あの大地震からもう7年たった。あの日に生まれた被災地の子供たちももう小学2年生になっているのを考えると、時の流れは早いように思える。もちろん、7年経ってもまだまだ復興への道のりは遠い。特に原発を抱える福島県は何世代にも渡ってその現実と向き合わなければならないだろう。テレビをはじめとするマスコミにはこれからも被災地の情報を全国に発信し続けてほしい。そして、これから起きるであろうと言われている南海トラフ地震対策もちゃんと練っていかねばならない。そのためには過去の教訓が大切であるのは間違いない。これまでにも日本は幾度となく自然災害に悩まされてきたし、その度に新たな課題が見つかった。例えば、95年の阪神・淡路大震災では家具の置き方などで家に取り残された人たちの生死が分かれたり、二度に渡って新潟を襲った二つの大地震では新幹線が脱線したケースもあった。そして、11年の地震では津波や原発、さらには首都圏の帰宅困難者発生などの広範囲に渡って影響を及ぼした。そして、あまりにも大規模すぎた災害との向きあい方について考えさせられたはずだ。もし、その時が来た後に「あの日、あのとき、こうしていれば…」というようなことがないようにしっかり過去の教訓から学び、それを活かしていきたい。

ところで、今までの歴史の中でももっとも広範囲に渡って被害を出したあの大地震、日付をとって「311」と呼ばれているが、かつては東北地方太平洋沖地震と呼ばれていた。だが、読者の皆さんにはこれらよりももっと聞きなれた名前があるだろう。
そう、「東日本大震災」だ。
さっきまで管理人はあえて、先の震災のことをその名前で触れなかった。なぜその名前を使わなかったのか?その理由は、その名前の意味と実際に大勢の人たちがその名前に対して抱いているであろうイメージが乖離していると思ったからだ。

まず、大体の人が抱くであろう「東日本大震災」のイメージは
・津波でやられたのは東北の3県
・福島原発事故
・忘れてはいけない東日本大震災とは東北のこと
・いわゆる風評被害とは福島とその周辺のこと
この4つにまとめられるのではないだろうか?もちろん、東北の復興なくしてこの地震の復興はなし得ない。今でも岩手、宮城、福島の3県では仮設住宅や避難生活などを余儀なくされている。行方不明者も大勢いる。しかし、津波と原発被害だけでこの「東日本大震災」を語るのは間違っていると管理人は思っている。なぜなら、内陸部でも甚大な被害をもたらしたし、津波被害は東北以外の地域でも甚大な被害を出している。内陸の被害は大きく分けて3つほどあげられる。どういうものかと言うと、
・東京周辺を中心とした交通網のマヒとそれによる帰宅困難者の発生
・建物の倒壊
・液状化現象
などがある。
これらはたしかに東北の津波と比べるとまだ大したことではないかもしれない。だからといって、こうした内陸部での問題を後回しにするのはよくないことである。かの「東北でよかった」発言の今村雅弘・前復興大臣を擁護するつもりはないが、地方の津波などの被害も甚大ではあるが、首都機能がある東京で再びそれクラスの地震に見まわれたら人口的な規模はもちろん、経済的な規模においても地方よりももっと大きな被害が出るのは明らかである。それに備えるためにはもっと、内陸側での被害を知る必要がある。「あの日を忘れない」と言う言葉をよく見かけるが、それを東北のことのみに限定せずこちらのことも忘れてはならないのだ。事実、内陸部でも死者は出ている。内陸部の方で亡くなられた人たちのことも忘れてはいけない。
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栃木県での被害
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千葉を中心に被害が拡大した液状化現象


さらに津波のことだが、これは東北に限ったことではない。北は北海道、南は千葉まで、津波による犠牲者はいるのだ。北海道の時点で、もう「北海道まで津波が来ていた」という事実を忘れているもしくはそもそも知らなかった人もいるだろう。津波は想像を遥かに越えたところまで来ていたのだ。南米のチリもよく大地震に見舞われるが、その時も津波が発生した際には、日本でも津波警報を出す場合がある。なぜなら実際に到達し、被害をもたらした事例があるからだ。遠く離れた南米から日本にまで津波が来るなんて信じられないことだが、事実である。故に、北海道まで津波が来ることを想像するのも容易である。なお、千葉県では今も行方不明者がいる。
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東北の次に被害が大きかったところは千葉県だと思う
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茨城県では沿岸部と内陸部の死者の数がほぼ同じである
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内陸部では壁が崩壊したり、高所作業中に転落して亡くなられたりするケースもある

この他にも、大震災の翌日に長野県北部の栄村で起きた震度6越えの大地震もあるが、全く注目されていないことが残念でならない。
http://ja.uncyclopedia.info/wiki/%E6%A0%84%E6%9D%91%E5%A4%A7%E9%9C%87%E7%81%BD ←アンサイクロペディアなのに、おふざけは全くない極めて珍しく本気の記事


このように、東北地方のみならず、関東甲信越をはじめとした内陸部でも大きな被害を被ったわけだが、全く知られていないことはいかがなものだろうか。東北のことを悪くいっているわけではないが、世間の注目が東北ばかりに向くと、あたかも、「東日本大震災」というものは東北で起きた災害と言う認識で人々の記憶に残り、それ以外の地域のことは忘れられてしまう。それならば、冒頭の「東北地方太平洋沖地震」かもしくは「東北」が入った名前に統一すべきである。ではなぜ、あえて「東日本大震災」という名前で統一したのか?
それは恐らく、震災が発生した当初はまだ内陸部での被害もそれなりに取り上げられていたからであろう。実際、震災発生から1~2年の間は先程の「東北地方~」も場所によっては使われていたが、名前が長すぎたからなのか「東日本大震災」という名前のインパクトに負けたからなのか、気づけばいつのまにか使われなくなっていた。だが、それと共に内陸部や東北以外の沿岸部の津波被害のことも忘れられていってしまった。よく「人は二度死ぬ。一度目は普通に死んだとき、二度目は他人の記憶から消えたとき」という言葉を耳にするが、東北以外の地域は今まさに二度目の死を迎えようとしている。私たちは少しでもその流れを食い止めなければならない。
東北だけではなく、関東甲信越から北海道までの「東日本」のあらゆるところで甚大な被害をもたらしてはじめて「東日本大震災」と名乗れるのだ。そう名付けられた以上、「東日本」全体のことを私達は忘れてはならないのではないだろうか?
欲を言えば、マスコミにはもう少し、内陸部や東北以外の沿岸部の様子も伝えてほしかった。結局、人々が大きな出来事を忘れるか否かはマスメディアの力にかかっているのが現実だ。例えば、2001年の「911」こと「世界同時多発テロ」だが、「多発テロ」というのにも関わらず、多くの人が持つイメージは飛行機がニューヨークの大きなビルに突っ込んだことぐらいで、そこから離れたペンタゴンに別の飛行機が突っ込んだことを覚えている人はどれくらいいるのだろうか?「世界同時多発テロ」はニューヨークだけの出来事ではないのだ。だが、マスコミが報じる「911」はほとんどがニューヨークでのテロばかりしか報じていない。その結果、ペンタゴンでのテロはますます影が薄くなり、やがてそれを知ってる人もごくわずかになってしまうだろう。

関東の内陸部に住み、そこで「東日本大震災」を経験した一人として、私はこれからもあの日のことを忘れずに生きていたい。
最後に、この地震により亡くなられたすべての地域の方々へのご冥福をお祈りすると共に、一刻も早い復興をお祈りいたします。