今秋のNHK朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」の主役に貫地谷しほりがキャスティングされた。14日に制作局のNHK大阪から発表になった。このニュースを聞いて、思わず「ほう」と声が出てしまった。というのは、近年の朝ドラの主演女優で、やたらと映画「スウィングガールズ」(2004年公開)主演の女優が抜擢されているのだ。

まず「てるてる天気」の主役級4姉妹の3女役として上野樹里。彼女は「スウィング…」に主役。テナーサックスを担当していた。制作中に掛け持ちで出演していたので、厳密には異なるが、その後のドラマ・映画等の活躍ぶりはいうまでもない。

続いて「ファイト」では、本仮屋ユイカ。彼女はトロンボーンを担当。映画では、キャラそのままの優等生肌。昨春に日大芸術学部に進学している。

そして今回の貫地谷しほりと続く。彼女が「スウィング…」で彼女が演じたのは、やたら男にほれっぽい派手系生徒の元締め的なトランペット担当。大河ドラマ「風林火山」に出演中。ちょっと、泥臭い感じながら、山本勘助に恋する村娘を好演した。

ちなみに、「スウィング…」主役5人のうち、残り2人のうち、1人はあくまでも「スウィング」のあて役的な女優で、朝ドラ主演という雰囲気ではない。残り一人は男優だが、こちらもコンスタントにフジテレビのドラマで見かける。この状況をどうみればいいのか。「スウィング…」のキャスティングをした、矢口史靖監督の慧眼なのか、それとも、これら女優の才能のなせるわざなのか、といったところだ。

「スウィング…」自体は、同監督のヒット作「ウォーターボーイズ」の女子版といった内容の映画。それでも、山形の田舎を舞台に、まあ、ありがち展開のストレートなドラマ仕立てではあったが、それぞれのキャラの書き分けがしっかりしていたせいか、素直に楽しめる映画だった。実際、配集も「ウォーター…」を、上回ったし、同年のキネマ旬報ベストテンでは7位に入っている。作品の性格からすれば、できはよかった。筆者も何回か見たが、面白い。その他、脇役で出演したガールズのメンバーも、テレビでけっこう見かける。

NHKの朝ドラといえば、かつてほどの視聴率は取れなくなったが、それでも「腐っても鯛」。新人女優の登竜門的な性格は今も色濃い。ところが、そのキャスティングをみると、ある程度キャリアなり演技力なりを、吟味した上で、女優を選ぶという傾向が続いているようだ。

逆に言うと演技経験なしの新人を登用するケースが減った。つまり「手堅い株を買う」という方向に傾いている。実名を挙げるのは避けるが、サラの新人を採用して、ドラマ的にもいまいちだったというケースが最近あった。「女優」の成長を現場で見守るのも一つのドラマづくりの手段だが、いかんせんお茶の間の反応はシビアだ。そこはリスクを避けようという思惑が明らかになっている。

今回の貫地谷しほりの起用もその流れに沿った形といえそうだ。役どころは女流落語家を目指す地方出身の女性。設定ありきで、女優のキャラを当てはめる雰囲気もあるから、単に女優の資質だけでは、割り切れない部分もある。NHK側では「彼女の演技力を評価した」としている。和服の着付けが得意というから、やはり「はまっている」と見るべきなのだろうか。

ちなみに、彼女自身は朝ドラのオーディションは3回受けたそうだ。公にはならないが、朝ドラのオーディションで落選を重ねている有名どころのタレントも少なくないという。本人は「3度目の正直」と会見で笑いをみせていた。この辺の役へのどん欲さも、悪くないと思う。