戦国小説アンソロジー














『戦国秘史〜歴史小説アンソロジー 〜』です。新潟に帰省する際に持って行ったのがこちらの作品です。田舎に行く時は、歴史小説が一番だと思うんですね。この作品は、

『ルシファー・ストーン』(伊東 潤)
『戦国ぶっかけ飯』(風間真知雄)
『伏見燃ゆ 鳥居元忠伝』(武内 凉)
『神慮のまにまに』(中路啓太)
『武商諜人』(宮本昌孝)
『死地奔槍』(矢野 隆)
『春の夜の夢』(吉川永青)


からなる注目作家たちによる競作です。僕が戦国モノで好きなパターンは、心躍る様な小細工なしのベタな物語が好きなのですが、この作品では【どストライク】なものはなかったのですが、なかなか面白かったです。この作品での次郎的ランキングは、

1位『伏見燃ゆ 鳥居元忠伝』(武内 凉)
2位『武商諜人』(宮本昌孝)
3位『春の夜の夢』(吉川永青)
4位『神慮のまにまに』(中路啓太)
5位『戦国ぶっかけ飯』(風間真知雄)
6位『死地奔槍』(矢野 隆)
7位『ルシファー・ストーン』(伊東 潤)


という感じです。ベタで単純に面白いという僕の採点基準がこのランキングなんですね。

1位の『伏見燃ゆ 鳥居元忠伝』は、僕好みの典型的なベタな作品で良かったですね。伏見城を守る【鳥居元忠】の話です。以下は、この物語で印象に残った場面です。伏見城の西の丸で、元忠が妻と語り合う場面です。

「今の武士は、己の功名だけにとらわれ敵を憎み切る者が多い。昔の武士は敵でも立派な人をしかとみとめる、すがすがしさをもっていた・・・・・。わしは、根っからの武士ではない。親父は、元ワタリの武士。お袋は、木樵の娘よ。されど、もし武士になるなら、すがすがしき武士でありたい、斯様な思いでこの世界に入った。だが、実際、戦に出てみるとすがすがしい武士は少ないもの。三方ヶ原の戦いで、わしは久しぶりにすがすがしい武士を見た。馬場美濃守殿じゃ」

元忠の男らしさが伺える場面で、こういうベタな場面が好きなんですね。そして、こういう男の死に際は必ず潔いというのが、僕の好きな王道パターンです。

2位の『武商諜人』は、茶屋家初代の【茶屋 清延】が主人公の話。戦国時代の物語を書こうと思ったら鉄板の人物ですね。本能寺の変の後の【神君伊賀越】を助けた人物として有名ですが、この作品ではドラマチックな物語に仕上がってまして面白かったです。
以下、この作品で印象に残った場面です。明智光秀の不穏な動きを察知した四郎次郎は、信長に光秀の謀反を注進しようか迷うのですね。そんな中での父親と弟の会話です。

いま信長に明智勢の来襲を急報するのは、茶屋家にとって天下一の豪商への道を拓くことを意味する。そう言い切っても大げさではあるまい。
『四郎次郎。茶屋の当主はそなたじゃ。心をきめよ。そなたのきめたことに、父は従う』
『それがしも、兄上に従い申す』
仁右衛門も覚悟する。
『武家も商家も・・・・』
と徐に四郎次郎が口を開いた。
『最も大事なるは、利心ではなく、赤心』
利益を追求する心が利心。対して、赤心とは、嘘偽りのない心、すなわち真心とか誠意をさす。
『織田さまは利心のために赤心を疑うお人。天下のあるじに相応しいとは、それがしには思われぬ』
信長には注進しない、と四郎次郎は決した。


さっきも言いましたが、こういうベタな物語が好きなんです。^ ^

3位の『春の夜の夢』は、北条氏康が主人公で、【河東の乱】【河越城の戦い】を描いた作品。氏康を違った角度から魅力的に描ききってました。


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