花折

花村萬月の「花折(はなおれ)」です。余談ですが、この作品を購入する際に、花村萬月が白血病で闘病中だと知りました。萬月作品を全部読んできている僕としましては、その闘病中に連載がスタートした「小説すばる(11月号)」を購入して、これから追い掛けていこうと思っております。(しかし、現在在庫なしで入手出来てませんが) 
 で、作品の事に戻りますが、この作品は、父の跡を継ぎ、絵描きとして成長していく「鮎子」を描いた作品です。舞台が「京都」と「沖縄」(今回は新たに茨城県の「取手」も舞台となってますが)、圧倒的な性描写、ドラッグときて、主人公の鮎子は「絵描き」としてのずば抜けた才能を持っているという、萬月作品の基本パターンの1つで新鮮さは無いのですが、読み手を引きずり込む鮎子の「内面描写」が相変わらず深みがあって、どっぷりとハマりました。以下は作品紹介からです。

画家を父に持つ鮎子はその才を受け継ぎ、東京藝術大学に進学し、京都から上京する。
ある日、大学の裏山でイボテンと名乗る男と出会った鮎子は、体の隅々の長さを測定されたのち、彼と身体の関係を持つことに──。

しかし夏休みの帰省から大学に戻った鮎子はイボテンさんの自殺を知る。
生きるとは何か、芸術とは何か。
若き女性芸術家の視点で描く、濃厚でみずみずしい長編小説。


鮎子は東京藝術大学に入学して、取手キャンパスの裏山に勝手に家を建てて暮らしている画家の【イボテンさん】と出会い、女として、画家として、ぐっと成長していくんですね。やがて自ら「悪王女」と名乗り、次々と男を奴隷にしていくのですが、沖縄の栄町社交街のお婆さんと出会い、鮎子は画家としてのモチーフを得て・・・・・。

という感じですかね。イボテンさんを捨て去って、それを踏み台にして、どんどん進んでいく展開になるかと思いきや、イボテンさんの死によって、イボテンさんの呪縛が付いて回る様になるのですが、栄町のお婆さん達との出会いによって、画家としての自負が生まれたんですね。そこから一躍有名な画家へとなっていくのですが、そこまでに至る、鮎子と両親、姉、兄、関わってきた男達との物語を楽しんで頂く作品ですわ。
 男視点と女視点での萬月作品を比較すると、やはり萬月作品では、男視点での進行の方が面白いですね。女視点で描かれる萬月作品は、「性描写」において、男視点に劣るんですね。男視点での萬月の「性描写」は、匂いから何から僕の五感を刺激するのですが、今回の作品ではそこまで刺激されませんでした。ま、それでもオススメです。(*´∇`*)

続きで印象に残った場面を( ´∀`)つ


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鮎子が小説家の「我謝」さんと【花折峠】に行った際の会話です。

「しかし、催しました」
はい?と語尾をあげて、生理現象と了解した。我謝さんは重ねて言った。
「排泄慾です」
その若干照れた口調がなんともかわいらしく、私は立ちあがった。
「じゃあ、ちょっと離れていますから」
思う存分排泄欲を充たしてくださいと目で念を押して背を向けかけたら、手首をきつく掴まれた。その手が妙に汗ばんでいた。厭ではなかった。しいて譬えれば迷子が必死ですがりついてきた気配に似ていた。汗が私の手首と我謝さんの掌をくっつける接着剤のように感じられさえした。最近は妙に掌の汗を感じる機会が多いと心のどこかに控えめな訝しさがにじんだ。私は笑みが顔中に拡がるのを意識し、囁き声で告げた。
「木立を下れば、誰にも見られませんよ」
「いや、独りでは解消できぬ排泄慾です」


この小説家の「我謝」さんの深みのある口説き文句にぐっとくるものがありましたね。僕の頭の中で、エロのゴングが鳴った瞬間でした。萬月作品を読んできている方ならこの先の展開は想像出来ると思いますが、その先の鮎子の心理描写と鮎子のセリフで、いってしまいそうになりましたね。

しょんぼりしている我謝さんを盗み見ているうちに、罪悪感を覚えた。苦笑いに唇の端がわずかに持ちあがった。なぜ私が罪悪感を覚えるのか。またしても理不尽で、不条理だ。いや、いまのこの状態は理不尽というよりも、ただ不条理だ。それも実在主義的な、人生に意義を見出せぬ状態といった不条理ではなく、ただ単に筋道が立っていないのだけれどーといったぼやきに似た不条理だった。一瞬鳥肌を立てたくせに、私は突拍子もない我謝さんを受け入れる気分になっていた。
「わかりました」
そっと我謝さんの腰に手をやり、その耳許に囁いた。
「ちゃんと解消してあげます」


どうでしょうか?(*´∇`*) これはほんの一部です。僕は印象に残った場面のページの端っこを少し折る様にしているのですが、今回の作品はそれなりに沢山の折り目が付いてました。