薬師寺運動器クリニック院長のblog

栃木県下野市の日曜診療・祝日診療の整形外科・運動器リハビリ・スポーツクリニックである薬師寺運動器クリニックの院長がつづるブログです。 土曜日も月に2回程度の診療をして、週末に多く発生するスポーツやレジャーでの痛みに対してなるべくその日のうちに治療開始できるようにしています。 栃木県や茨城県西部の野球選手が数多く来院されます。 診療に関連して是非知っておいていただきたいことや、新たな情報を述べていきます。

2021年02月

 新型コロナに関連して栃木県がLINEで展開している「新型コロナ対策パーソナルサポート」で「毎日元気に過ごすために フレイル予防で健康長寿!」と書かれた写真と共に、フレイルを予防しましょうという内容の送信がありました。
 介護予防・骨折予防のために「運動器」という言葉が使われるようになり、「運動器不安定症」という病名が作られ、「ロコモティブシンドローム」という概念が提唱されて久しいと整形外科医は思うところです。その後、もう少し広い解釈で心身の健康と含めて「フレイル」が内科系から提唱されてきました。

 高齢者の活動レベル低下にともない、筋力低下・不活発でメンタルの問題・時には認知症の発症・転倒骨折に伴い介護導入、といったストーリーが懸念されるため、これらを予防しようという啓発です。
 転倒し骨折するまでは、じっとしていれば痛くないので、何ともない・どこも悪くないと思い込まれがちです。
 医療従事者だけど整形外科勤務ではないという方々は、意外と「痛くなければいいんじゃないの」という考えをもたれることがあります。
 「高齢だから仕方がない」的な発想や、「湿布を処方しておけばいい」と思い込まれてしまうことがあって、本来なら整形外科で評価をして、理学療法士によるリハビリテーションを行うべきところを、湿布を処方してあたかも治療をして差し上げたと思われることもあるようです。
 平均寿命が延びたこともあり、80代後半でも車の運転をする方は、交通の便のよくない地域ではそう珍しい話ではありません。当院周辺の農村部でも軽トラックを運転している高齢者を見かけます。
 痛みはなくとも、筋力低下が目立つ場合もあるし、片脚立ちをさせるとふらついて10秒も立てない方もいますし、長く歩けないということもあったりするのですが、すべてイスに腰掛けていれば気づかない症状です。
 検査をすれば異常が見つかるなどというのは、たとえば血圧だって測定して初めて高血圧がわかる訳ですが、痛くないし高齢なので・・・ということになりません。くすりを処方され、一旦処方が始まると何年も通院を続け、血液検査だ、胸の音を聴診だ、胸のレントゲン撮影だと検査を行い、早めに異常を見つけて長生きはする可能性が高まります。全く痛くないけれども。
 運動器はレントゲン撮影すれば変形だらけで、筋力も低下し抵抗を加えるとそれに打ち勝つだけの出力はないのに、困らないので・痛くないのでといって通院が中断することも多いです。高齢で仕方がないと思い込んでしまう患者さんもおおいようです。
 高齢でなくとも、「痛みが取れたので、忙しいし通いきれない」と言い出す方もいて、痛いときも忙しかったと思うのですが、痛みがないと通院のモチベーションが下がってしまうという図式は珍しくありません。「まだ治ったわけではありませんよ」と言っても断られることも多いです。残念ですが。
 結果として、数ヶ月以内に再発して戻ってくることもあります。
 客観的にはよくなってないのだから痛みが増強してもある意味当たり前です。

