かいご

楡周平の『介護退職』です。この作品自体はごくごく普通の出来映えで、点数をつけるなら45点という感じなのすが(タイトルからストーリーを容易に想像出来ると思いますが)高齢の両親がいる僕的には、この作品の様な事がいつでもありえる事なので、「う〜ん」と唸るような読後感でした。( -д-)ノ

大学で東京に出るのは自然なことだった。
そのまま職を東京で求めることもまた、自然なことだった。
田舎に両親を残すことなど、気にも留めなかった。
父母がやがて老いる時のことなど考えもしなかった。
だけど今にして思う。
親子の絆が断ち切れぬものである以上、その時のことに備えておくべきだったと―。
 

という文章から始まるこの「介護退職」は、分かり易くて簡単過ぎる程のストーリーです。

・大手総合家電メーカーの営業部長の「唐木栄太郎」が主人公。都内に暮らし、有名中学の受験を控えている息子が一人いる3人家族。
                 ↓
・山形で一人で暮らす「唐木」の76歳になる母親が転んで、骨折してしまい、車椅子の生活を余儀なくされるので、唐木の住む東京に連れていき、唐木の奥さんが介護する。環境が変ってのストレス等が原因で、唐木の母は、認知症になってしまう。
                 ↓                                              ・大きな案件の責任者を任されている「唐木」は、介護を奥さんに任せきりなり、遂に奥さんがくも膜下出血で倒れてしまう。
                 ↓
・奥さんの看病、母親の介護の為、会社の業務に支障をきたし、大型案件の責任者から外されて、閑職に追いやられてしまう。 
                 ↓  
・「唐木」は、退職を余儀なくされ、問題が山積みに・・・・。そして、「唐木」は・・・・・。
 


という様な骨組みに肉付けした感じのストーリーです。早見和心の『砂上のファンファーレ』を連想しました。結末言っちゃうと、ハッピーエンドな結末で、特にこれと言った感情が湧き出てこなかったのですが、まぁ、良かったんじゃない?という感じでした。この作品に、現代社会における、介護問題の解決策とかは全くなくて、あまりタメにはならないのですが、とにかく、この作品を読んで、

 「俺も色々考えないとな(●´ω`●)」   

と思わせてくれた事には、感謝しております。楡周平とか僕の好きな作家が描いてくれなければ、この気になるタイトルでも読んでみる事はなかったですからね。高齢な両親を抱えた方達には、おススメです。( -д-)ノ

                                                                                                       

 この作品に関する事で、余談を少し。( ´∀`)つ

 ●主人公は、大手家電メーカーに勤める部長で、確実な年収が出てこないのですが、推定年収2,500万位だと思います。有名中学に通う息子がいると言っても、収入的にはかなり恵まれていて、介護にかなりのお金を捻出出来る立場にいるのが共感出来なかったですね。この年収なら選択肢がかなりありますからね。しかも、この「唐木」には「弟」がいるのですが、自営業で生活がかつかつで、私立の大学に通う息子がいて大変だという設定なのですが、この「かつかつ」な弟の年収が、

 400万しかない

 なんて話で、進行しているのは、怒りを覚えました。しかも、この弟の奥さんはパートに出て、月に16万位稼いでいる。それで、親の見舞いも来れないとか介護を手伝えないとかいう進行にも怒りを覚えましたね。ぶっちゃけ、僕の年収は、300万以下っすよ。(`Д´) ムキー! しかも、奥さんはパートもしてないっすよ。子供3人いますよ。それで、母ちゃんが病気になって、かなり大変な思いをした僕からすると、設定に格差を感じました。

 ●この作品のようなハッピーエンドの話も良いですが、この「唐木」のアナザーストーリーもも出して欲しいですね。電車通勤の僕が頻繁に起こる電車での「人身事故」のニュースを聞く度に、この「唐木」とは逆のストーリーを勝手に想像します。会社を辞めざる得なくなった「唐木家」のバッドエンドで想定出来るのは、

 ・学費を払えなくなったので、公立中学に転校した息子が非行に走る。
 ・介護に疲れた奥さんから「離婚届」を突きつけられる。
 ・再就職も出来ず、お金が底を尽きる。
 ・介護に疲れ、認知症の母親に手をかけそうになる・・・・。

 等、沢山あります。この問題をもっと社会に投げかけるには、こちらの方がインパクトがあるような気がします。

 ●この作品で、「高額医療には国の補助が受けられるが、それも一旦は自分で全額の支払いを済ませなければならない」とありますが、これは、役所に相談すれば大丈夫です。病院から直接、役所に請求してもらえるように出来ます。それでも、ある一定の金額は支払わなければなりませんが。