近年の大学改革をめぐって、多くの意見表明が学内でなされた。ところが、大学当局や市側の動きは新聞記事や公文書として残されるのに対して、教員・学生など学内の意見は、図書館に所蔵されるような形式でのまとまった記録がない。電子的な資料や個別の紙媒体などが出されているものの、これらが長期の保存に耐えるのか、疑問がある。

 教員の転出が相次いだため、商文棟の階段下などには大量の書籍が廃棄され積まれているが、この中に興味深い本があった。1996年に発行された『アカデミアの森へ』(編集・発行:横浜市立大学編集委員会)という、学生・教員などの随筆を集成したものだ。新入生に受験勉強とは異なる学問の世界を紹介すべく配られた「入門書」で、学術情報センターにも数冊が所蔵されている。今は亡き地震学の菊池正幸教授をはじめ、各学部・研究所から数名ずつの教授が、自らの研究領域への熱い思いを語っている。

 さらに、在学生やOB・OGも文章を寄せており、研究・部活動・留学など、自信を持って書かれた経験の一つ一つが輝いている。三枝博音元学長から受け継がれてきた「学問の自由」があった時代の貴重な記録である。昨年には、国際文化学部の教員たちによって『教室からの大学改革』という本がまとめられており、以前から行われてきた教員の自主的な努力が描かれた。どちらも、改革前の横浜市立大学を知る上でその価値はさらに増していくことだろう。

 現在、私たちは未来の大学に対して何を残すことができるだろうか。『アカデミアの森へ』のように熱い文を書くことはできないかも知れない。しかし、この大学で起こったことを、末永く残るように記録する義務があることは確かだ。どのような意見であれ、歴史の上に刻まれることにより、未来において参照され価値判断がされるだろう。100年先を見据えて考えれば、書籍という形式はなお合理的だ。大学新聞として『アカデミアの森へ』同様に集成などの方法を考えることが必要だが、学生も含めた学内の人々も、どのような記録が残せるか真剣に検討してみてはどうだろうか。