運動器の診療では、身体を動かすのに必要な筋肉・骨・神経ときには皮膚や皮下脂肪も含めて、その機能を評価し治療をすることになりますが、ある程度動かさないと自覚的には困らないことも多いので、なかなか危機感を持たれない領域でもあります。
長い間、レントゲン像に頼って画像診断が行われてきたため、骨の形に関心が集中してきたという経緯があります。いまだに「骨は大丈夫」という言葉で安心と思われる方が多いようです。
日常診療のレベルでは、はじめに骨の問題が生じるということはほとんどないと思っています。
筋肉の機能低下がまずはじめに生じ、そのあとから神経が引っ張られたり圧迫を受け、靱帯や腱に緊張が強いられると、それらが骨に付着する関節周囲で本来とは違う向きや強さの力が生じて、荷重関節であれば軟骨の摩耗、腱や靱帯の付着部には骨の棘の形成、やがて関節周囲の骨の変形が生じるという流れが想定されます。
外傷の場合も、たとえば骨折であっても骨以外に筋・腱・靱帯・神経・皮膚・脂肪などの組織がダメージを受けているはずで、骨折による周囲の炎症と、治療のための固定で動かせないことも含めて、組織の癒着が生じる可能性があります。
筋肉は動かさなければ痩せて細くなっていき、関節は動かさなければ硬くなって可動域制限が出てきます。
それでも使わなければ痛くありません。
だから外出しない人・車ばかり乗って歩かない人・全く交通機関を利用しない人は自覚症状がなく、発見が遅れます。
逆に使うことで疲れるとか、ぎこちないとか、突っ張るとかの軽い症状があったりして、使うことに対してネガティブな印象を持ち始めると、「動かさない方がいいと思った」「じっとしていれば痛くない」「疲れるから遠出をしない」というような感想を持たれることがあります。
骨折でギプスを当てる期間が終了した後、固定を外して動かしていきましょうという時期になっても、「動かすと痛いので動かさなかった」ということになると、治療が長引くことにつながります。
必要があれば上手に薬だったり、エコーを見ながらの注射だったり併用して痛みを薄めて動かしていくべきで、「薬は使いたくない」となりすぎると、リハビリの長期化になることもあります。

新型コロナウイルス感染症の拡がりに対して、外出自粛が叫ばれてから、通院を中断していた方が再び来院をされるケースもあります。
骨粗鬆症や腰部脊柱管狭窄症などくすりを継続的に内服しているべき方が中断していたり、中断の間に筋力低下がすすみ「ロコモ」と略されるロコモティブシンドロームの状況になった方もいます。
「コロナが怖くて外出しなかった」「地元を離れるのは数ヶ月ぶり」というお話をお聞きしますが、栃木で言えば宇都宮のような県庁所在地をのぞけば、ほとんど感染者が出現しないのは外出自粛中も現在も変わらないように思います。
手洗いの徹底と屋内でのマスクの併用、ソーシャルディスタンスで、感染は防げる可能性が高いのですが、不安感のあまり医療を受けなくなっているのは問題です。
整形外科にとどまらず、小児科でいえば予防接種が必要な子どもに注射を受けさせていないということも問題になっています。内科に受診して行っていた健康診断を今年は受けないという人もいるかもしれません。
コロナウイルスの感染よりも、医療を受けない方が問題が生じる確率がずっと高いのですが、そちらは気にならない方も少なくないようです。
このあたりも含めて、医療の仕組みも変わっていかないといけないことがあるように思います。
診療の完全予約制とか、診療曜日や診療時間の見直しなども含め、安心して受診できる環境をつくることも今後の課題なのかもしれません。
これまでの常識を見直さないといけないように思う今日この頃です。

長い間、レントゲン像に頼って画像診断が行われてきたため、骨の形に関心が集中してきたという経緯があります。いまだに「骨は大丈夫」という言葉で安心と思われる方が多いようです。
日常診療のレベルでは、はじめに骨の問題が生じるということはほとんどないと思っています。
筋肉の機能低下がまずはじめに生じ、そのあとから神経が引っ張られたり圧迫を受け、靱帯や腱に緊張が強いられると、それらが骨に付着する関節周囲で本来とは違う向きや強さの力が生じて、荷重関節であれば軟骨の摩耗、腱や靱帯の付着部には骨の棘の形成、やがて関節周囲の骨の変形が生じるという流れが想定されます。
外傷の場合も、たとえば骨折であっても骨以外に筋・腱・靱帯・神経・皮膚・脂肪などの組織がダメージを受けているはずで、骨折による周囲の炎症と、治療のための固定で動かせないことも含めて、組織の癒着が生じる可能性があります。
筋肉は動かさなければ痩せて細くなっていき、関節は動かさなければ硬くなって可動域制限が出てきます。
それでも使わなければ痛くありません。
だから外出しない人・車ばかり乗って歩かない人・全く交通機関を利用しない人は自覚症状がなく、発見が遅れます。
逆に使うことで疲れるとか、ぎこちないとか、突っ張るとかの軽い症状があったりして、使うことに対してネガティブな印象を持ち始めると、「動かさない方がいいと思った」「じっとしていれば痛くない」「疲れるから遠出をしない」というような感想を持たれることがあります。
骨折でギプスを当てる期間が終了した後、固定を外して動かしていきましょうという時期になっても、「動かすと痛いので動かさなかった」ということになると、治療が長引くことにつながります。
必要があれば上手に薬だったり、エコーを見ながらの注射だったり併用して痛みを薄めて動かしていくべきで、「薬は使いたくない」となりすぎると、リハビリの長期化になることもあります。

新型コロナウイルス感染症の拡がりに対して、外出自粛が叫ばれてから、通院を中断していた方が再び来院をされるケースもあります。
骨粗鬆症や腰部脊柱管狭窄症などくすりを継続的に内服しているべき方が中断していたり、中断の間に筋力低下がすすみ「ロコモ」と略されるロコモティブシンドロームの状況になった方もいます。
「コロナが怖くて外出しなかった」「地元を離れるのは数ヶ月ぶり」というお話をお聞きしますが、栃木で言えば宇都宮のような県庁所在地をのぞけば、ほとんど感染者が出現しないのは外出自粛中も現在も変わらないように思います。
手洗いの徹底と屋内でのマスクの併用、ソーシャルディスタンスで、感染は防げる可能性が高いのですが、不安感のあまり医療を受けなくなっているのは問題です。
整形外科にとどまらず、小児科でいえば予防接種が必要な子どもに注射を受けさせていないということも問題になっています。内科に受診して行っていた健康診断を今年は受けないという人もいるかもしれません。
コロナウイルスの感染よりも、医療を受けない方が問題が生じる確率がずっと高いのですが、そちらは気にならない方も少なくないようです。
このあたりも含めて、医療の仕組みも変わっていかないといけないことがあるように思います。
診療の完全予約制とか、診療曜日や診療時間の見直しなども含め、安心して受診できる環境をつくることも今後の課題なのかもしれません。
これまでの常識を見直さないといけないように思う今日この頃です。
