輪廻転生の足元から

むせ返るような熱気。
PCから発せられる熱は思った以上に密閉された室内では暖房の役割を果たしている
そろそろ、熱気のかわりに冷気を発するパソコンが開発されてくれないものか(無論、冬は熱気を発してくれる)


そんな暑い室内でヘッドホンから垂れ流される音楽を聞きながら、キーボードに手を置き私は物語を紡いでいくのであった。

こうして物語を書いてはいるけれど
基本的に他人の褌を履いているに過ぎないのかもしれない。

カウンターパンチャーといえば聞こえはいいけど
メインカルチャーを皮肉っているようなどうしようもない内容を書いているひねくれものかもしれない。

王道を小馬鹿にしているからこそ書けるのかもしれない。

王道がいてくれるから、私は安心してひねくれられるのかもしれない。

自分が王道を切り開いて突き進むことなんて考えられない。

これが大二病というものかもしれない。

最低のクズなのかもしれない。

一周回って中二感を楽しめるのかもしれない。

むしろ自分が回ってきたのは、中二という輪廻の手のひらだったのかもしれない

ということは、現在進行形で中二病なのかもしれない。

中二病は馬鹿にしちゃいけない

中二病は偉大だ

あの、迷わず物語に没入出来る感じは
人生を楽しめることに繋がる。
鼻で笑うよりも、思いっきり没入したいと思うのです
 

「魔法…ですか?」

あ〜、なんか危ない人に関わっちゃったかも
ってもう遅いか

「なぜ、疑問形なのかね。その通り魔法だ。私のような科学者が魔法などというナンセンスな言葉を口にするなど現代社会では想像だにしなかったよ。」 

 彼は私の存在がないかのような口ぶりで大立ち回りを行う
身振り手振りがいちいちオーバーなんだよなぁ
ここが舞台の上なのではないかと思うくらいに芝居がかった口調と仕草がより一層、彼との距離を置かせている

私、いらないんじゃないかなぁ

「君は魔法の仕組みを知っているかね?」

突然に私は舞台の上に引き揚げられる
あちゃ〜。このまま観客目線でなぁなぁにしたかったんだけどなぁ
私は社交辞令的に失礼にならない程度に濁すような態度で接する

「いえ、魔法というのはお伽話の世界の話でそれを科学で解き明かそうとしたことはありませんし、こうして先輩に聞くまでは完璧に非現実的な話だと思っていますよ。今も、話を聞いていて信じられる感じがまるでしません。ロマンチックで素敵な研究だとは思いますけどね。あはは…」

少しだけ嘘をついた
魔法なんて勘弁してほしい
それは…

「うむ、君はロマンをよく理解している!!しかし、科学者としては失格だな!おおまかに君のようなロマンしか持ち合わせない空想家にも分かりやすく説明をしておこう!」

いちいち失礼な人だ。
先輩じゃなかったら正拳突きを腹部に放っている所だったかもしれない
私は笑顔を少し引きつらせながら続きを聞く

「魔法は…世界を騙すところから始める。」 

世界を騙すってなんやねん
思わず関西弁が混じってしまうような突拍子もない話の連続だ

あたかもそこに科学的な現象が発生しているかのように錯覚させるのだ。そうだな…ここからは実際に魔法を駆使しながら説明しよう。

そうして、部屋にある冷蔵庫から何かを取り出し
私にわかるように眼前にソレを突き出した
赤色が私の視界に映しだされ、非常に芳醇な香りが鼻孔をつく

「リンゴ…ですか?」
リンゴだ。
説明不要のリンゴだ
この人は学校に何を持ち込んでいるんだ

「あぁ…リンゴだ。このリンゴで実験させてもらおう。
まるでニュートンの万有引力のようだな!これを引用させてもらう。さて…リンゴを私の手から離せばリンゴは私の手から離れ地面に落ちるだろう。これは言うならば世界は物理法則にしたがってリンゴを落とすように指示をしているのだ。」

