シンドローム上下
真山仁の『シンドローム(上・下)』です。5年ぶりのハゲタカシリーズということで、ずっと追い掛けてきている僕としましては面白かったです。上巻の帯が、この作品を上手く表現してます。

電力事業ほど儲かるビジネスはない──。
国から特別待遇を与えられ、「絶対に損をしない」
収益構造を持つ電力業界に狙いを定めた鷲津の前に
立ちはだかるのは、日本経済構造の暗部に蠢く権力。
それでも、総本山「首都電力」に
買収を仕掛けようとした矢先の2011年3月。
東北を未曾有の地震、津波、原発事故か襲う。
まさに国家存亡の危機。ハゲタカはどう動くか?


この「首都電力」とは勿論「東京電力」がモデルとなっておりまして、あの福島第一原発の事故を起こし、その後の巨額な賠償などで、倒産の危機に瀕している状態の「東京電力」を買収しようとするんだなと想像しながら読み進める訳ですが、真山仁のこのアイディアに参りましたと言う感じでした。真山仁は東日本大震災後の様子を描いた「そして、星の輝く夜がくる」「海は見えるか」なども出版しているだけありまして、そこら辺の描写も凄く濃密で、しかもこの作品を書くにあたって、実際に「福島第一原発」に取材まで行っているんですね。(https://diamond.jp/articles/-/80914)その「真山仁、福島第一原発を行く」の記事を抜粋させて頂きます。

科学技術は人を幸せにするために研さんを積み発展してきた。だが、あの日以来、科学技術の進化に大きな疑問符が付けられた。また、事故を起こした東電は、企業として瀕死の状態のまま現在に至っている。その現実を見据え、そして、そこから浮かび上がる科学文明を築いた人間のありさまを考えるときが来ている。
それを、『ハゲタカ』シリーズという世界を使って描こう──。
そう決心し、1Fを訪ねた私は、きっとそれが、未来の日本の指針になるのではと固く信じて時を刻むことにした。


そうなんです。ほんとに「ハゲタカ」シリーズという世界を使って上手く表現されていました。「首都電力」という「国策企業」の買収の世界を描き、しっかりとエンターテイメント性を持たせつつ、科学文明を築いた人間のありさまを真面目に考えさせらる内容となってるんですね。そして読み終えてみると、やっぱり、しっかりと「鷲津政彦」が主人公だったなぁと思える作品でした。(*´∇`*)

続きで、いつものやつを( ´∀`)つ


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この作品には、しっかりと前段があります。あの実際に起こった「TCI」による「Jパワー」株の買い増し問題にも触れているんです。鷲津は最初、物語の中で「Jパワー」をイメージさせる「Jエナジー」という電力会社を買収しようとして、「首都電力」の会長【濱尾重臣】(経団連会長でもある)によって阻止されるんですね。その買収から手を引いて1年程経った、2011年3月11日にあの大震災が起きるわけです。その間に今度は「首都電力」の買収を画策していた鷲津が本格的に動き出すんです。そこからの展開で印象に残った場面です。

「民間企業でありながら、地域独占を当然だと胡坐をかいた上に、政府の行政指導すら無視した傲慢な態度で君臨してきた。さしたる企業努力もせず、コストが上がれば、電気料金の値上げで利用者に負担を強いて、絶対に損をしない仕組みを作り上げた。そういう意味では特殊だが、そんな特権を、いつまでも認めるわけにはいかない」

「じゃあ伺うがな、湯河先生。果たして首都電は、安全性を徹底的に追求してきたのかな。大津波を想定した防潮堤建設や、非常時の対策を見直すべきだという意見が社内にあったのにもかかわらず、黙殺したそうじゃないか。そんな経営陣に、大事な首都圏の電力供給を任せられるのかね」

震災前の3月10日の終値が2153円だった株価が120円まで落ちた訳です。原発事故の処理費用も当初は10兆円といわれていましたが、実際は21兆まで膨らんだ訳です。その後の実際の諸々の展開を知っている2018年8月の僕の目線で、この作品を読んでもハマりましたね。妄想癖のある僕は、鷲津となって、政府や首都電力経営陣と戦ってました。(*´∇`*)