1日、地方独立行政法人・横浜市立大学がスタートした。中田宏市長の就任によって始まった今回の改革で、国際文化・商・理の3学部が統合され、第2外国語やスポーツが選択になるなど、新入生からはカリキュラムが大きく変わることになる。しかし、学生の意見は反映されることはなく、また多くの問題を残す結果となった。

 ある他大学の学生は「(横浜市大の)国際文化の大学院をずっと目指していたが、教職が英語のみになってしまったので他の院に変更した。改革がなければ……」と述べている。今回の改革が本学の人気に与えた影響は大きい。

 5日に新入生を迎えるが、この大学でどんなことが起こってきたのか、十分な資料はない。そこで、学生の動きを中心に大学改革の流れを年表形式にまとめた。

【写真=昨年11月の学生向け改革説明会で。左から岡村一改革推進担当部長、松浦敬紀最高経営責任者、藤野次雄教授(商)、布施勉教授(国際文化)、ブルース・ストロナク参与、小川恵一学長 /肩書きは当時】


49e0009c.jpg

 大学改革までの主な流れ

 □=学生関係の動き

2002年

 ■5月   中田宏市長、「市立大学が漫然と経営するというのは成り立たない」と発言
 ■9月4日 「市立大学の今後のあり方懇談会」第1回会合

2003年

 ■1月17日 神奈川新聞が「赤字1141億円」などと報道、あり方懇談会橋爪大三郎座長は「市民・納税者にこれだけの負担を強いてまで、市が大学を維持する理由は思い浮かばない」などと発言
 □2月8日 教員・学生・市民など「市大の将来を考える緊急シンポジウム」開催
 ■2月14日 あり方懇談会「有力私大への売却・廃校も選択肢に」などと答申
 ■3月   「横浜市立大学を考える市民の会」発足、代表に長谷川洋名誉教授
 ■4月15日 今井清一名誉教授など21人、「市大のあり方懇答申を考える大学人の会」を発足、あり方懇談会に「当事者や市民が含まれていない」と批判
 ■5月7日 小川学長、市長を訪問し「サイレント・マジョリティーをまとめ市大を再生させる」と発言、中田市長は「改学宣言」というメッセージを発表
 ■5月9日 布施勉教授(国際文化)・馬来国弼理学部長・小島謙一教授(理)、「あり方懇の答申は私たちの方針とほぼ一致している。改革への賛同者がサイレント・マジョリティーであってはならない」として「改革推進有志の会」を発足
 □6月7日 「横浜市立大学と付属二病院の存続・発展を求める市民の夕べ」開催、学生・教員など参加
 ■7月20日 大学主催で「生まれかわれ! 横浜市大 大学改革シンポジウム」を開催
 □10月3日 初めて学生向けに改革説明会(120人出席)、学生から反対・慎重論相次ぐ
 □10月21日 大学改革を考える学生有志が会合、30人参加
 ■10月30日 小川学長、任期・年俸制導入・3学部統合を含む改革案を市長に提出
 □11月   学生有志、改革への学生の意見反映・授業料維持を求めた781人分の署名を、小川学長へ宛てて事務局に提出
 ■11月25日 「横浜市立大学問題を考える大学人の会」と「横浜市立大学を考える市民の会」、相次いで大学改革に懸念示す声明を中田市長らに提出
 ■12月1日 市側が改革案の大部分の受け入れを表明
 ■12月17日 横浜市、初代理事長に孫福弘・慶応大教授を選ぶ
 
2004年

 ■2月16日 東京新聞が「逃げ出す教員、隠れFAも」「密室で決定」などと報道、中田市長が「誤報だ」と発言
 ■2月15日 教員組合「なんかヘンだ! 横浜市立大学 改革」と題して朝日新聞に意見広告
 ■3月12日 市会予算委で小川学長「大学の自発的な改革」「任期制は努力する教員の意欲を高めるもので有効な制度だ」と発言
 ■3月25日 新大学のカリキュラム発表、国語・社会・中国語・情報・司書・司書教諭などの教職を廃止、後期入試廃止、指定校推薦導入、「ヨコハマ起業コース」など7つのコース設置など決定
 ■6月19日 理事長予定者の孫福弘・改革推進本部CEOが急逝
 ■7月5日 小川学長、本紙インタビューに「財政が潤沢であったとしても、改革は行われなければならなかった」
 ■7月22日 横浜市、理事長予定者に宝田良一氏、最高経営責任者兼副理事長予定者に松浦敬紀氏を選ぶ
 ■9月2日 ブルース・ストロナク氏が新学長に内定、小川学長の任期途中での解任決定
 ■9月16日 副学長に布施勉教授(国際文化)と南睦彦教授(医)、国際総合科学部長に藤野次雄商学部長、同研究科長に馬来国弼理学部長が内定
 □11月16日 学生に向け2回目の改革説明会(50人出席)、学生からの署名について問われた副学長予定者の南睦彦教授(医)、「それはどんな内容だったのか」と質問者に逆に質問
 ■12月2日 清水一男事務局長、市の大学教育委で授業料値上げ・講堂など学内施設の命名権売却を検討と発言

2005年

 ■2月3日 入試の志願状況判明、大幅な倍率低下
 □2月   学生有志「Network of OutBurst」設立、学長予定者のストロナク氏と会談、ストロナク氏は学生の意見導入に前向きな発言
 ■3月1日 中田市長、市会で議員から「市長が大学で講義しては」と提案され「機会があれば伺いたい」
 ■3月   教員組合、任期・年俸制に同意しないよう組合への委任を教員に要請
 ■4月1日 地方独立行政法人・横浜市立大学スタート


(資料=本紙、神奈川新聞、朝日・読売・毎日・東京・日本経済・産経各紙の横浜版)
※肩書き・名称は当時