雨の狩人













大沢在昌の『雨の狩人』です。「北」、「砂」、「黒」ときまして、シリーズの第4弾です。僕的には、このシリーズの中では、「砂」→「黒」→「北」という順番で好きだったのですが、この作品は、「北」を抜いて3位にランクインした感じでした。主人公は、新宿署組織暴力対策課の「佐江」です。佐江ファンの僕としては、期待を裏切らない動きをしてくれまして満足でした。

今回は、歌舞伎町のオレンヂタウン(ゴールデン街)で、マルBらしき変死体が発見されて、「佐江」が呼ばれる事から物語はゆっくり進んでいきます。その後、歌舞伎町のキャバクラで不動産会社の社長が射殺される事件が起きます。この事件の捜査に警視庁捜査一課の「谷神」とコンビを組んで当たる事になるのですが、ここから徐々にエンジンがかかってきて、佐江達の捜査が核心に迫ってくるとイッキにラストまで引っ張られます。このシリーズはかなり複雑な構成ばかりで説明がかなり難しいのですが、この事件の裏には、関東最大の暴力団の【高河連合】が絡んでいるんですね。簡単に言うと、高河連合は、ある目的の為に何年もかけて【オレンヂタウン】を地上げしようとしてたんですね。それに立ち塞がるものを高河連合は、プロの殺し屋を使って、排除してきたのですが、これには、谷神・殺し屋・高河連合内部と複雑に絡み合った因縁があったりして凄い展開となります。佐江も何度も殺し屋に殺されそうになりながらも、高河連合のトップの「延井」と直接対決する事になります。どうなる佐江!!って感じの作品ですね。

今回の作品の見所は、佐江と谷神のコンビの活躍ですね。警察内での嫌われ者の佐江に興味を持ち、佐江とのコンビを願い出た谷神は、深みのある魅力的な人物でこの作品のキーマンですね。

全然説明出来てないけど、とにかく面白いのでお薦めです。 【続き】で、印象の残った場面を( ´∀`)つ



 

 
 ■谷神が佐江に打ち解けてきた時の二人の遣り取りです。

 「私は、佐江さんのことを誤解していたかもしれません」
 「誤解?」
 「あなたはマル暴の刑事として、新宿では知られている、と聞きました。だから私は・・・」
 谷神はいい淀んだ。
 「あいつらとべったりだと思っていた?」
 佐江が言うと、谷神は頷いた。
 「マルBに詳しくなるには、どうしたってつきあいが深くなる。もちつもたれつの関係なのだろう、と?」
 「おっしゃる通りです」
 佐江は顔をそむけた。
 「そういっている奴が多いことは知っている。理由もわかっています。ですが俺は極道に便宜をはかってやった事もなければ、金をもらったこともない。貸し借りで極道とはつきあわない。だが、ガラの悪い俺を見ていると、いかにもあいつらと仲がいいように思われるんでしょう。いいたい奴にはいわせておけばいい。ただひとつだけ、そういう奴が間違っていることがある」
 「何です?」
 「俺は管内の極道には、確かに詳しい。だが、俺に詳しい極道は、シャバにはひとりもいない」
 谷神は佐江をじっと見つめた。そして小さく頷いた。
 「わかりました」

 

 ベタっちゃ〜ベタですが、佐江の「だが、俺に詳しい極道は、シャバにはひとりもいない」って所を読んだ時にビビっときましたね〜。

■後半の場面での佐江と谷神の会話です。(多分、「組織犯罪処罰法」や「暴力団排除条例」に対する大沢在昌の意見だと思うのですが)

 「法や制度の変化が暴力団を壊滅させるわけではない。檻に入れられた獣は、エサを与えなけば餓死するだけですが、野生の獣はエサがなければ、普段襲わない獲物に向かう。彼らより狡猾で凶暴な獣に変えたのは、法なのです。自然の淘汰が、より大きくて賢い団体だけを生き残らせるように、法の淘汰が巨大暴力団を生き残らせた」
 誰も何も言わなかった。佐江もそれを感じていたことだった。暴力団に対する締め付けは、やくざですらない素人の愚連隊集団をのさばらせたが、暴力団はその愚連隊をうまくとりこみ、収益を吸い上げるための触手へと変化させている。


 暴力団排除条例などは、結局は犯罪組織を地下に潜らせる結果になり、新たな法律により犯罪がより複雑化している点を指摘しているですね。