 健康診断の「健康」は検査の内容を考えれば、内科の病気がないことだったりして、結局は生命に関連する脳卒中を防ぐ・狭心症や心筋梗塞を防ぐ・肺や気管の病気を防ぐ・おなかの病気を早く見つけるということを目標としているように思われます。
 昭和の時代から長年健康診断が行われ、長生きにはなった日本人ですが、ここへきてようやくフレイルという言葉を提唱されるようになりました。
 ただし、医療費を増やさないのが命題となっている現在では、健康診断に運動器の疾患を入れるとは考えにくいです。なぜなら、検査をすることで治療を必要とする人が相当数見つかるので、健康診断をすると医療費が増えるという図式になると予想されるからです。
 結局は、公的なサービスは行われないので、自分で異常と思うかどうか、そのために予備知識を持っているかどうかで、運動器の状態に差が出てきます。知っていた人の勝ち、知らない人は損をするという図式ができるような気がします。
 1件の医療機関が「かかりつけ医」となって対応すれば、幅広い疾患を1件の診察料で済ませられるので、一見医療費は抑制できるという机上の計算があるのではないかと思いますが、実際にはひどくなってから「専門医に診てもらいましょう」となると、検査や投薬が増えて高くつくことも懸念されます。
 「かかりつけ医」の先生がどこまで運動器に関心を持っていただけるか。
 湿布を貼って様子を見ましょうというレベルでは残念ながら厳しいです。画像診断も触診も機能評価も行われず、診断的な注射を原因と思われる部位に打つわけでもないとどこが痛みの原因かすらわからないまま、ただ「痛い」から「痛み止め」という安直な対応になる可能性が高いです。
 医学教育でもこのあたりはまだ行われていない可能性があり、医学生も来院しますが、途中で脱落することが珍しくありません。「テスト前なので」「実習があるので」「帰省するので」となって、途中で治療が中断してしまうことがあります。
 なんかもったいないと思うところです。
 当院のリハビリスタッフにも「痛みが取れただけでリハビリが終わりとは限らない」ということは伝えています。
 生命には関わらないでしょうと言われればそれまでで、介護導入の要因になることの多い疾患を扱う診療科ですが、リハビリにも150日間の期限があり、そもそも制度に限界のあるリハビリですから介護保険サービスを必要とする人はまだまだ増えると個人的には予想しています。
 医療の中では優先順位は高くない領域で、リハビリの中にも差があって、運動器は150日ですが、脳卒中などは180日だったりします。
 それでもようやく新型コロナのなか、「運動しましょう」と行政が言い始めたわけで、おそらく現在は栃木県においては、新型コロナにその日にかかった人数よりも、転倒骨折の高齢者の人数が多い日もあると思われます。
 コロナも心配だけど、骨折・介護のストーリーも心配しましょうということでしょう。

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2/23に甲子園の選抜高校野球の組み合わせが決まりました。
栃木の野球好きの方は、まだ石橋高校が21世紀枠で選ばれなかったことを悔しく思っているかと思われますが、他県の高校からセンバツに出場する栃木出身の選手を応援することにしましょう。

当院との関わりでいえば、神奈川・東海大相模のエースになった石田隼都投手や健大高崎の上野元希選手は真岡ボーイズ、健大高崎の綱川真之佑選手は宇都宮中央ボーイズ出身です。
それぞれ学童や中1の頃から知っている選手なので、甲子園に出場することは大変うれしく思います。
上野選手は中学も当院から近いので、地元の選手と言って過言ではありません。

当院には県内各地から学童野球や中学軟式・中学硬式の野球選手が数多く来院します。
その後、県内外の強豪校に進む選手も珍しくありません。
この春も、山梨や岩手、茨城、宮城の高校に進む選手がいます。やはり東日本の高校が多いです。
また、県内各地の高校から来院している選手のなかには大学で野球を続けるという選手もいます。
千葉の大学に進学する選手もいますし、先日は福島の大学に進学した選手が帰省して受診をされました。
埼玉や都内の大学に進学して頑張っているのをSNSでフォローしている選手もいます。

当院周辺は首都圏よりも転居をすることが少ない地域かと思われます。
小学校に行くか行かないかの頃から知っている子が育っていくのを見届けられたりします。
親でも親戚でもないけど、育っていくのをみるのは楽しみです。
そんな想いを少し拡げて、栃木県野球協議会でもお手伝いをはじめました。
まずは故障しないで栃木の選手が上のカテゴリーにいくことをサポートしていきます。
栃木の子どもたちに期待をしましょう。

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2/23は天皇誕生日で、火曜日であっても休診です。
ここ数日は気温が高めで、スキー場でも雪の質は低下し、特に朝から多くの人が滑った後の午後になると、ケガが多く発生するのではないかと思われます。
この2週で3名のスノーボードのケガ人が来院されています。いずれも午後の発生でした。
ケガが起こりやすいのに、医療機関は休みということが多いです。
スキー場は市街地から遠く、一般的には病院がスキー場の近くにはありません。高速道路のインターのそばにもないことが多いので、スキーやスノーボードでケガをしても、帰り道で受診を簡単にできないということがほとんどではないかと思われます。

今年は新型コロナの影響でスキー場へ出かける人も少ないのかもしれず、ケガでの来院もいつもの年と比べると少ない印象です。
大学も春休みに入ったとか、医療系の国家試験が終わったけど卒業旅行には行けないとか、入学試験で在校生は休みとか、近くのスキー場でスノーボードだ!と繰り出す方も増える時期かもしれません。

雪が溶けて固まってアイスバーン状のところで転倒したり、シャーベット状になった雪で足を取られて突然転倒したり、手首や肘のケガが多くなりがちです。時に頭や顔面のケガもおこるかもしれません。

当院は天皇誕生日も通常の火曜日と同様の診療を朝9時から行います。
スノーボードに限らず、レジャーやスポーツでのケガでお困りの方は、お問い合わせください。
ひどい出血とか、全く立てない、手足がひどく変形しているなど救急車を呼ぶレベルのケガには対応できませんが、初期対応は可能です。
スキー場から当院へお越しいただく場合は、1時間以上かかりますので、到着予想時刻などもお知らせ下さい。
疲れのたまってくる、そして雪のコンディションの悪化する午後にはご注意下さい。

