ったんですが、市民学芸員としては、弥生文化博物館のいろいろな仕掛けを知っておきたいなと思って、こちらに参加しました。

子どもファーストデーは「弥生人と考古楽カードバトルをしよう」。
考古楽カードはトランプにもカルタにもなる優れものですが、右下には炎・水・葉の「属性」と、1・2・3の「強弱」が書かれています。
炎は葉より強く、葉は水より強く、水は炎より強い、いわゆる三すくみになっていて、カードを一枚ずつ出し合うことで、勝負を決めます。
つまりじゃんけんと同じなのですが、勝つと相手からコインをもらえるうえ、3のカードで勝つともらえるコインが3枚に増える、博打的なルールが加わるので盛り上がります。

ただ、このままではバトルでしかないので、これをどう学びに持っていくのかは、今後の課題ですね。私、普段はカードについて説明するんですが、勝負が盛り上がれば盛り上がるほど、カードの説明をするタイミングがつかめない。
今は、最初に配る8枚のデッキはルールに従ってあらかじめ用意してあるのですが、自分で選んでもらって、「なぜそのカードを選んだの?」と話を聞き、説明をするとか……。
今後の課題ですね。

この日は、「可愛いカードの方が勝ちにしよう」と変則ルールにして、可愛い理由を説明するときカードの内容を説明したり、隅っこでレポートをまとめている私に、「何してるの?」と声をかけてくれた少女に、「博物館好き?」 とちょこっと解説したりして、自己満足しておきました(笑)
同じ市民学芸員の仲間でも、高校生のNちゃんは、穏やかでクールにゲームに徹して、ちゃんと説明してました。エライ。
私ももう少し大人らしく振舞えば解説にもつなげやすいと思うんですけどね(^^ゞ
キャラじゃない(笑)

サヌカイトの二大産地についてもちょっとだけ
セミナーにも、少しだけ顔を出しました。
タイトルは、「弥生時代の打製石器生産」で、講師は川西市教育委員会事務局の社会教育課の朝井琢也先生。
レジュメを見ると、二上山北麓産と金山産サヌカイトの違いが大きなテーマのようで、その利用分布と、剥離技術、縄文時代から弥生時代で技法に変化があったかどうかなどがテーマのようでした。
私が一時聴講したときは、その品質の違いが写真で説明されていました。
二上山北麓産のものの方がなめらかで、金山産の方が、粒が目立つということでした。

考古学って、邪馬台国はどこにあるのかとか、卑弥呼は誰かとか、そういった派手なことにばかり目がいきますが、こういった地道な研究がほとんどです。
地味な研究の積み重ねがあってこその邪馬台国なんですよね。

私たちが邪馬台国を妄想するときも、地味な知識がたくさん頭にあれば、妄想も広がるはず。
次の講座には参加したいと思います。