煙霞






黒川博行の「煙霞」です。これは、なかなか面白かったです。ただ、黒川博行著となると、もっと面白く出来たでしょ?と思ってしまいます。今までの黒川作品の名作と比べると(疫病神シリーズや警察シリーズ)少し見劣りしてしまいます。この作品の主人公も美術の常勤講師。ストーリー展開も内容も目新しものはない。今までの作品を何作かミックスさせた感じで、新しく、沢山の資料を紐解き、入念な取材をもとにして出来上がった作品ではないです。せめて、もっと笑いのあるものか、びっくりするようなラストは欲しかったです。

晴峰女子高等学校の美術の常勤講師の熊谷と音楽教諭の正木菜穂子は、体育科常勤講師の小山田に誘われ、晴峰学園を私物化する理事長の酒井を糾弾する仲間になってくれと頼まれる。熊谷は、このままだと、今の地位を追われ、左遷されてしまう立場で、正教員になれるという約束まで反故されそうであり、正木菜穂子も左遷されそうな立場の為、2人は、しぶしぶ小山田の誘いに乗る。そして、3人で、理事長の酒井を、不正の証拠があると言って、酒井の愛人と共に誘いだす事に成功する。そして、熊谷は、「来年度より正教員にする」という書き付けを、正木菜穂子は、「本人の了承なしに異動させない」との書き付けを貰う事に成功する。それをもらって、2人は、その場を去ったが、実は、小山田は、理事長から金をせしめる計画を、学校法人をターゲットにした「校地売買ブローカー」の箕輪達としていた。それに気がついた熊谷と正木のコンビと箕輪一味の金塊を巡る争奪戦になる。騙し合い、裏切りありの展開で、果たして金塊は誰の手に

という感じかな。特に不満もなく面白いですが、僕的には、あと一捻り欲しかった。(やっとの思いで買った本だけに、期待値が高すぎたのかもしれませんが)