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 新型コロナのワクチン接種のシミュレーションで下野市のニュースが新聞に取り上げられていましたが、一方でひっそりと乳児股関節検診終了の連絡についての郵便が市役所から当院へ届きました。

 下野市は平成の大合併で旧国分寺・旧石橋・旧南河内の3町が合併してできましたが、旧国分寺町が乳児股関節脱臼検診を行っていた流れで、合併後も下野市全体に対象を広げて継続されたという経緯があるようです。

 全国的にも乳児の股関節に特化して整形外科医が検診を行うという自治体はまれです。
 新潟市は集団での一次検診をエコーで全例行っています。
 また長野県下諏訪町でもエコーで検診を行っています。
 新潟大学を卒業した私は、学生の頃から新潟の検診の話を聴いていましたし、栃木で仕事をするようになってから、長野県下諏訪町での日本整形外科超音波研究会主催の乳児股関節セミナーにも1泊2日で参加しました。
 下野市は原則レントゲン撮影の方針ですが、当院ではまずはエコー検査という形で検診を行ってきました。
 下野市は集団検診ではなく、開業の整形外科施設に乳児を連れて行く個別の検診です。開業の先生はなかなかエコーに関心を持っていただけない傾向がありますので、エコーの検診について他の先生方から尋ねられることもなく、今日に至りました。
 下野市が検診をやめる理由に挙げている「県内の市町の先天性股関節脱臼検診の方法も様々」「法定健診ではない」というのは苦しい言い訳に聞こえます。
 異常が見つかる可能性が確かに高くはありませんが、視診だけでは見逃す可能性も高いわけで、しかも今後は整形外科ではなく小児科の先生の検診の一部として扱うということで、医学的には後退すると言えるでしょう。
 つまるところは費用対効果で予算の問題ということでしょうか。
 0歳児は400名程度で、全員が下野市で検診を受けるとすると、当院では15~20%程度がエコーで検診をしてきたことになるかと思われます。エコーで異常を疑い、レントゲン撮影に至る乳児は年に1~2名いるかどうかです。自治医大に紹介というレベルですと、検診を始めて十数年ですが数名ではないかと思います。本当に脱臼と診断して紹介したのは1名です。

 今後は小児科の先生が股関節をどう検診されていくかですが、滅多にないことではありますが両側とも脱臼疑いというような場合は左右差がわからない可能性もあり、見た目の判断だけではやはりリスクがあります。
 せっかくいい制度があったのに、できればエコー検診を広めたかったですが、大変もったいない下野市の判断です。
 小児科の先生から紹介される場合は、異常が疑われたということになるでしょうから、健康保険の扱いですが、子ども医療で実際にはお金はかからないことになるのでしょう。
 今まで通りの検診を自費で受けたいという方もいらっしゃるようであれば、ご相談ください。

 現在の検診は3月31日で終了とのことですので、その時点で生後3-4か月の赤ちゃんは3月中に駆け込みで受診されることをおすすめします。

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 診療をするうえでは、「どこが・どんなふうに・何がきっかけで・どんな症状がでてきているのか」といったような問診をする必要があります。
 問診の技術というのも必要で、事実をうまく聞き出さないといけないのですが、例えば、ご本人が思っている痛みの場所と実際の場所がずれていることは珍しくありませんし、客観的な評価が難しい痛みの強さなども「最大の痛みを10として現在10分のいくつか」などの質問を用いたりして、何となくイメージしていくことがあります。
 
 そして最近は、症状の出現する頻度の表現については、その人の感情・考え方が反映されるということに気づかされています。
 痛みが「たまに出る」「ときどき出る」「しょっちゅう出る」という、いわば国語の表現は、実際のところどの程度の頻度かは全然わからないところで、同じ1週間に1回でも「たまに」と言う方もいれば、「ときどき」の方もいれば、「しょっちゅう」といわれることもあります。
 つまりその症状が困っている度合いが強いとか、うっとうしいと思っているような場合は、「しょっちゅう」となり、それほどでもないときは「たまに」という傾向があるような気がします。
 
 以前と比べて変化があるかどうかお聞きするのも大事なことなので、診察のたびに繰り返し同じような質問をする場合があります。同じ痛みが出るにしても頻度が減ったとか、痛みの持続時間が短くなったとか、なにか変化を聞き出すことが医療の記録として必要なので、決してからんでいるのではなく、ご理解をいただき、返答をいただければと思います。
 一応、私たちの診療も自然科学の端くれというつもりで、熱意を持って取り組みたいと考えています。何らかの「症状が改善した気配・証拠」を診察のたびに感じ取れるとありがたいと思っています。
 ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。IMG_4735

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