たるとミックス神崎りゅう子 『たるとミックス!』(1) 芳文社 MANGA TIME KR COMICS
2005年
ISBN:4832275291
たるとミックス! (1)

ジャンル:コミック(4コマ) − 学園
分類:人格転移(入れ替わり) − 魔法
該当キャラクター:北条たると

代々、悪魔退治をしている家系に生まれた北条たると(兄)と北条りぼん(妹)の双子と、その周辺の人間関係を描いた学園オカルトコメディ。この双子は、兄のたるとのほうは悪魔や霊と戦う力はあるのだが、霊的なものを見ることができない。りぼんのほうは、その正反対なので、必要に応じて儀式で互いの魂を交換し、両方の力を身につけて悪魔を退治していたのだ。ところが、儀式の副作用で、何もしていないのに、一定の周期で入れ替わりが起こるようになってしまった、というのがこの作品の基本設定である。ただし、入れ替わり物にはありがちな「互いの正体がばれてはいけない」という緊張感とは無縁で、事実、中盤でたるととりぼんは自分たちの入れ替わりの秘密を親しい友人たちに明かしている(しかも大して驚かれない)。入れ替わりや元に戻るきっかけなどは特になく、当の二人もそれほど入れ替わり状態を強く嫌悪しているわけではないので、自然とのほほんとした日常のドタバタが描かれることになる。じつは入れ替わり要素がなくても、この作品は成り立つのではないかとも思える。ただし、逆に考えると、オカルト風味の学園ドタバタ四コマを描くうえで、男女の入れ替わりというフレーバーが、フレーバーとして強力だということもいえる。いってみれば、万能調味料のようなもので、男女の入れ替わりという要素を作品に溶け込ませるだけで、四コマの肝である「ネタ」作りが格段にやりやすくなるのだろう。
可愛らしく嫌味のない絵柄なので、単行本化を機に作者の神崎氏のファンになる読者は多いのではないだろうか。
なお、今回の1巻に収録のエピソードの中には、北条たるとの魂が、人形の少女の中に宿ってしまうものも含まれていた。

◇掲載の画像は『たるとミックス!』(1)カバーより。 (C)神崎りゅう子 / 芳文社


完全版 ファーレンの秘宝
葦原瑞穂 『完全版 ファーレンの秘宝』 二見書房 二見ブルーベリー文庫
2005年
ISBN:457605032X
完全版 ファーレンの秘宝

ジャンル:ライトノベル(成人) − ファンタジー
分類:変身 − 魔法
分類2:変身 − 体質
該当キャラクター:セネカ / デ・ヴァレラ

1994年にフランス書院のナポレオン文庫から出版された『ファーレンの秘宝』とその続編『オルランドの伝説』の内容を併せ、全編加筆修正された“完全版”が今回、二見ブルーベリー文庫から出版された。2005年3月現在、美少女ゲーム的な内容や装画のアダルトノベルは、大型書店等でそれなりの書棚スペースを確保され、各社が新規ノベルスを立ち上げるという、ちょっとした活況を呈しているジャンルだ。その活況のおかげで『ファーレンの秘宝』が再び日の目を見たのだとしたら、アダルトのベルブームに感謝するほかない。
簡単に作品のストーリーを解説しておこう。
物語の舞台はオルランド大陸(恐らくV.ウルフによる性転換者の物語『オーランドー』からその名をとっていると思われる)。西洋中世風の剣と魔法の世界である。歴史ある都市国家ファーレンは軍事国家であるデロス帝国の突然の襲撃を受けてしまう。ファーレンの第三王子セネカは、姉であるアリシアによって“転性の秘術”によって少女に変えられ、包囲された城からひそかに落ち延びる。途中で非力な女の身を盗賊たちに狙われたりしながらも、“再生者”イルク=リオンの助けを借りて、セネカは修行都市ジャブフラントゥへと辿りつく。そこでセネカは、導師の教えのもと、ある修行を課せられる。ファーレン陥落からセネカの転性に至るまで、すべては世界を救うという“ファーレンの秘宝”をめぐる思惑によって、糸を引かれていたのである。やがてセネカは自らの使命を知ることになるのだった……。

旧ナポレオン文庫版の読者にとっては、どの程度の改稿かという点が気にかかることだろう。あくまで八重洲の記憶を頼りにしての大ざっぱな印象だが、まずほとんど全ページにわたって何かしら筆が加えられているようだ。また、濡れ場のシーンを中心にボリュームも増えているようだ。ただし、まったくの新章が加わったりということはないようだ。イラストは表紙カバーイラストは本文イラストとは異なる、とんぷう氏による作画。本文イラストのほうは旧版通り、淡海霖氏だ。旧版当時のイラストに加え、さらにかなり多数の新規イラストが加わっているようだ。単純な枚数にして倍増に近いのではないだろうか。
個人的には、デ・ヴァレラ将軍とアリシア王女の交情のシーンが加筆されていたことが嬉しかった。旧版当時は枚数の関係かそこがあっさりしすぎていて物足りないように思っていた。