介護審査委員を長いことしています。
 日本整形外科学会のロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトである「ロコモONLINE」https://locomo-joa.jp/locomo/ によれば、要支援・要介護に至る原因には「運動器の障害」が24.8%を占めるとされています。さらに12.8%の「高齢による衰弱」のなかには筋力低下も含むとすれば、かなりの割合が運動器が関与しているのではないかと考えられます。

 介護申請の書類を目を通してきた経験で言えば、高齢者が介護申請をする場合、主治医の意見書の多数は内科医と思われる医師が記載しています。基本的には運動器疾患には関心がない立場の先生方といって過言ではないと思われ、熱心に内科の疾患の詳細を専門用語を使って意見書に記載いただくことが多いです。
 介護上の問題は移動能力の低下で転倒を月に1-2回していても、診断名に運動器の疾患名が入っていないことも少なくありません。

 また、介護の認定調査は調査員が出向いて行うわけですが、調査員も運動器疾患にはあまり危機感を持っていただけないこともあり、月に1回の転倒は「転倒が少ない」として調査結果として「介助されていない」を選択されることがあります。

 そもそも介護認定とは介護する側の手間を調査することなので、介護される側の意向よりも介護する側の論理で成り立っている印象です。

 片足立ちは「1秒間程度」できれば「できる」とされます。歩行は5mできるかどうかで判断されます。

 これらができなくても「高齢のため仕方がない」という雰囲気があって、運動器の治療は行われないまま経過していることが大多数と思われます。内科のかかりつけ医が湿布を処方をしているだけということが多いのではないでしょうか。

 介護認定を申請する際には、何を問題点として申請するのかを考えていただき、足腰が弱ってきた・外出が困難になった・ふらつく・転びやすいといった問題であれば、整形外科の受診をして、整形外科の医師に意見書を書いてもらったほうがよいと思われます。
 逆に、物忘れであるとか、脳卒中後の麻痺などは内科の先生が記載することが望ましいです。
 介護認定ソフトによる一次判定に対して、意見書に書かれた内容をもとに介護認定審査会の委員が意見を述べて、二次判定を行います。
 つまり、意見書に困っている問題について記載をしていただければ、介護度の見直しが困難になります。運動器の問題なのに内科の先生が意見書を書かれると、問題点を拾い上げにくい、いわゆる「下駄を履かせる」ことができなくなります。
 
 整形外科のクリニックでも運動器リハビリテーションを行っていないところは多く、電気治療と湿布処方という施設がかなりの割合を占めているはずです。都市部のビルの診療所ではリハビリを行うだけのスペースがないことも普通でしょうし、理学療法士が勤務していない施設がまだまだ少なくないはずです。
 「セラピスト」と称して看護師や柔道整復師が体操の指導をしているところもありますが、「運動器リハビリテーション(III)」という会計になり、広い施設で多くの理学療法士が行う「運動器リハビリテーション(I)」と比べると見劣りします。
 内科の治療は熱心に行い、平均寿命は伸びてきましたが、運動器は「歳で仕方がない」とされてきたことで、「長生きはするけど動けない」高齢者が増えてきています。

 医療費抑制で介護サービスに回すことを厚生労働省は考えるでしょうが、介護保険サービスの費用がどんどん伸びていくことも容易に予想されます。
 転倒骨折で手術を受けるよりも、医療保険で運動器リハビリテーション(I)を受け、転倒骨折に至らないようにすることも医療費抑制の一助になると考えます。

 実際、当院では80代でも運動器リハビリを行っています。平均寿命を超えるまでは「歳だから」というのはやめましょう。80代でも車を運転するし、ひとりで旅行に行ってもおかしくないですし、何年かすれば、元気だったら80代でも仕事をする人が増えてくることも想定されます。

 デイサービスでは座っている時間が長く、十分な運動ができない可能性が高いため、医療保険での運動器リハビリテーション(I)を受けられる施設にも並行して受診されることが望ましいと考えます。
 骨粗鬆症の評価治療、必要に応じて腰のMRI検査も行うなど、整形外科医師の関与が必要です。

 高齢の方で足腰に関連して介護申請をするかどうか迷われる場合は、是非当院にご相談ください。
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