まるで小学生や中学生に授業するかのような当たり前のことをつらつらと講釈する
しかし、後半の表現には違和感を覚える

「世界の指示だ!世界に意思があるかどうかは疑問な所ではあるが、今はどうでもいいことである。リンゴは世界からの指示によって床に落とされるのだ。」


そんな風に世界のことを捉えるのは考えたことすらなかった
世界の指示?
まるで世界が生き物であるかのような表現である。

「ちょ…っと?よく言ってることが分かりま…っ!?」


ここで研究者である彼の表情が今までのような道化の仮面がはがれ
雰囲気が一気に変わり
真面目な口調で私の顔をまっすぐに捉えた


「そう、世界は生きているのだ。我々と同じように生きているといってもいいのかもしれない。私は生きている世界を…」

おもむろに手に握られたリンゴをーーーーーー

「騙すのだーーーーーー」

「っ!?」

一瞬、我が目を疑った

手から落ちるかと思われたリンゴはそのまま先程までと同様の空間に張り付いたままだ

まるで重力の存在がまるでないかのように
支えもなしに…

「…浮かんで…る?」


「ふっ、ようやく私の偉大なる研究の凄さに気がついたかね?私は世界を騙すことに成功したのだ。世界は今頃、リンゴを落としたと思って安堵していることだろう。しかし、どうだ!?こうして、リンゴは私の手から落ちずにこうして空中に静止したままだ!!」
私は驚きを隠せなかった。
もちろん目の前で起きている現象が非現実であることにもだが
同時に憤りを感じた




こんな経験は今まで何度もしてきたというのに、未だに動揺してしまっている自分にっ…!!



「そこでだ。助手君。実は、君がここにいることは偶然ではないのだよ。私がここに来るように仕向けたのだ。数ある学生のうちから君は栄えある私の研究生に選ばれたのだ。…これはお願いではなく強制である。」

私は彼の理不尽な要求。もとい脅迫じみた発言が耳に入ってきていなかった

「敬意をもって、君の名を呼ぼう。ーーーーようこそ、本上ていは君」 

ある日、僕のもとに一つの荷物が届いた

抱えるほどでもない
ダンボールの重さしか感じない荷物
僕のもとに届いた送り主不明の荷物


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新作のTVゲームから、近所には置いていない洋楽CD
出不精な僕のための衣類なんかもネット通販ですませてしまっている
そんな現代の利便性を堪能している僕である

こうして書き連ねれば、なんともつまらなくどうしようもないモノばかりである
身の程を弁えているといって差し支えない、ささやかな趣味や最低限の生活を送るためのモノ
いつからこんなにつまらない人間になってしまったのであろうか

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現実はどうしようもなく、個人の力では抗えないほどに肥大しきってしまっている

剣をふるう騎士はおらず
空を駆け巡るヒーローはいないのである

だが、しかし子供は自分が英雄になれると
他の誰かではなく、自分になれると思い込んでしまっている
自分にしかできない何か 自分にしかなれない何か
しかし魔物は僕達の翼をもぎ取り
現実という奈落に僕達を突き落としている

そしていつしか、僕自身も魔物に成り下がってしまっているのだ

嫌だ

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だーーーーーー

僕は世界から逃げた

現実から逃げた

自分が自分になれないから

いつしか、辛いリアルを突きつける恐怖の魔物に自分自身がなろうとしているから

いくらでも取り替えの効く歯車じゃない

僕は僕なんだ
僕ってなんなんだ
僕は僕しかいないんだぞっ!?
それなのになんなんだ!!!

知れば知るほどに、自分の没個性が浮き彫りになり
僕がありふれた世界の一部分であることを嫌というほどに再認識させられちゃうんだ

アイデンティティの崩壊
世界に溶けていってしまう自我

これを思春期特有の現実と向き合う為の試練と、体の良い言い訳なんて聞きたくはないんだ

そうやって、自分と同じ場所に引きずり込むための魔物の甘言でしかない

今が瀬戸際なんだよっっ!!!!!!!
僕は世界に徹底抗戦を宣言した

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こうしてリアルから逃れ
完璧に隔絶した
自分を見失わないために
僕が僕であるために



 

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